「Foo release me ,girl?」一部*

「湾岸」の倉庫の様なビル。
海の見える側にそのまま車を停める。
外側の鉄の階段は錆びていた。
初めて車を持った時、
彼女と彼女の友達の住んでいた最上階の、
グランドピアノとウッドベースと、
それからまだとても高価だった
グラフィック用のMacのある、
ハウススタジオに遊びに行った。
ウッドベースは誰かのもので、
ピアノは彼女の所有のもので、それらが置いてあり
友達が使っている大きな鉄のロールが付いた
版画のプレス機も片隅にあったけれど、
その部屋はまるでそれらの存在を
全く意識させないほど広かった。

僕は知っていたけれど、
彼女は、何も楽器を使わずに
楽譜を書き曲を作ることが出来た。
彼女の才能は僕から見ると特別だった。
「そういう人を他にも知ってる。」と言う。
作曲家という人達ならばは
そう出来るのだということを
僕はもっと後になって知る。
それに加えて女の子と思えぬ機械を使いこなす感覚も
それが当然の事の様だったし、
そういう女子は今までにごく数人しか見た事が無いが居て、
その時に、彼女の事を思い出してある不思議な感覚を憶えた。
彼女は一番だった。

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