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くぼた夕日堂

釣りとは関係の無いことを、つらつらとゆるゆると綴るエッセイの始まりです。命名は村上朝日堂からヒントを得たもので、本家・朝日堂の亜流ということでの夕日堂です。

久保田夕日堂だとなんだか硬すぎるし、クボタ夕日堂だとクボタタ...と北斗の拳みたいになるので、ひらがなの『くぼた』にしました。(くぼた毎日堂というのも考えましたが、毎日は書けないのでボツです)

知らない人がいるかもしれないので、念のためにことわっておくと、村上朝日堂というのは村上春樹のエッセイで週刊朝日に連載されていたものです。

安西水丸さんの絵とセットで、単行本としてまとめられて何冊か出版されています。水丸さんの絵がまたとても良いのです(画像は水丸さんとは無関係です、僕のイラストです)

残念ながら、何年か前に水丸さんが亡くなられたので、村上朝日堂はもう続かないと思っていましたが、期間限定でホームページとかあったようですね。

本業の小説とは趣きをガラッと変えた、ゆるめのエッセイというスタンスを踏襲したものが目標です。まあそれほど大層なものではありませんが。。

村上春樹を知ったのは、『1973年のピンボール』を読んだのが始まりで、続編の『羊をめぐる冒険』はまだ出ていなかったので、ちょうど40年ほどになります。ずいぶん経ちますね。

もともと本というか、小説などほとんど読まない10代後半の僕が、村上春樹を読みはじめたのは、流行通信的なファッション系の青年誌で紹介されていたのを見たのが、きっかけです。(チャラいやつでした)

当時はまだ新進気鋭の流行作家という感じで紹介されていて(群像新人文学賞を受賞していた)、僕の周りでその存在を知る人はいなかったように思います。

ピンボール→風の歌を聴け→羊をめぐる と順番はテレコになったけれど、初期三部作を読んで、すっかりハマった。風の歌とピンボールの評判は賛否両論だけれど(本人も未熟な作品と評している)個人的にはとても好きです。

乾いているいうか、日本文学っぽく無いんですよね。日本文学をあまり読んでない僕がいうのもなんですが。昭和の時代の邦画(ジメッとした感じ)があまり好きじゃないのと似ているといえば分かってもらえるかなぁ。(寅さんは別。大好きです)

以来、長編小説が出たら必ず買うし、短編やエッセイも目についたら買ってきました。『ノルウェーの森』で大ブレークした時はちょっとびっくりしたけど(世間一般にウケる文章ではないと思っていた)、なんだか自分が認められたようで嬉しかった。僕には先見の明があったんだぞ、という感じでしょうか(笑)

しかし、『ノルウェーの森』以降、ファッションの一部のような扱いをされて、正当に評価されないというか、ほんとに中身読んでるのか?と思わされる輩も続出して、ハルキストとか出てきて最悪だぁ〜と思った時期もありましたが、世の中捨てたものじゃありません。真摯で熱烈なファンがたくさんいるのであります。僕もそのひとりであると自負しております。

そんな僕のパロディ版・村上朝日堂、もとい、くぼた夕日堂ですが、今回のトピックは、なんと『村上春樹と遭遇』というネタで締めたいと思います。

東京在住の方は、日常的に芸能人や有名人に出会うことも珍しくないと聞きおよびますが、関西の一地方都市で暮らしていると、そのようなことはごく稀なことであります。

新大阪の新幹線のホームで、坂東英二を見かけて興奮するのが関の山でありました(別に坂東さんに興味はありませんでしたが、すみません)

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村上春樹氏を見かけたのは、芦屋のとなり、西宮のイタリアンレストランで、地震の前だったので90年代前半だったと思うけれど日時はよく覚えていない。

ボナペティート(今はもう無くなってしまったみたいです)という、広くて天井が高くガラス張りの洒落たお店だった。僕は当時の彼女(いまの奥さん・たぶん)と一緒に遅めのランチに出かけていた。

ランチタイムを過ぎていたせいか、店内は閑散としていて、お客は僕らを含めて3ペアほどしか居なかった。メニューを選んでいたとき、ふと数席先のテーブルを見たとき、村上春樹と奥様が二人で座っていた。

当時はまだそれほど顔写真が世間に出ていなかったので、最初はあれっ?という感じで似ているな・・と思ったが、奥様をみて間違いないと思った。長髪でスラリとした容姿が、安西水丸さんの描く村上氏の奥様そのままだったからである。

『絶対、間違い無いよね・・』と僕は彼女(今の奥さん・たぶん)に小さな声で囁き、彼女も激しく同意した。というと少しオーバーだけれど。少なからず二人で高揚したのは事実です。

チラチラ見ながら(何度か目が合ったような気がする)食事が終わり、お手洗いに行った際に偶然(狙ってません)村上氏と二人きりになった。

『ずっとあなたの小説のファンです』と言う絶好のチャンスだと思ったが、場所が場所だけにためらった。結局、言えずじまいで席をはなれた。

***

後日、氏のエッセイ『村上朝日堂はいかにして鍛えられたか』の中で、ファンの人から電車や街で声を掛けられる事についての記述があり、気づいてもできればそっとして欲しいということが切々と綴られていた。

あぁ、あの時、話し掛けなくて良かった〜と思ったのは言うまでもない。もしかしたら、トイレでいきなり『ずっとファンです』と声を掛けられたというネタが、エッセイになったかもしれないけれど。。それはあまり喜ばしくないですよね。

最近になって、さだまさし氏が同様の経験をされて、トイレで用を足している際に隣で用を足している人から『あなた、さだまさしだよね』と声を掛けられ『はい』と答えると握手を求められて握手したという話を聞いた。あの時は困った・・と(笑)

流石に用を足しながらはあり得ないと思うけど、もう少しでそれに近い輩になりかけた小生でありました。やれやれ。

僕は有名人でもないし、もちろん芸能人でもないが、極々たまに知らない人から声を掛けられることがある。たまに釣り雑誌に載ったりネットで顔写真を出しているからだろうと思うけれど。

基本、シャイで初対面の人とうまく話せない、話していても特に面白いことのひとつも言えない人間です(お酒が入ると少し変わります)。写真でうまく笑顔も作れません。ほんとはニコニコと接することが出来たらいいのですが。なので、できたらそっとしてもらえると助かります。すみません。村上春樹じゃないけれど。

さてさて、宴もたけなわ?ではございますが、今回はこのあたりで。お開きにします。次回『くぼた夕日堂』をお楽しみに。(楽しみにしてくれる人がいればよいのですが・しくしく)










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