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『電子書籍2020 本の在り方は変化する(ICE新書)』の編集後記を公開!

2021年3月30日に発売された書籍『電子書籍2020 本の在り方は変化する』(著:萩野正昭)の担当編集者による「編集後記」を公開いたします!

編集後記


 著者には遠く及びませんが、比較的早い時期から「電子書籍」に携わる機会に恵まれました。何度目かの「電子書籍元年」にも立ち会ったと記憶しています(ちなみに著者は何度も「元年」を経験しています)。その頃は、同じ出版社内でも電子書籍への風当たりは強く、「紙の本が売れなくなる」などと批判されることがよくありました。

 今となっては状況は一変、市民権を得た電子書籍は、出版社も無視できないどころか、意識せざるを得ない存在になりました。今、以前のように批判する人はほとんどいないでしょう。

 それでも、大手出版社を中心に〝紙至上主義〟は変わっていないように思います。無視できないからしないだけで、けっして電子書籍を愛してはいないのです。もちろん出版にかかわる誰もが、本(作品)を愛してはいます。

 一方で、さほど読書好きでない人と電子書籍の話題になっても、「本はやっぱり紙じゃないと読めない」とか言われます。電子書籍は一瞥されて、ただなんとなく紙の本の下に位置づけられるのです。よくよく聞くと、単に電子書籍に触れたことがなく、食わず嫌いなだけのようではありますが。

 もちろん好みはあるでしょう。紙も電子もどちらも読んで、やっぱりこちらが読みやすいとか、頭に入ってくるとか、体験した上でどちらかを好むのは当然のことです。

 それにしても、です。本を愛していたって、愛していなくたって、やっぱり「電子書籍」への視線は冷ややかで、心底愛されてはいないのです。なぜなのでしょう?

 その問いに答えをくれたのが著者であり、本書です。

 電子書籍は紙の本の「代替品」だったのです。劣化版だと思う人もいたでしょう。そりゃあオリジナルが愛されるはずです。その姿も、流通網も、美しく仕上がっている紙の本。電子書籍はずっと〝紙の本憧れ本〟だったように思えます。

 自戒の念も込めて、ただ模倣するのはもう終わりにしなくては。「代替品」ではなくて、「あたらしい本」になるのだ、と本書に教えられました。

 すべてはWWWにのって、相互リンクし合う時代。これにのっていく「あたらしい本」の形を目指して。愛される「新生・電子書籍」になるときです。「出版」も、生き残るのではなくて、新たなものをつくり出していくときです。

 新生・電子書籍も、紙の本も、どちらも愛されるように、心を込めて前進します。

 本書が、読者の人生に役立つことを願って。

担当編集 深谷その子

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