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QUILL
2023年7月14日 11:02
椅子は一つしか用意されていない。小説家を志して十数年、様々な新人賞に応募するも、一度として受賞はおろか、候補としてすら残ったことはない。つい数日前、余命を宣告された。半年生きられるか分からないということだった。最後の夏になると思った。僕には三年付き合っている恋人がいる。彼女は村山由佳や窪美澄の小説が好きだと言い、それらを読んだことのない僕には、同じ世界を全く違う目で見つめる彼女が魅力的に映