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賃貸借(民法)について



〇賃貸借契約について


土地や家屋は賃貸借契約によって、他人に貸すことができる。この契約によって、賃借人は借りたものを使用・収益(使わせろ)という権利を得、賃貸人は、賃料請求権(賃料を支払え)という権利を得ることができる。

〇必要費と有益費(修繕について)

 借りてるものが台風など不可抗力によって損害を被り、それを借主Bが修繕したときは、それを必要費として、ただちに貸主Aに請求することができる。また、Bが目的物の価値を増加させるような費用(有益費)を拠出したときは、契約の終了時に、Aにそれを請求することができる。そのときには、目的物の価値の増加が現存しているときに限り、増加分または有益費を賃貸人が選択して、支払うこととなる。
 【比較】
 必要費 → ただちに請求
 有益費 → 契約終了時に請求

・また、常日頃から、賃貸人は自己の物件の価値が下がらないため、雨漏りなどがあったときは修繕をしたいと考えるのが通常である。したがって、賃貸人が必要のために修繕をしようとするときには、賃借人はこれを拒むことができない。(あくまでその物自体は賃貸人の物であるため)

〇賃貸借の存続期間


 

 民法における賃貸借の期間については、最短はいつでもよく、最長でも50年である。原則、賃貸借契約は期間満了により終了する。ただし、賃借人が使用を継続しているのを賃貸人が知っていながら何も言わなかったときは、更新したものとみなされる(黙示の更新)

 期間の定めがない場合には、当事者はいつでも解約の申し入れができる。このとき、

  •  土地の賃貸借は1年

  •  建物の賃貸借は3か月

 経過後に終了とする。

〇賃貸借契約の対抗力

 【ケース】賃貸人Aと賃借人Bが賃貸借契約を締結し、家屋の貸し借りを行ったとする。しかし、借り手のBが登記をしないうちに貸し手Aがその家を第三者のCに売ってしまった場合はどうなるのか?
 α:対抗要件があるとき→AからCへの所有権とともに、当然に賃貸人の地位も移動する
 β:対抗要件がないとき→AからCへ所有権が移っても、当然には賃貸人の地位は移動しない。
→いずれの場合にも、CはBに「賃料を払え」というためには、所有権移転の登記が必要である。
→人に賃貸している家を購入するときには、所有権の登記をすることによって、賃料を請求できるようになる(Cの立場になって)
→対抗要件とは、Bの賃借権の登記である。しかし、通常Bには登記請求権が認められていないため、実情としては、賃貸を借りても登記などしないのが通常である。そのため、賃借権の登記をしていないBは出ていかなければならない。これが民法の原則である。しかし、せっかく借りていた家を、その持ち主が急に知らないところで変わったからといって、出ていけといわれ、住む家がなくなるのはあまりに酷である。そこで、借地借家法という特別法によって、別途、賃貸人Bを保護することとしている。

〇転貸・賃借権の譲渡

(借りてる人が別の人に又貸ししたとき)

 BがAから家を賃借していて住んでいたが、その後、急な転勤になり、海外に1年住むことになった。せっかく借りていて賃料も払い続けるのに住めないことを残念に思ったBは、友人Cに又貸しすることにした。このとき、法律(民法)では、どのような関係になるのか?
 
 原則:賃借人は、転貸しようとするときは賃貸人の同意を得なければならない。

無断で転貸したときはどうなるのか?

 原則:賃貸人と賃借人の賃貸借契約は、信頼関係を基礎とする継続的な契約として成り立っている。しかし、無断で賃借人が第三者に転貸することは、これを裏切る背信的行為となり、賃貸人はこれをもって契約を解除することができる(→常識的)
 例外:しかし、第三者に転貸するときに、例えばそれが親族に転貸したなど、背信的行為と認められない特別な事情があるときには、賃貸人は賃貸借契約を解除することができない。

〇転貸・賃貸借の譲渡の効果

 Bは、友人の転貸人Cにアパートを又貸しした。自分は海外に1年赴任となり、せっかく借りている家を遊ばせておくにはもったいないと考え、Cから賃料をとることにした。このとき、賃貸人Aとの法律関係はどのようになるのか?

・転貸の場合

 AがBに貸した賃料と、BがCに貸した転貸料の大小関係が重要である。そのいずれか低い額をもって、Aは賃借人B、転貸人C両方に請求することができる。

・賃借権の譲渡の場合

 AはCに対してのみ賃料を請求できる。

〇その他の論点

・賃借人が転貸人に転貸しているとき、
→賃借人が賃料を支払わないことを理由に契約を解除するときには、転借人に賃料の支払いの機会(弁済の機会)を与えなくてもよい。(転借人に弁済の機会を与える必要はなし)
→賃貸人と賃借人が合意による契約の解除をした時には、転借人に当然に明け渡しを請求できない
→賃貸人と賃借人が債務不履行によって契約を解除するときには、賃貸人は転借人に対して明け渡しを請求できる。(転借人は、債務不履行をするような賃貸人Bから借りたのが悪い)


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