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2021年 読書ランキング

今年は年初から読書量の増大をテーマに掲げ、特に前半は多くの本を読むことができました。そこで、この1年で印象に残った本を記録してみました。
筆者はAI系の仕事をしているので当然そういったデータ分析系の本も読むのですが、仕事として読んでいて読み方も違うのでランキングからは除外しています。

  1. 『レストラン ドイツ亭』 Deutsches Haus, Annette Hess

  2. 『家は生態系』ロブ・ダン

  3. 『嫌われ監督』

  4. 『同志少女よ、敵を打て』 

  5. 『ある明治人の記録』石光真人編著 中公新書

  6. 『人間をお休みしてヤギになってみた結果』

  7. 『MR』

  8. 『一度読んだら忘れない世界史の教科書』

  9. “The Queen’s Ganbit”

  10. 『リーダーを目指す人の心得』“Its worked for me. In life and leadership“ コリン・パウエル

    選外だが何度も読み返した本
    『一度きりの大泉の話』
    『そばですよ』

選評

2021年に読んだ本第1位


 一位は何といっても『ドイツ亭』。第二次世界大戦時のドイツのユダヤ人虐殺を扱った小説。名高い悪人・善人についてではなく、当時市民として暮らしていて、戦後もつつましく暮らしてきた善良な市民のリアルな問題として語られるところが新しい。
 魂を揺さぶられる名作である。香港で、ウイグルで、生活保護の申請窓口で、私が見ないようにして暮らしているひっそりと私が追認してしまっているようなことに、改めて向き合わされる。


 2位は科学もので、『家は生態系―あなたは20万種の生き物と暮らしている』。その他さまざまな科学本を読んだが今年読んだ中ではこれが頭一つ抜けている。生態学をあなたの家の壁、埃といった場所で考えた本。
 人間・家・家族をシステムとして捉える感覚は、コンサルタントとして会社などのシステムの健全さをどうとらえるかといった問題に通じるものがあると感じた。

 3位は、迷ったが『嫌われ監督』。内容が非常にまとまっているだけでなく、明日からの自分自身のリーダーとしての働き方や、ポリシーについてこれほど真剣に考えさせられた本はない。なんというか、3位に入れさせられたという感がある。
 落合監督を目指すべきかはわからないが、突飛な人間をことさらに目指すような志向が自分にあることに反省し、周りからの評価ではなく、自分のポリシーを一貫して持つことが重要だと再認識。

 4位は、12月12日に読了したばかりなので印象が新しいせいかもしれないが、『同志少女よ、敵を打て』。本の雑誌の今年のランキング1位になっていたことから購入。アガサ・クリスティー賞にも輝いている。
 『ドイツ亭』があまりにもインパクトがあったことから購入してみた同じ第二次世界大戦ものだが、ソ連の少女の立場から日本人が書いている。面白さと感動、いくらかの知識の追加と私が小説に求めるものをすべて提供してくれた。こんな本をもっと読みたい。

 5位は、いまさらながら読んだ『ある明治人の記録』。これまで読まなかったことを後悔するほどの名作である。日本語を母国語とする読書人すべてに強く薦める。
 明治維新の激動のなか、元会津藩藩士子息の柴五郎の生きざまが記されるのだが、正直内容についてうまくまとめられない。とにかく読んでみてほしい。
 感動と同時に、日本人は、何か大切なものを失いつつあるような気がしてくる。少なくとも、日本の美点とか強みとか欠点について、もっと明文化された定義・議論・それを維持・改善するための活動が必要なのではないだろうか。

 『人間をお休みしてヤギになってしまった結果』は、バカバカしさが突き抜けて一種の哲学になってしまっているタイトル通りの怪書。気楽に読めるがなかなか味わい深いものがあり、3度も読んでしまった。著者の処女作もおすすめであり期待を裏切らないバカバカしさと一瞬の現代文明批判を提供してくれる。
 『MR』は製薬業界の実情を知りながら小説としても楽しめる良書。この著者の書籍は今後も読んでいきたい。
 『一度読んだら忘れない世界史の教科書』は勉強のために買ったが、読み物として面白い。歴史というのは世界観を学ぶものであることを改めて認識した。
 “The Queen’s Ganbit“はアマゾンプライムのヒットドラマをきっかけに、今年唯一英語で読了できた本。意外にも英語が簡潔で、Kindleの英単語の解説をつけてくれる機能に頼ることで楽しんで読めた。ドラマは予想以上に原作小説に忠実に作られているように思うが、やはりドラマでは主演女優の切れ味のある美貌がドラマとして華をもたらしている。小説ではもう少し内面の葛藤が描かれているが、著者はチェスにまつわる小説ばかりを書いている人のようでしばしばチェスゲームの中身が細かく描写されている。この部分は相当チェスが分かる人でないと理解は難しい。私はAndroidでアプリをダウンロードしてチェスを勉強しながら読んだが、残念ながら試合内容の描写を理解するのは途中で諦めた。この本のおかげで、たまにアプリでチェスを楽しむようになったこともあり入選。
 パウエルの自伝(和訳タイトル微妙)は、Kindleで購入しておりずっと読めていなかったものを年初の読書量増大の目標達成のための端緒として読んだもの。出世する人間の心得らしきものがちりばめられているが、これを読んで自分の生活にどう生かすか少し考えたものの、今に至るまで答えは出て位いない。
 選外には本の雑誌等で騒がれていた萩尾望都の『一度きりの大泉の話』を入れざる得ない。正直わざわざ出版するような内容かと思えるほどの私的な内容なのだが、他の本や記事の情報と合わせ、草創期の少女漫画にいくらかでも興味がある人には読むのを止められない内容になっている。『そばですよ』は、すばらしい店を自分なりの視点で紹介してくれたhidden gem本。おかげさまで私も素敵な店に出会えたのでぜひ記録に入れたい。



 


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