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回文マスター背嚢をつくる

 ふたつめの回文パックです。
 回文とは、前後どちらから読んでも同じである文章のことです。私は十余年ほど回文をつくりつづけています。界隈では回文マスターと呼ばれています。

 その回文マスターが背嚢をつくりました。
 背嚢とは背に負う袋のことです。なぜ背嚢なのか。
 今から五年ほど遡ります。回文マスターは未婚のおじさんです。世間的にかなりやばい存在です。異常者と指呼されても否定も反論もできません。
 しかし、異常者といえど人生を謳歌したい。休みの日ぐらい楽しんでもいいじゃないか。同じ異常者の友人と連れ立って、評判のラーメン店めぐりをするのがささやかな楽しみでした。
 ところがラーメン屋にも数に限りがあります。我々異常者にはもう新しく向かうべきお店はありませんでした。
「なにしよっか」
 我々は悩みました。足りない頭で考え抜きました。紆余を経てたどりついたアクティビティが登山でした。

 仔細は省きますが、私は、マーケットには満足できる背嚢──ザック、バックパックもしくはパックと呼ぶほうが一般的です。以下はパックとします──がないことに気づき、それなら自作しようとミシンを買ったのでした。
 今度は良い生地がないとの不満を抱きます。それで、ほとんど触れたこともないイラレでパターンをつくることにしました。
 それで思いついたのが回文のパターンです。玉石混淆ですが、ストックは1,000近くあります。その中から適当に選りすぐり、いくつかパターンを試作しました。以下がそれです。

 アウトドア用の生地をあつかうオンデマンド・プリントをやってくれるサプライヤーがアメリカにあります。そこで注文して回文柄の生地をつくってもらいました。
 個人的には控えめに言って最高の出来栄えだと信じてはいるものの、世間的にはどうだろうかというのが正直なところです。それで少しおよび腰になってしまい、回文パックには手をつけずにいました。
 ですが、黒とかコヨーテブラウンとか、売れ筋の色味でばかりつくっていても楽しくありませんでした。それで今日こさえたのが以下のパックです。

 なかなかよいですね。それではまた。

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