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大企業かベンチャーか論争

まずは簡単な自己紹介もかねて

大企業かベンチャーか論争について言及する前に、どちらも経験している自分のキャリアに少し触れておきたいと思う。

僕自身は、総合商社の子会社でキャリアをスタートさせた。
OBOGの卒業後の進路実績を見ても大企業はそこまで多くなく偏差値の高い大学ではなかったので、就職活動はそこそこ頑張った記憶がある。

その甲斐もあり志望度の高い企業に無事入社したわけだが、3年が経ったタイミングで周囲の反対を押し切って転職した。

仕事はきつい場面も当然ありつつも、給料もそこそこ貰えていたし1年目の時から毎月海外出張に行く機会も与えてもらえ、大きな不満はなかった。

でもスパッと辞めた。

理由は「10年後の自分が見えてしまったから」。

ポジションや責任は違えど、10個上の先輩方も2,3年目の自分と同じような業務を行なっていた。
今思うとただただ物事が見えておらず若気の至り感が否めないが、当時の自分の中では漠然と「一刻も早くここから出ないと自分が停滞してしまう」
そんな恐怖心を抱えていたように思う。

自分が何かミスってもカバーしてくれる先輩上司がいて常に守られていた。
その「常に守られている環境」も当時の自分にとってはなぜか嫌なポイントで、もっとヒリヒリするような戦場にいきたかった。

結局、外資系コンサルファームの出身者数名が立ち上げた小さな名もなきコンサルティングファームに転職することにした。

コンサル未経験であったため一番下のポジションであるアナリストからのスタートだった。

雇われの身からするとベンチャーの悪い所が凝縮したような会社だった。(全部が全部ではない)
売上を立てるためコンサル未経験の若手をとにかく多く採用し人材プールを増やし、とりあえず案件に人をぶち込むスタイルだった。(コンサル経験者を採用すると給料をそれなりに積まないといけない)

当然のごとく未経験者がぶち込まれた案件先で炎上が起きるのだが、燃えた火を鎮火させる役割のマネージャー層がアナリストの人員に対し圧倒的に不足しており、リリースされるアナリストが多く発生していた。(炎上する前の火種を見つけ消すのがあるべきマネージャーの仕事だが、炎上してからでないと気づかないほどマネジメント層が足りていなかった)

炎上し案件先からリリースされたアナリストはことごとくすぐに会社を辞めていった。それは自分を守ってくれなかった会社に嫌気がさしたのか、様々な理由があるのだろう。

もれなく自分もぶち込み要員の一人であったわけだが、マネージメント層の不足もあり入社半年後にはポジションが上がり、アナリスト数名を管理しながら案件を回すことになった。

幸いにも僕自身は案件をリリースされることは一度もなかったが、未経験のコンサルワークをこなすのにとても苦労した。
朝5時まで仕事をして家に帰ってシャワーを浴び1,2時間仮眠をとり常駐先の会社に出社するような日も度々あった。

ハードな仕事だけでなく、キャバクラ付きの社長に夜な夜な付き合わされたこともキツかった。
僕と一緒にキャバクラに付き合わされた一つか二つ上の先輩から「これがウチの福利厚生や。覚えときや」と言われたのは今でも覚えている。
そんな福利厚生はいらないから早く家に帰って寝たかった。

そんな生活も長くは続けられるはずもなく、あれほどヒリヒリしたいと言って飛び出したにも関わらず3年ほどでベンチャーを辞め、ノコノコと大企業に転職し今に至っている。


やりたい事や目的が明確にないのであればとりあえず大企業にいけ

話はタイトルに戻るが、大企業もベンチャーも多少経験している身としての回答は、「やりたい事や目的が明確にないのであればとりあえず大企業にいけ」だ。
特に新卒であればなおさらである。

ここから話すことはどの企業も当てはまることではなく、あくまで主観的に感じている傾向に過ぎないと前置きしておく。


大企業からベンチャーはいつでもいけるが、逆は時に難しい

ぶっちゃけ自分の意思決定次第で、大企業にいる人はベンチャーにいつでもいけると思っている。

なぜなら、会社の業績が下火になっていない限りベンチャーは基本人手不足で人集めに苦労している先が多いからだ。

特に優秀な人材は喉から手が出るほど欲している。
大企業に勤めている経歴があるだけで、それなりの加点要素になる。

ベンチャー側の人事部にとっても「実は大手企業の〇〇社から来た人や元〇〇社の人もいて活躍してますよ」と優秀な人を集めるためのセールストークにも繋げられる。
応募する側としては大企業から無名のベンチャーに行くのはそれなりの心理的ハードルがあるが、聞いたことがある会社の元社員が在籍しているとなると安心材料になる。

では、逆はどうだろうか。
例えば、中途採用の候補者に同じようなスキルを持った同年齢のAさんとBさんがいて、面接ではどちらも甲乙つけがたいとする。
Aさんは誰もが知っている大企業に所属、Bさんは聞いたこともないベンチャー企業在籍とした時、あなたはどちらを選ぶだろうか。

自分が推した候補者が入社後すぐに辞めてしまったり、辞めなかったとしても会社で大問題を起こしたら、「誰だこいつを推薦したやつは」と少なからず何処からか声があがるものである。

面接官も所詮サラリーマン。
「大企業の〇〇社の人事部が採用したんだから大きなハズレはないだろう」と、自分の判断に安心材料を求めるのが人間の心理であると僕は考えている。
過去面接官をした事があるが、1時間の面接で候補者を判断するのはとっても難しいのだ。

ベンチャー企業での相当な実績があったり、入社後に即戦力として活躍している姿がイメージできた場合はからなずしもそうではないが、ベンチャーから大企業の転職はそれなりにハードルがあると思う。


大企業で働いた職歴はレバレッジが効く

前述にも通じる話ではあるが「大企業で働いていた」という経歴が、「きっとあの人それなりにちゃんとした人でそれなりに仕事ができるんだろうな」というバイアスを相手に植え付けることは少なからずあるだろう。

ただ、そのバイアスは一瞬の魔力でしかなく一緒に働き出すとすぐに化けの皮が剥がれバレてしまうものである。
さらに言うとハードルを上げてしまうが故に「あの人大企業出身なのに大したことないね」とマイナスに転じることもある。

しかし、面接や商談など第一印象がものを言う瞬間的な接点においては、大企業で働いていた職歴はサラリーマン人生において何度も活用できる場面があるように思う。


人材育成は余裕があってからこそ出来る

毎年春になると慣れないスーツ姿の新入社員をよく見かける。
その度に自分が社会人になったばかりの当時を思い出すが、会社にとっては全くの戦力にならない存在だった。多くの人がそうであろう。

それもそのはずで、学生時代では普通であったことが社会では通用せず、社会人としてのルールが存在するからだ。

大企業はそんな新入社員に研修期間を設け、名刺交換の練習から始まり、ビジネスのイロハをみっちりと教えてくれる。
研修が終わり配属後においてもOJTとよばれる手法で面倒を見てくれる先輩がつくのである。

一方、ベンチャーではどうだろうか。
会社の業績がいつどうなるか分からない中で(ベンチャー企業の存続率は5年目で15%と言われたりする。)、人材育成なんて丁寧に行っている余裕はない。
一括りにベンチャー企業といえど様々なステージがあるが、新入社員であろうとお給料以上の売り上げをいち早く上げてもらわないと会社として死活問題にもなるのである。

世の中には学生の時にすでにビジネスマンとしてのスキルが備わっているとてつもなく優秀な人がいるが、そういった特例を除けば、ゴルフと同じで社会人としての最初の第一歩は我流ではなく基本のフォームを学ぶのが良いのではないかと思う。
基本のフォームさえ身につければその後スタイルを変えることは出来るが、我流がベースとなると応用が効きづらい印象がある。

結局は自分がどうしたいか、どうなりたいか

前述以外にも大企業のポジティブな点は多くある。
逆に、意思決定プロセスが尋常じゃないほどに重く物事が全く進まないことや社内政治など、日本の生産性の低さの縮図のようなネガティブな面も多くある。

その点、ベンチャーは最低限のリスクを抑えた上で利益に繋がることであれば比較的意思決定は早く個人の裁量も大きいためやり甲斐を感じやすい、といった側面もある。

結局は自分がどうしたいか、どうなりたいかである。
ただ、就職活動をするタイミングで解像度高く自分の目指したい方向性を明確に持っている大学生はマイノリティだろう。

そういった状況で、「裁量が大きくてなんとなく楽しそうだから」とか「早く就職活動を終えたいから内定が出たベンチャーに行くことにした」とか、目的もなく生半可な気持ちでベンチャーに入社した人で、数年後に楽しそうに働き続けている人がどれほどいるのか僕は懐疑的である。


とまあ、偉そうに色々と書いたが、
どんな道を選んだとしてもその道を正解にしていくという心意気が大切に思う今日この頃である。

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