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【前半】戦争がある日常〜戦争がない異常な時代を生きる僕たちへ〜  

 4月の上旬、政府・自民党は防衛費を拡大する提言を示した。近年緊迫する東アジアの安全保障上の問題や、ロシアのウクライナ侵攻を受けての話だろう。国民の命と、日本という国を守るために必要な増額だというのだ。僕なりの切り込みを(後半で)する前に、簡単に内容をおさらいしたい。


具体的にどう変わるのか

 いくつかの変更点が指摘されているが、大きな点はその予算だ。今までGDP比で1%だったものが、約二倍の2%に。つまり5兆円増加の10兆円というとてつもない額になる。
 「いやいや、お金が多いからって、そりゃ軍事なわけだし、しかも、確かにウクライナを見てても、北朝鮮のミサイル見てても、怖いもん。こうした転換は当然なんじゃない?」そんな声が聞こえてきそうだ。そして、僕が今回伝えたい一つのことは、まさにその「軍事だから」という点だ。


 ここで立ち止まって考えてみてほしい。そして共に議論したい。軍事増強は何のためにやるのかを。そんなの当たり前じゃないか、国を、国民の命を守るためだろと、、、、 本当にそうだろうか。
 例えば、今回のウクライナ侵攻の問題も、ロシアが悪だとする見方がある一方で、僕自身は、NATOを拡大することで圧力を加え続けたアメリカ(NATO)の責任、戦略もあるのではないかということだ。つまり、軍備増強や勢力拡大による「抑止力」(核保有を正当化するときにいつも使われる言葉)が必ずしも平和には結び付かず、逆にパワーバランスに歪みを与え、戦争や対立を助長する側面があるのではないかということ。
 もう一つ。各種メディアや野党とのやり取りで明らかになったことは、今回の軍事増強の指針が予算ありきで、具体的な議論も、国際情勢や国内の軍事以外の領域(教育や医療など)とのバランスも考えた議論が全くなされていなそうなことだ。つまり、「緊張感高まってきたし、軍事増強しないとね」という、非常に単純な思考がそこには見える。(もしくは当初から温めていた現政権のプロジェクトを、実施するいい機会ということか)
 軍事的な話で言えば、より長期的な文脈で議論しなければならないのではないか。つまり、今回の政府の指針が大きな転換にしろ今までの延長にしろ、軍事予算を増大する意味を、日本的な文脈で解釈しなければいけない。先進国の中でも唯一賃金が上がらない国、日本。2015年には平均賃金で韓国に抜かれ、最低賃金ではほぼ倍額の差がついている。先進国の多くが最低賃金を上げる中、日本ではそれができない。そして、今後おそらく大きな経済成長は起こることはないであろう、日本の長期に及ぶ経済的低迷。ダメ押しで、止まることのない少子高齢化問題。あげたらキリがないほどの残念な状態なのだが、そんな国力の日本で、果たして軍事増大がどれだけ「日本を守ること」に繋がるのか。どうして、軍事増大が「日本という国をより追い込むこと」につながらないと言えるのか。(まるで第二次大戦期に自らの首を苦しめ大敗戦へ向かった旧日本帝国のように)
 今後も中国をはじめとする隣国はますます経済成長とともに、軍事的な強化を試みるだろう。その度に、日本は軍事力を強化するのか?決して勝てないと分かっている敵国に対して、軍事力をさらに増強していくのか?果たして政権与党は、今回の指針の先にある世界のシナリオを、描けているのだろうか?
 安倍・菅元首相からは各核共有の話題も出ているような状況。しかし現政権は、したたかに、最初は気づかれないように少しずつ改悪するのが得意な人たちだ。今回の軍事増大の議論も、国民や一人一人が関心を払わなければ、タイトルにつけた「戦争がある日常」が、日本に訪れる日はそう遠くないのかもしれない。そして気がついたときには、今は当たり前に享受している大学生活や友達、恋人との日常を捨て、戦争へと向かわざるを得ない、そんな世界線がこないと、言えるだろうか。
僕は「ゆでガエル理論」を想起した。

「ゆでガエル理論」、、、カエルを熱湯の中に入れると驚いて飛び出すが、常温の水の中に入れて徐々に熱すると、カエルはその温度変化に慣れていき、生命の危機と気が付かないうちにゆであがって死んでしまうのだ。
https://jinjibu.jp/keyword/detl/737/

 今回の軍事増大の議論に限らず、自民党政権による文書改竄や汚職などの危機的状況に対する日本国民の意識、民度、民主主義的感度の問題も、まさにカエルの話のようではないか。今私たちはすでに水の中にいて、温度が上がっている途中かもしれない。

 少し話が逸れてしまったみたいだ。戻そう戻そう。要するに、今議論されている軍事増大=日本国民を守るという図式そのものが、本当に真実かという投げかけだ。国民との議論もないまま、国家の安全の、根幹に関わる議論にもかかわらず急ぎで進める現政権。国力がやせ細り、社会の分断と格差の増大が進むこの日本で、やらなければいけないことは何なのか。数十年したら、今の政権を担う方達はこの世にいないだろう。その世界を引き継ぐのは我々であり、次世代の子供たちだ。平和とは何か。なぜ人は戦争をするのか。どうしたら、なくなるのか。
 次回は、軍事増大分の5兆円という大金で、教育や医療の分野では、どんなことが可能なのか。もしくは、なぜ教育や福祉に予算が割かれないのに、軍事ではいとも簡単に予算が決まるのか。教育などの分野と、軍事は違う領域に位置しているのか。そんな話題を、僕なりの視点で切り込みたい。

 # 軍事費倍増 

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