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創業4年目で考えたスタートアップの事業成長にとって重要なエンジニアの素質

 こんにちは。Ubie 株式会社共同代表の久保です。このコロナ禍は、スタートアップにとって流動的で難しい日々に適応をしなければいけない試練になりました。特に医療を事業ドメインとするUbieでは、医療崩壊の危機を阻止するために、創業前から開発をしていた生活者向けサービスを緊急ローンチしたり、20 億円の資金調達を実行したりと、激動の数ヶ月でした。会社としても、正社員が50人を超え、次のフェーズに入ってきました。そこで、これを期に今までの開発組織の過程を振り返り、短いながら3年間で得た知見や考えについて書いてみます。

Ubie の開発チーム/エンジニアについて

 Ubie の事業とエンジニアリングチームについて簡単に紹介します。「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」というミッションを掲げ、医療機関と生活者に価値提供している会社です。このミッションに「テクノロジー」という単語があるとおり、医療の企業であると同時にテック企業である点も組織の大きな特徴だと自負しています。私自身が元々ソフトウェアエンジニアだというのもあり、テクノロジーに関しては創業期からこだわっています。開発体制は、 LeSS も含むスクラムのチームが複数ある状況。また、開発チームの構成は以下のような構成です。

2020年5月 のエンジニア数
Software Engineer (Web App): 9名
Software Engineer (SRE): 2名
QA Engineer: 1名
Data Engineer : 2名
Machine Learning Engineer : 3名

 エンジニア採用は特に初期のスタートアップにとって非常に難しいと言われています。例に漏れず、Ubie でも創業期から今まで採用に苦労していない時期は一度もありません。特に Product Market Fit (PMF) を追うのが最重要課題となる創業後1年程度は、私を含めて2,3人しかエンジニアがいない時期が続く日々。この頃は、少ない人数でプロダクトを全力で開発する一方で、採用アトラクトのための飲み会、Wantedly 、 Twitter 、その他媒体を使ったスカウトなどを土日も含めて続けるも全く採用ができない地獄のような状況が続いていました。しかし、めげずにその時々で様々な施策をリファラルを紹介してもらうための仕組みづくりや、採用フローの最適化などPDCA的に回してきて、やっと今の19人(入社予定者を含む)までに拡大してきました。他の立ち上げのスタートアップでも、同じような問題に直面しているのではないかと思います。

創業からのエンジニアチームの人数推移

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スタートアップにとっての開発者とは

 スタートアップの価値は、既存の産業をディスラプトしたりリスクをとって、今までにない革新的なビジネスモデルをつくったりすることにあります。こうした新しいビジネスモデルを大企業が実践しづらい最大の理由は、ビジネスとしての蓋然性がないこと。つまりスタートアップにとって、まだ示されていない検証は、事業活動にとって欠かせない過程であり、ここでの施策のセンスやスピード感が成否を分けます。
 その中で、エンジニアの価値は高速で検証を繰り返してプロダクト/ビジネスの蓋然性を示すこと。そして顧客やユーザーが実際にプロダクトを使える状態にして、学びをプロダクトに反映することです。様々なプロダクト開発の方法論に関連する書籍などでプロダクト開発を社外ではなく自社内で完結させるべきとされている理由は、開発チーム自身が得た学び内部で反映して、さらなる改善に繋げることができるからです。Ubie ではエンジニア自身が開発の中で Product Backlog Item を作ったり、医療現場に赴いたりするのが常に推奨されています。

スタートアップ立ち上げ期のエンジニア採用

 「A級の人はA級人材を呼ぶが、B級の人はC級の人を呼ぶ」という言葉をいつか聴いたことがあります。特に優秀な技術者ほど、優秀な技術者と一緒に働きたい傾向は強い。純粋に一人の技術者としての知的好奇心もありますが、それだけではありません。技術者はビジネスサイドと比べたとき、現行システムのアーキテクチャや技術スタックに左右される面が強いからです。たとえ新しくジョインしたメンバーの裁量が大きくても、ビジネスがある程度進んでいる場合には基盤となるデータ構造やシステムのアーキテクチャをまるっと変えることは難しく、事業成長に集中しないといけないスタートアップはそのコストを払えません。

初期メンバーの妥協をしない

 上記の理由から、スタートアップ立ち上げ期の方には、特にエンジニア採用において初期メンバー採用を絶対に妥協しないことをおすすめします。そこで妥協をしたら、コアチームはスケールしません。そして多くのテック企業で言われているようにビジネス成長にエンジニアリングが大事だと考え始めたときにはあなたのビジネスには巨大な負債が出来ているでしょう。優秀なエンジニアが寄りたがらず、システムだけではなく組織としての負債も溜まっている状態になりかねません。

スタートアップにマッチしたエンジニア

 こうした背景も含めて、スタートアップにとってどういったエンジニアが適しているのか、私は経験から下記3つの要素が重要と考えています。


1. 検証をすることに長けている。捨てる設計ができる。

 スタートアップにおいてはピボットが当たり前で、様々なことが所与のものではありません。その中でも、アプリケーションは非常に変化しやすいものです。きれいな設計と述べたのとは対極的ですが、このフェーズでは捨てることを前提にしたアプリケーションなどの設計ををいとわない人が重要です。誰だって自分がつくったものが捨てられるであろうものづくりをしたいとは思いません。しかし、スタートアップやアジャイルの開発組織にとっては検証から得られる学びの価値が時にはプロダクトそのものよりも大きく、捨てるのに慣れていることは事業成長のスピードを加速するためにも非常に重要です。また、検証に関してもその日に思いついてその日のうちに出すくらいのスピード感についてこられないと厳しいものがあります。


2. つくることではなくプロダクト成長にコミットできる。

良い技術者や設計者ほどつくることに夢中になり、プロダクト成長を忘れてしまいがちです。私自身も元々エンジニアということもあり、とにかくつくりたいという気持ちには非常に共感しますが、自分たちがつくろうとしているものは、真にユーザー課題を解決するのかを考えて、検証の結果つくらないという選択ができるエンジニアであることは極めて重要です。誰も使わないプロダクトは、スタートアップにとって最も重要な開発チームのリソースを奪うだけの無用の長物だからです。


3. データ負債をつくらない設計ができる。
 特に Ubie は病気予測というデータが肝のビジネスです。アプリケーションを捨ててすげ替えることができても、過去にユーザーが入力したデータ自体は捨てられません。ログだけではなく、Ubie の場合はサービスがAI Product であったり、データがサービスのコアとなる場合には、この設計を間違うとビジネスの拡大とともにデータが溜まってきても、それを事業成長に寄与させられない場合があります。

1→100フェーズのUbieにおける課題

 ここまでで、0→1フェーズ、PMFを追いかける中でどういったエンジニアが活躍してきたかを書いてきました。これからUbieは、病気予測エンジンの価値をコア・バリューとしながら事業成長のためさらにスケールアップしていかないといけません。


ネットワーク外部性の構築

 これまで Ubie は病気予測精度をコアコンピタンスとして成長してきました。一方でこれからはネットワーク外部性の構築が大きなテーマです。直近で新たにリリースした生活者(一般ユーザー)向けサービスにより、さらに医療機関のユーザーを増やしていくモデルです。AI受診相談ユビーで聴取した問診を医療機関に直接提供することで、医師は患者の過去の病気や、発現した症状を正確に把握できるようになります。さらに患者にとってもより良い医療体験が得られる状態を目指しています。


組織の成長に対する適切なドメイン分割力

 ユーザベースが拡大し始めている現在のフェーズでは高速にユーザー価値を提供しながらも、データを再利用可能なかたちで手に入れて、かつ事業成長に寄与できるようにドメインを適切に分割して設計していくことが求められています。サービスや提供する価値の種類が増えていった際に注意すべきなのは、コミュニケーションパスが増えてスピードが落ちることです。当然システムのアーキテクチャに関しての唯一解はなく、組織・チーム構成やその当時の技術スタックにも影響も受けるものです。Ubie の社内でも日々エンジニア同士が喧々諤々の議論をしながら、最良と思われる意思決定を進めています。このような組織・チーム構成も含めた設計に関する議論が毎日のようにチーム横断で行われている点もUbie で働く一つの魅力だと考えています。

おわりに

 長文をお読みいただきありがとうございます。Ubie では上述の通り事業および組織が急速に拡大しています。この記事を書いている間も辛い時期も含めて色々な記憶が蘇ってきました。それでもまだ3年しか経っていないのかと思うほど濃密なスタートアップライフを過ごしています。
 また、これからは一般ユーザーとも連携し、やりたい事業がたくさんある状況です。これを読まれている方でUbieの事業、開発に興味がある方がいれば、お気軽に Twitter に DMいただけるとうれしいです。これからの医療に必要なのは、テクノロジーに他なりません。新しい医療の形を一緒に創り上げるために、あなたの力が必要です。


エンジニア紹介資料


採用資料 (全体)

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