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音楽/ミュージックコミュニケーションを学ぶいりぐちの9冊 ①「音楽とはなにか」編

アイディアは自分の内にはない

大学生に向けて
新学期がはじまりました。あれもこれもやりたい気持ちでいっぱいだと思います。でも、いろいろありすぎて何からやったらいいかわからないかも?

おそらく、これから何かアイディアを出すように言われる場面が増えてくると思いますが、そういうとき、無心に自分の内を見つめても、悩みの渦に中に入っていくばかり。相当な天才でないと、アイディアは自分の内にはないのです。何かをこれまでの人生経験や感情の内から引っ張り出すのではなく、自分の外の「他者」を知りましょう!そのためには大学生のうちに、ぜひ外に出て実体験(旅、ライブ、アルバイト…)すること、そして読書をすることをおすすめします。

実体験については「見るまえに跳べ!」。この文章なんか読まなくてOKなので、やりたいことに向かってまずは一歩踏み出してみてくださいね。読書については、指標がないとなかなかスタートを切りにくいかもしれませんので、ここに書き記していきたいと思います。

おせっかいながらも、大学生に向けて、音楽/ミュージックコミュニケーションを学ぶいりぐちの9冊選書しました。渡邊未帆の独断と偏見で、比較的新しめで手に入りやすい書籍から選んでいます。3回に分けてお届けします。今日は①「音楽とはなにか」編です。

①「音楽とはなにか」編 3冊

imdkm『リズムから考えるJ-POP史』blueprint、2019

「この音楽いいな」と思うことはあると思いますが、そのとき自分はいったい音楽のなにを聴いているのでしょう。歌詞?声?雰囲気?メロディ?コード進行?いいというとかっこいいから?ファンだという思い込み?…それぞれあっていいと思いますけれど、この本では徹底してJ-POPの「リズム」に切り込みます。「なんとなくいい」から「ここがこうだからいい」と言える分析的な聴き方のいりぐちに!

クリストファー・スモール『ミュージッキングー音楽は〈行為〉である』野澤豊一+西島千尋訳、水声社、2011

音楽とはモノではなく人が行なう何ものか、すなわち活動(アクティビティ)なのだ。

クリストファー・スモール『ミュージッキング』より

「音楽」って自分が思っているよりも、これまで習ってきたよりも、大きな概念かもしれない。今まで「音楽」だと思っていたものは、ほんの一部分かもしれない。多少ショックがあっても恐れずに、まずは既成概念や思い込みの枠をはずすことが、これからの自分のキャパシティの大きさにつながることでしょう。音楽を固定的な「モノ」ではなく、「行為」ととらえることで、視界が広がっていきます。音楽の自由さ、音楽世界の広大さをとらえるいりぐちに!

ニコラス・クック『音楽とはーニコラス・クックが語る5つの視点』福中冬子訳、音楽之友社、2022

西洋音楽は、植民者によって、そして時には被植民者によって、他の諸音楽に比べてより科学的であり、ゆえに技法上・表現上よりパワフルであると考えられてきました。そうした理解の根底にあるのが、理性、つまり西洋文明のグローバルな覇権を正当化するために引用されてきたヨーロッパ啓蒙思想の中心的価値です。一見無害な、普遍的言語としての音楽という西洋思想さえ、こうした覇権体系の一部なのです。普遍的言語とされてきたのは、単なる音楽ではなく西洋音楽だからです。

ニコラス・クック『音楽とはーニコラス・クックが語る5つの視点』(福中冬子訳)まえがきより

「音楽は世界共通語」だと思いますか? 「音楽」で世界中の人の心が通じると思いますか? 人それぞれに親しんできた音楽がちがうように、世の中そう簡単にはいかないのです。いま、なぜあなたがその音楽に触れているかには、必ず歴史的・地理的・政治的背景があります。オリジナルの表現を生み出すことは、自分が現在どこに立っているか知ることから始まるのです。「いま、ここ」だからこその音楽を考えるためのいりぐちに!

次回は②「拡散する音楽」編をお届けします。



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