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【レノバ・イーレックス】バイオマス発電事業のリスクについて

こんにちは。MAKOです。
先日、バイオマス発電の勉強会に参加したのですが、そこで「バイオマス事業のリスクは小さくない」という話を聞きました。
私がウォッチしているレノバも大規模にバイオマス事業を展開しているため、どの程度のリスクを抱えているのかについて書いていきたいと思います。

レノバのバイオマス事業について

レノバは既に秋田、苅田の2つのバイオマス発電所を運転しており、さらに今後5工場が稼働する見込みです。

レノバが扱うバイオマス発電所は全てFITによるもので売電単価一定で20年間の買取りが保証されています。ここだけを聞くと「どこにリスクがあるの?」と思うかもしれませんが、具体的に書いていきたいと思います。

燃料調達リスク

バイオマス発電事業の1番大きなリスクは「燃料調達費用が変動費である」という点です。太陽光、風力、地熱など様々な再エネの中でバイオマスだけは燃料が必要なのです。

①原油高による燃料価格高騰
海外のバイオマス燃料は大型タンカーによって輸入されますが、タンカーの燃料は重油なので原油高となればバイオマス燃料価格も上昇します。長期契約によりヘッジをしたとしても輸送費は固定出来ないでしょうから、バイオマス発電事業の利益を圧迫します。

②円安による燃料価格高騰
みなさんご存知の通り、現在急激な円安が進んでいます。10月には一時的に150円/$をつけました(11月現在は140円/$程度)。為替予約をしたとしても数年程度のごく短期間の間しか出来ないでしょうから、こちらも利益を圧迫します。

これら①、②が重なると燃料価格は1.5〜2倍程度になります。バイオマス発電事業は売上(売電収入)の約半分が燃料費と言われており、ここまで燃料費が上がると赤字操業になる可能性があります。

レノバの状況

①原油高による燃料価格高騰の影響
レノバのバイオマス事業の昨年度比較EBITDAを見てみると以下の通りです。

・秋田:31.1%→27.1%(▲4.0%)
・苅田:44.6%→35.1%(▲9.5%)

どちらも利益が圧迫されているのが分かります。特に輸入燃料比率の大きい苅田は10%近く利益が減少しており、利益計画を下回っている可能性があります。

②円安による燃料価格高騰の影響
円安の影響に関しては為替予約によって影響はないようですが、有利子負債が63億円→219億円に増加しています。主な増減要因に「バイオマス燃料調達に係る長期為替予約の公正価格変動」とあります。

私も金融にはあまり詳しくありませんが、ざっくり言うと「為替予約してなかったら156億円位燃料費が増加してた」ということでしょうか。そうであればさすが金融のプロ集団ですね。

所感
レノバも燃料価格高騰の影響を受けていることがわかりました。これで「燃料調達費用が変動費である」ことのリスクの大きさがお分かりいただけたかと思います。以下レノバ開示資料にも明確にリスクとして挙げられていますね。

レノバの今後について
過去に「200MWクラスのバイオマス発電所を検討中」とか「石炭発電所のバイオマス化」などは構想として挙げられていましたが、おそらくバイオマス関連の開発は現在建設中の5件以降、一旦ストップするのではないでしょうか。
バイオマス燃料リスクを確実にヘッジできない以上、それが賢明な判断のように思われます。

なお、レノバは輸入燃料に頼らない取り組みとして国内での草生樹の植林なども行っています。

元々10〜20年かけて国内のバイオマス燃料に移行するつもりだったようなので、国内燃料市場が育つ2030年位まで新しいバイオマス発電所の建設は無いと私は見ています。

今後のレノバのバイオマス事業の方針については引き続き注視したいと思います。

類似企業(イーレックス)の状況

一方で類似企業であるイーレックスもバイオマス燃料リスクは認識しているようです。

ただし、イーレックスはバイオマスの開発を加速させるという判断をしています。

ベトナムでのバイオマス発電所開発
イーレックスは現在ベトナムで14案件という信じ難い規模の開発計画を進めています。投資規模は約3000億円と言われていますから、絶対に失敗できないプロジェクトだとは思いますが、不確定要素の多い海外でこれだけの規模を進めて本当に大丈夫なのでしょうか。

石炭火力のバイオマス混焼
さらに石炭火力発電所のバイオマス化事業についても進めています。こちらはダメなら石炭に戻せばいいので比較的リスクは少ないかもしれません。

ベトナムでの燃料調達
こんなにバイオマス発電所を開発して燃料はどうするつもりなのかと言うと、イーレックスではニューソルガムという草生樹を開発しており、これがベトナム事業での燃料になると思われます。

これだけ大規模な海外事業と燃料開発を同時に行うのはかなりリスキーだとは思いますが、イーレックスはバイオマスの会社なので撤退という選択肢はないのでしょう。
レノバはバイオマス以外にも太陽光、地熱、陸上風力、洋上風力があるので開発停止(推測)という選択が出来たとも言えます。

株価(レノバ )について

先日の決算後、レノバの株価は15%近く急落しました。これはおそらくバイオマス燃料高騰による利益の圧迫が秋田、苅田で明らかになったためと思われます。急落原因について言及しているメディアは見つかりませんでしたが、他に要因となるものはありませんし間違いないと思います。

決算Q&Aでも同様の指摘は受けており、木南CEOは「リスクヘッジしているので大きな影響は無い」というニュアンスで答えていますが、定量的な回答ではなかったので投資家は「売り」と判断したのでしょう。

決算説明会Q&A

まとめ

以上、バイオマスにおける燃料リスクについて書いてみました。バイオマスの開発を一旦停止した(と思われる)レノバと、開発を加速するイーレックス。どちらの判断が正しいかは5年後あたりに明らかになると思われます。
ちなみに私は不確定なリスクは避けたいタイプなのでレノバの判断を支持します。まあ、イーレックスがリスクに見合うリターンを得る可能性もありますけどね。引き続き注視したいと思います。

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