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神経発達症(発達障害)息子の母になる〜息子の失踪①



参観日前のある日。
この日も出血が続いて安静にしなければならなかったのですが

この年はとても暑くて
息子は海に行きたがりました。

海は家から比較的近い場所にあるのですが、
絶対安静にしなければならなかったがために
連れて行ってあげられず

「ごめんね。お腹が痛くて連れてってあげられないんだ。」

と、何度も息子にもわかるように話しましたが
全く通じません。

「海に行こう、海、行きたい」
と何度も同じことを繰り返し言います。

もういい加減うんざりしてくるほど
しつこく誘ってくるので

「だから!お腹が痛いから、いけないって言ってるでしょう。しつこい!」
かなり強めに言いました。

すると息子は、
「んんんーーーっ!(怒)」
と、言葉にならない怒声を発して
足をどんどん踏み鳴らしながら下の仕事部屋にいる夫の元に向かいました。

どうせ夫にも海に行こうと誘って
断られて、ギャーギャー言いながら戻ってくるか、

夫に言いくるめられて
仕事部屋の片隅でYouTubeを見ているか2つに1つだと思っていました。


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しばらくしても
息子は戻ってくる気配がなく
諦めて仕事部屋でYouTubeコースを選択したのだと思っていました。


これはこの日に限ったことではなく、
私に叱られたり、退屈になると
息子はよく夫の仕事部屋に行っていたので
特に不審に思う事はありませんでした。


ようやく静かになり、ホッと一息ついていると
パトカーが数台すごいスピードで家の前を走り抜けて行きました。


大きな事件が起こった時のようなスピードです。


わたしは、何が起こったのかなぁと
悠長に考えながら横になったままでいました。


それからしばらくして
仕事中の夫が珍しくリビングにやってきました。

不安そうな、怪訝そうな顔をして

「ねぇ、こっちにEくん(息子)いる?
警察から今、電話がかかってきてるんだけど。」

時間が止まったような錯覚を覚えました。

「え、そっちにいるんじゃないの?
さっき海に行こうってしつこくて。
お腹が痛くていけないよって言ったら、怒ってあなたのところに行ったけど。」

夫は私の言葉に、顔色を変えました。

「俺気づいてなかった、来てたかもしれないけど…クローゼットの整理してたから玄関の方見てなかった」

我が家は自営業をしていて、
居住スペース側に玄関が1つ、
夫の仕事部屋側に2つ目の玄関があり

夫がいう仕事部屋のクローゼットは
2つ目、玄関側の死角にあります。

「そっちの玄関鍵かけてなかったの?」


心臓が痛い位に脈打ちます。
それじゃあ、あのパトカーは…


「わかんない。かけてなかったかも…ごめん」

夫の言葉に全身の血の気が引いていくのを感じました。

下腹部と脈打つ心臓が痛く
わたしはしゃがみ込みました。

夫は片手に携帯電話を持ったまま
呆然と立ち尽くし、それを見ているだけです。


「今…警察に電話繋がってるの?」

「あ…そうだった…、うん。まだ繋がってる。」
夫は私の言葉にハッとしたように我に返り、
携帯画面の表示を見て言いました。

「代わって」


私は夫から警察につながっている携帯電話を受け取りました。


全身が冷や汗でびしょびしょになっていたのを覚えています。




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