世界経済の凸と凹を合わせてみたくなる話
YouTubeでこんな話をしていた。「中国まる見え情報局」という私が時々視聴するチャンネル。いつも中国人が2人出てきて日本語で対話をしている。動画のタイトルは「【バブル崩壊後】今、中国で何が起こっているのか?」。
私は中国人は本当に大好きだ。数個前の記事で私は自分のことを発達障害っぽいと紹介した。自己紹介ほどあてにならないものはない。誰でもそうだけど、自分が周りからどう見られているのかは、自分の周りにいる人はみんな知っているが自分だけは永遠に分からない。つまりドッペルゲンガーみたいに自分を外から見ることができる人なんかいない。いたらそれこそドッペルゲンガーであって、まともな認知能力を保っているとは考えられないのでそれだけで自己客観視の能力はないと言えるし。そういう自分が自分のことをこうだと言ったとしてそれがどれだけ客観的なのか、しかもそれを他者に向けて語る時、そこに意識的、無意識的に「こう見せたい」という願望やバイアスが必ずかかるはずである。しかしそんなことはどうでもいい(ドストエフスキーの口癖みたいやけど)。私は少なくとも若い時はどこに行っても程度の多少はあれ、変人と言われた。だからどこか変なのだろう。しかし、もし私が中国に行ったら、私は別に変とも思われず、普通の人として生きていけるのではないか?そんなことを時々考えることがある。日本人よりも分かりやすい。つまり本心をわりとストレートに出すし。たとえば相手が私のことに興味があるのかないのかも態度にはっきりと出る。初対面ではやはり分からないが、いちおう知り合いになった後は、わかりやすいサインを出してくる。サインというよりもっとストレートな、態度に出てくる。日本人は、少なくとも私には、知り合いになった後でも「この人は私のことをどう思ってるんだろう?」という本心を見せてくれることはまずない、と感じる。ちなみにこのことに関しては欧米の人たちは中国に近くて日本に遠い、というか日本はこの点に関してはかなり特殊な人たちかもしれない。だから日本人が、日本人相手に、こころのふれあいを感じる会話をしたことがないのに、かえって外国人と、下手な英語で、他人とこんな深い話をしたことはない、みたいな話をすることがあったりするように思う。
あとは無配慮なところ。いくら空気読めない私でも、中国人よりも周りに気を遣えるのではないか、従って普通の人として通るのではないか、とか。
以上のように私は中国人が好きだが、中国共産党政府は嫌いだ。こういう立ち位置はそのまま台湾人や香港人と仲良くなる下地になる。上記のYouTubeチャンネルは大陸の中国人だが。そして大陸の中国人だって、口に出すことは難しいかもしれないが、共産党政府に不満や違和感を一つも持ってないということはないだろうし。そこらへんが大陸の中国人の話を聞く時に面白みになる。彼らはものすごくざっくばらんに話をしているのではないが、どこかにホンネも出てくるだろう。それを推測しながら話を聞くのも面白い。たとえば推理小説の登場人物は、誰が犯人か分からない、ある人物が本当のことを言ってるのか嘘を言ってるのか分からない、そういう話を聞きながら推理小説を楽しむというのに少し似てるかもしれない。
前置きが長くなったが、彼らは中国経済の現状について話をしていた。供給力過剰で、それを輸出に向けるとデフレを一緒に輸出してるとか、不当な政府の補助金で安く売ることで輸出先の産業を破壊する、要するにダンピングを仕掛けてると非難される。中国はどうすればいいか、と。そこで中国のSNSか何かでこんなアイデアを見つけた、と紹介していた。
今、ロシアはウクライナで戦争をして、あの広い国土の中で兵力は西の国境のほうに偏って配備されていて、東側のシベリアなどは手薄になっている、と。そこで「美しい一手がある」と。手薄になったロシアの国境を越え中国がシベリアに軍隊で攻め込んで支配する。シベリアには天然ガス、石油の資源があり、土地も広大で農産物もあるが、ロシアは技術力、開発能力、資金がなく商業環境も悪い。一方中国はインフラ建設が得意である。中国が電気自動車、電池、鋼鉄などを1年で生産する量は世界全体の需要の2倍ほどあり、生産能力が過剰で困っている。赤字でも生産し続けなければいけないが、それをシベリア開発に向ければ、土地も自分のもの、資源も自分のもの、新しい経済発展もできて、しかもロシアの奴をしつけることもできる、昔奪われた土地も全部奪還できる、そうすると国の威信も立ち、国民の支持も得ることができる。北方領土も奪って日本に返し、資源を世界に売れば日本や欧米との関係改善もできる。もし私が国家主席だったら今すぐこれをやる、と。そういう意見を中国のSNS上で見つけた、と。それをこのチャンネルの人は「机上の空論ですが、面白いじゃないですか」と紹介していた。
なんだか中国のB級映画を見ているような感じの発想だ。けなしているんじゃなくて、何というんでしょう、「トムとジェリー」みたいな、「ピタゴラスイッチ」みたいな、あっちの凸とこっちの凹を合わせるみたいなマンガ的な発想が中国人らしいなあ、と思った。実は私もちょっと似たことを以前考えたことがある。やはり世界にある大いなる凸と凹を合わせると帳尻が合う、しかし政治的にどう考えても無理だ、ということを。つまり世界は一方でインフレつまりモノが足りないという現実があり、その一方で中国の生産能力過剰問題、デフレを世界にバラ撒こうとしている問題がある。それならモノが足りないというインフレの場面に、モノが余っているデフレの状態を合わせれば問題が解決する。どこでそれをやるか。それは数カ月前にニュースで聞いたが、チェコがウクライナに供与する砲弾を世界じゅうから調達しているという。チェコは国内の軍需産業がアフリカ、中東、アジアなどに生産物を供給してきたことから、それらの地域の軍需産業についての情報の蓄積を持っているという。それらの情報はデリケートな性質のものなので、具体的にどこで調達したのかはチェコ政府も明かさない。今、ロシアとウクライナの戦争で使われる弾薬は、自衛隊のストックが数日でなくなるぐらい大量だという。チェコは過去にロシアに占領された経験があるから、ロシアが西側に進撃したことに危機感をもっているから、必死で、なりふり構わず弾薬を集めてウクライナに供与しているという。
昭和、平成時代に長谷川慶太郎というエコノミストがいた。彼は「21世紀はデフレの時代」と言っていた。世界で局所的な紛争はあるだろうが大規模な戦争はもはや起こらない、それが世界をデフレにすると言った。戦争がないから各種インフラは壊されないし、武器もいらない。従ってそれらを消費する需要も小さいからデフレになると。しかし、思いもかけず、第3次世界大戦が起こるか?というような戦争が起きてしまった。そして武器弾薬の需要が大きくなった。それに応えるために、大きな生産能力を持つ国が、電気自動車とか鉄鋼とかコンクリートとか作るのではなくて、武器を作ればその世界的な凸と凹が埋まるではないか、と私は考えた。ひょっとしたらベルギー政府が調達先は明かせない、という中には既に中国も含まれているのではないか?とか。
中国は西側諸国から、ロシアに武器弾薬やそれに間接的に使われうるものを供給するなと釘をさされている。しかし実際は、直接武器でなくて、間接的に使われ得るものは売っている、しかもロシアの足元を見て、市場価格よりも高い値段で売っているという。北朝鮮も、あれだけ貧しい国だが、ロシアに兵器を売ることでしばらくの間はおいしい思いができるはずだ。
中国は生産能力の過剰、つまり需要を見つけられずに非常に困っている。上で示したような中国SNSでのアイデアは、その生産能力の先をシベリア開発に向けることで各種問題が解決するということだったが、人口4000万人弱のシベリアだけで中国の供給能力を引き受けることはできないだろうし、しかもロシア国民の感情を一顧だにしていない。パトロンを失うことになる北朝鮮のことも考慮外だし。武力による国境の変更がウクライナ戦争のいちばんの問題なのにそれをしようとしているし。
それに比べれば私が考えたことのほうがまだ現実的だ。西側諸国は中国にロシアに軍事物資を供給するなと釘をさしているが、一方、ウクライナに武器弾薬を供給したらどうだろう?最初はこっそりとチェコに売る。そのうち、中国の兵器供与がなければウクライナの戦争は続行できない、という現実ができてしまえば、おおっぴらにウクライナに兵器供与ができる。険悪になっている欧米諸国との関係も大いに改善できる。デフレの輸出を欧米にする代わりに兵器の需要に応えることで国際経済を大いに改善できる。
なんてことを私は数カ月前に考えていた。そういうことは政治的に非常に困難だが、もしアメリカの大統領に、非正統的で異端のトランプ大統領が再選されることになれば、ビジネスマンらしく、一期目は目の敵にしていた中国と一転、手を結び、ウクライナに武器供与することと引き換えに中国の体制に目をつぶる、みたいなことをするかもしれない、とか。
中國のSNSのアイデアも、私のアイデアも、両方とも世界のインフレと中国の供給過剰の凸と凹を合わせることで解決ができるのではないか、という発想だ。実際、凸と凹があればそれを合わせてみたい、というのは誰でも誘惑される発想だと思う。
ただもちろん、そういうことが起これば国際社会の問題は現状よりもさらにひどくなるかもしれない。つまりロシアのプーチンはサソリみたいで、小さいけど毒のある針を持ってるから危ない、という感じだとすると中国はガン細胞みたいで、こういう存在を許せば世界中に広がっていっちゃうので、サソリよりもたちが悪くなる。第2次大戦で世界は同じ失敗をしたと思う。やむを得なかったのかもしれないが、日独伊の枢軸国と対抗するために、欧米は中ソと組んだのだ。その結果が中ソの国連常任理事国入りだった。それは冷戦になり、彼らの拒否権の連発による国連の機能不全であり、そして今回のロシアのウクライナ開戦によって、岸田首相の言葉では、国際社会の根幹が揺らいだ。だから、もしロシアをやっつけるために中国に軍事物資生産をさせることができたとしても、それは控えめに言っても問題の先送りだし、おそらくそれに留まらず、問題をかえって大きくすることになろう。
しかし問題がどう解決するかは見えてこない。ウクライナは苦戦している。武器弾薬の不足は深刻だという。一方で中国は過剰な供給能力を抱えて国内経済も深刻で国際経済も迷惑を被っている。なんかすぐ凸と凹を合わせるという発想が浮かんできて他の解決策が思い浮かばない。これはたぶん中国政府が国内企業に変な補助金を与えたりせず自由市場で生き残るために自分らで需要を見つけ、あるいは作ることを覚えてもらうということなのかもしれないが、そうすると、軍事物資不足という需要がある、ではそれに応えよう、という発想になってしまう。まあ私が総理大臣ではないので今日は寝よう。
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