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愛と憎悪は紙一重

「ヤンデレ」という言葉があります。
簡単にいうと、好きな人への思いが強すぎるあまり、精神が病んでしまう状態のことですね。


この人を自分だけのものにしたい。
この人の全てを知っていたい。
他の誰にも取られたくない。
自分だけを見てほしい。……


そういった病的なまでの執着心は、残念ながら相手に受け入れてもらえないことも多いでしょう。

そうなると溜まっていくのは、満たされない欲望だけ。


「こんなに尽くしているのに、どうして報われないの?」という苦しみはじわじわと心を蝕んで、重すぎる愛はいつの間にか憎悪へと変わっていく…


いわゆる「ヤンデレキャラ」は、大体このような経路をたどってしまう運命にあります。

こういうキャラは確かにちょっと怖いですが、この暗くて悲しい過程に、なぜだか私はとても親しみを感じてしまうんですよね。


私は別にヤンデレキャラが特別好きというわけではないし、自分もそういうタイプではありません(多分…)。

度を超えた嫉妬や束縛はどちらかというと苦手だし、ドライな関係の方が楽でいいなーと思います。


だけどそんな私にも、「愛と憎悪がない交ぜになってしまう」ヤンデレ的な感情って、どこかにあるような気がするんです。



愛と憎悪。その人を慕う気持ちと、憎らしく思う気持ち。
この二つの感情は確かに相反するものです。

でもちょっと思い返してみると、どこか似ているところがあるような気がしてきませんか。


好きな人と嫌いな人が、自分の近くに来た時のことを考えてみてください。

どちらの場合も、なんとなく落ち着かなくなったり、その人の動向が気になってしまったり、視界の端の方で姿を追ってしまったりしませんか?


私にはそういう経験があります。
嫌いな人のことは見ない方がいいはずなのに、なぜだか気になって、ちらりと様子を伺ってしまう。

その人をじっと見つめている私の横顔は、端から見ると、まるでその人に恋しているかのように見えるかもしれません。



好きであれ嫌いであれ、その人が自分にとって特別な存在であるほど、その気持ちを薄めることは難しくなります。

だから関係性が変わった途端に、思いの強さはそのままに、感情の種類だけが違うものにすり変わってしまうことがあるんじゃないでしょうか。


好きな人が嫌いな人になったり、嫌いな人が好きな人になったり。
あるいは、同時に好きと嫌いを向けてしまうことだって。


めちゃくちゃ嫌いだったはずの人といつの間にか付き合ってた…なんて話もよく聞きますよね。

上手く言えないんですが、好きな気持ちと嫌いな気持ちって、どこかで繋がっているような気がします。




愛と憎悪という気持ちは、どちらもとても強いです。

そして人間なら誰しも、それらの感情を誰かに抱いてしまう。

時にはその思いの強さに苦しんだり、その人を見つめる自分の目が恋に燃えているのか、憎しみに燃えているのか判断できなくなってしまうこともあるでしょう。


そのもどかしさに狂う姿が、すごく人間らしくて、切なくて、いとおしい。
だから私は、ヤンデレキャラに親しみを感じてしまうんだと思います。
人間味を欠いているように見えて、実は最も人間味を凝縮したキャラなんじゃないでしょうか。



ちなみにヤンデレキャラというのは、近年の日本のアニメ文化以前からたくさん存在します。

『源氏物語』に登場する六条御息所は、源氏に恋するあまり生き霊となって彼の正妻を呪い殺しましたし、『嵐が丘』に登場するヒースクリフは、他の男と結婚した想い人にネチネチと復讐をします。


標的にされた方からしたらたまったものじゃないですが、彼らを見ていると、「愛と憎悪は紙一重」なんだと強く感じますね…。


ちなみに私が個人的に一番好きなのは、太宰治の短編小説『駆け込み訴え』です。

イエスキリストを裏切った男ユダがイエスへの思いをつらつらと述べているだけの話なんですが、とにかく、愛が重い!!(笑)

イエスに対する愛と憎しみが、ぐっちゃぐちゃになっています。


「私は誰よりもあの人を愛しているのに、あの人は皆に好かれて…!!」
「こんなに愛しているのに、なんの報酬もない!!」
「百姓ふぜいにも、あの人は優しく接するんだ。」
「私はあの人に、全てを捧げたのに!!」
「あの人をだれかに手渡すくらいなら、その前に私の手であの人を殺してやる…」



……ってな具合で、最終的には彼はイエスを売ることを決めるわけです。

彼が六条御息所たちと違うのは、嫉妬のあまり、その愛する人本人を殺そうと思ってしまったところですね。
これぞ究極のヤンデレ、という気がします。
気になる人は呼んでみてください😊


今日は、危険さの中に見えるヤンデレの人間味について語ってみました。

呼んでくださりありがとうございました✨


ではまた次回~



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