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映画時評:「雪山の絆」は映像的・内容的には高評価。エンディングは好みアリ。

副題に「実話に基づく奇跡の物語」とあるように知っている人は知っている有名な話である。昔の話と言えど。
正直言うとあまり見るつもりはなかったが、時間があったからチケットを買った。そしたら、ミニシアターだったが、観客一人だった。狭い館内だが独り占めして観て、結果は満足できる映画だったと言えよう。
なぜに、人気がないのだろうか。多分、タイトルが悪いのだと思う。ダサい。

観客が入っていない点を先に分析してみよう。
・タイトルがダサい。(本気)
・タイトルの焦点が今どきでない。
・結果が分かっている。(知らない人でも、予告通り)
・汚い。(ゴメン。大変失礼。ゴメン。)

観た結果の不満点で言えば、
救助されてからのその後談がないこと。糾弾があっただろうし、それにどう対処したのかを観たかった。

一方、期待せず入った割に良かったと思えた点については、
墜落や雪崩、遭難、雪山それぞれがリアルな点。これは素晴らしかった。
また、人それぞれの葛藤の場面も心理的な迷いから常態化してしまうまでの移行期間の描き方は本当の現場を表しているようで、実際ボク自身映画を観る前は「絶対に食べないで衰弱死する」という選択肢しかなかったはずだったが、映画を観ている途中から迷いが生じ、映画を観終わる頃には、ボク自身が生き延びるためには「ありかもしれない」に変わってしまっていた。
これはやはり究極の現場を体験した人にしか分からないことで、この映画はその追体験をさせてくれるまでリアルに描けていたと思う。

映画を観ずして、「自分は絶対にしない」なんて言い切るお気楽な人間は本当に体験した方がいいのか、本当に想像力がないだけの人なのかもしれない。
途中で「神」についての議論をしていた。
現代日本人我々にとって「神」とはなんだろう。宗教に関するものなのだろうか。親に教えられたことだろうか。クリスマスは関係あるのか。そうとう曖昧だ。
我々は日頃「神」についてさえ考えることを放棄しているのではないか。
誰かと議論したことがあるだろうか。
遭難した彼らは有り余る時間の中で生きるために必死に考え、そして「神」についても考えていた。その上での行動だ。
することは何もなく、考えるだけ。テーマは「生」と「死」。
その中での行動に誰が非難できるのだろうか。
彼らは充分に尊厳を重視したはず。相手もこれ以上もなく尊厳を重視され、処置されて頂かれたのではある意味納得も行くのではないだろうか。
少なくとも話し合って合意があった人同士ならいいのでは。

この映画が投げかけるテーマはあまりにも深く重い。
でも、救助された彼らはこの映画ではヒーローで終わっていたが、実世界ではその後談があったはず。
その後の世論の騒動から彼らがどう対処し、世間もどう理解を示したかも知りたかった。


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