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プロダクトデザイナーが「walkey」の事業運営を担当する中で得た、圧倒的な学びとは。 quantum Product Designer:清水こなあ

“歩行100年時代”の実現を目指す歩行専用トレーニングサービスとして、2022年5月にローンチした「walkey」(ウォーキー)。大手医療機器メーカーである朝日インテック株式会社とquantumが共同で立ち上げたプロジェクトで、トレーニング機器だけでなく、東京・自由が丘のラボや専用アプリを活用した総合的なトレーニングサービスを提供しています。

 朝日インテックにとっても、quantumにとっても、新たな事業への挑戦となった同プロジェクトは、いかにして始まり、このかたちにいたったのか。quantumメンバーたちの連続インタビューを通じて、その全容を紹介しています。
 
第5回目に登場するのは、現在「walkey」の事業運営を担当するデザイナーの清水こなあです。


デザイナーが運営担当者になったワケ

――清水さんは本来、デザイナーとしてquantumに所属していますよね。「walkey」の事業とは、どのように関わっているのでしょう?
 
清水:quantumでの肩書としてはプロダクトやサービスのデザイナーで、今回「walkey」の開発段階では主にデバイスのデザインに関わりました。現在は「walkey」の運営会社に出向して、事業運営のあらゆることを担当しています。チームの人数が多いわけではないので、トレーナーさんたちのマネジメントだったり、自由が丘のラボの運営だったり、本当にいろいろやっています。
 
――なぜ清水さんが事業運営の担当に?
 
清水:僕はもともとカラダを動かすことが好きで、高校ではバスケットボールに熱中し、大学でもデザインの勉強をしながらバスケットボールのチームに所属していました。今もカラダを鍛えることは継続しています。長年、さまざまな運動系のサービスやデバイスをお金を払ってユーザーとして体験してきました。そのため、quantum社内で僕がおそらく一番、トレーニングのユーザーが何を求めているか、トレーナーさんがどういうことを考えているかわかる人間でした。
 
だから、「walkey」の開発段階では、トレーナーさんとquantumのデザインチームの間の通訳のような役割を担っていました。現場ではどういうことが求められるのか、トレーナーさんから聞いた話をquantumのメンバーに伝え、quantum側がプロトタイプを作ったら改善点をトレーナーさんにヒアリングする。そういう立場に自然となっていたんです。
 
――運営の現場と開発チームをつなぐ仕事を開発の過程でやっていたと。
 
清水:そうです。なので、開発段階からデバイスのデザインだけでなく、モニター試験用動画のディレクションやトレーニングのメソッド作成にも関わっていました。

オープンマインドなカルチャーを作るためには

――いわゆる専門領域以外の業務を任されることに抵抗はなかったのでしょうか?
 
清水:全然なかったですね。quantumはスタートアップなので、あらゆるリソースがそろっているわけではないですから、補える部分はみんなで補おうというカルチャーがそもそもあります。みんなオープンなマインドセットで、「自分の領域を守りたい」というより、「いいものを作るために何でもやる」という気持ちが強いんです。専門領域の外のことであっても臨機応変に対応しますし、自分もやります。
 
あと、これは「walkey」で痛感しましたが、事業化したいジャンルに精通している人がチームにいないと、本当に新しいものを作るのは難しいんです。開発側が「これは新しい!」と思っても、世の中にはすでにあった、なんていうケース、珍しくないですから。
 
そして、開発側が提供したいベネフィットを、本当にターゲットは求めているのか。その把握も大切です。実証実験をすればわかることではあるのですが、それ以前に社内にわかる人がいればコストを抑えられる。その人の専門領域とは関係なく、ユーザーに近い立場の人はチームメンバーに絶対加えておくべきだと思います。
 
――なぜquantumではオープンマインドなカルチャーが成立しているのでしょうか?
 
清水:自分がやっている仕事が、結果にどうつながっていくのか。そこが見えるかどうかは大きいと思います。僕は大学を出てからずっとquantumに所属しているのですが、お仕事などでご一緒する大企業の方のお話を聞いていると、自分が頑張っている仕事が最終的にどんなアウトプットにつながるのか、成果にどう影響するのかわからない、といった声を耳にします。そういう経験を重ねていくと、専門領域以外の仕事を振られても、「自分がやる意味あるの?」となってしまう気がします。
 
quantumでは、プロジェクトの初期にビジョン共有をしっかりやるんです。「何を目標にやるのか?」という認識のすり合わせは「walkey」でも延々とやりました。最初は漠然と「歩行支援のサービス」くらいから始めて、「歩行100年時代の実現」というビジョンにたどり着くまで2、3カ月は議論したと思います。出足は鈍くなるかもしれませんが、その工程があったほうが長期的に見た時には絶対に効率的なんです。

すべてが「人に喜ばれるものを作って届ける」ための勉強

――目指すべきゴールが見えているほうが、チームの一体感が生まれやすいということでしょうか?
 
清水:結局、ゴールが明確でないと、途中で脱線してしまう人が出てくると思うんですよ。最初は小さな認識のズレでも、プロジェクトが進むほどそのズレは大きくなっていく。どんどんクオリティを高めていく段階で、「そもそも何のための事業だっけ?」「これは私がやるべき仕事か?」となっていたら、すごく非効率的ですよね。
 
僕だって、まさかquantumに入ってトレーナーさんと一緒に仕事をするとは思わなかったし、彼らをマネジメントする立場になるなんて考えたこともありませんでした。でも、そういう仕事は全部、「歩行100年時代の実現」のための過程の一つだと理解しているから、まったく違和感なく受け入れています。

――デザインという自身の専門領域にも、今の経験は役立っていると感じますか?
 
清水:めちゃくちゃあります。基本的に僕がデザイナーとしてやってきた仕事って、開発フェーズまでなんです。もちろん、テスト段階でユーザーにヒアリングはしますけど、実際にお金を払ってくれるかまではなかなかわからない。「walkey」で運営の現場に立つようになり、それをすごく感じています。
 
「walkey」はローンチから1年が経ちましたが、まだ検証段階だと思っています。提供価格が適正かどうかも含め、開発フェーズだけではわからない、運営して始めてわかることがたくさんある。それにquantumはブランディングが強いけど、世の中に広めるPRにはまだまだ課題があるなとか、いろんな気付きがあります。
 
デザインって、プロダクトのカタチを作るだけじゃなく、サービス全体を設計することも含まれていると思うんですよ。「きれいなものを作る」っていう匠の技も大切ですけど、多くの人に使ってもらえないとデザインとしては意味がないと思っていて。僕自身、美しいカタチを作ることより、人に喜んでもらうことに快感を覚えるタイプなので、ものづくりだけでなく、その作ったものをどう伝えるかや、それをどうやって提供するかといった社会の仕組みも知りたいんです。
 
いろんなことをやっていて、何者なんだと言われることもありますが、僕にとっては全部、「人に喜んでもらえるものを作って届ける」ための勉強です。だから今、「walkey」でサービスを提供する方々や、それにお金を払うユーザーさんと直に接する経験をしているのは、デザイナーとしても貴重な機会だと感じていますね。

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 清水こなあ Product Designer
●しみず・こなあ 1995年生まれ、東京都出身。英国の大学でプロダクトデザインを専攻したのちquantumに参画。ベンチャーアーキテクトとして幅広い分野の新規事業に携わった後、デザインチームに異動。プロダクトデザイナーとしてモノづくりの領域での事業開発に取り組むだけでなく、ストラテジストとして事業企画、サービス開発、UI/UXの業務もリードする。仮説と検証を通してコンセプトをビジネス、デザインの視点で実現することに日々努めている。現在は2022年5月に設立された株式会社walkeyに出向中。プロダクト/サービスデザイン責任者として『walkey』の1→10の成長に携わる。

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