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Quant College レクチャーシリーズ(7)マーケットコンベンションのまとめ(マイナー通貨のスワップ編(1):CHF,NZD,CAD,ZAR,欧州/中東通貨)

1.はじめに

概要:
マイナー通貨のスワップについて、マーケットコンベンション(市場慣行)をわかりやすく体系的にまとめたもの。

マーケット部門に配属されて真っ先に学ぶのが、各種スワップから様々なイールドカーブを構築する方法である。しかし様々なマーケットコンベンションを理解していないとイールドカーブを正確に構築することはできない。また、実際のスワップのトレードでは細かいコンベンションを一つ一つ指定し、その通りにプライシングしないといけない。コンベンションによってイールドカーブ構築方法が変わり、結果として使用するインプットレートも変わってくるため、リスク管理部門などミドル部署でもコンベンションの理解が必要である。休日調整や利払スケジュールなどのコンベンションはバック部署でも必要な知識と言えるだろう。

ところがマーケットコンベンションに関する情報は、英語ならネットや書籍から断片的に得られるものの、日本語の情報はほぼ皆無に等しい
また、どのような場合にどのコンベンションを使うのかは、実務を経験した者でないとそもそも知り得ない情報である
そういうわけで、マーケット部門に配属された後にゼロからほぼ独学で、必要な知識をつまみ食いで学ぶことになる。内容としては難しいものではないものの、本業の合間に英語資料を見つつ、基礎知識を独学で身に付けていくのは効率が悪い。
さらに、最近ではRFR移行に伴い新たな商品が出てきており、最新の動向を自力で追って行くのは骨が折れる。

そこで当noteでは:
エマージング通貨などのマイナー通貨について、様々なスワップのコンベンションを整理する。

当noteの特徴:
・実務で必要な内容に絞って要約
・専門用語を平易な日本語で解説
・RFR移行に伴い新たに出てきた金利も含めて整理
・似た用語の違いやそれらの関連について解説
・数式をできる限り用いず直感的に説明
・文献ではあまり説明されない前提知識も含め、理解しやすい順番で解説

当noteの著者について:
・クオンツとして新卒入社後、デリバティブ評価関連の実務に長年従事
・LIBOR廃止による評価モデルへの影響調査、イールドカーブ構築のロジック開発、ライブラリ改修の実務を経験
・自身の運営するサイトQuantCollegeでは、金融工学・デリバティブに関する記事を600本以上執筆
・noteは累計500部以上を売り上げ済み

当noteは以下のような方向け:
・マイナー通貨のスワップのコンベンションを学びたい金融機関勤務の方
・RFR関連の新しいマーケットレートについて知りたい方
・英語を読むのはしんどいので、日本語で効率的に学びたい方
・ネット等での断片的な理解ではなく、一つにまとめて整理したい方
・必要な資料を集めて読んで体系的にまとめる、という時間を節約したい方

当noteで前提とする知識:
・金利スワップの初歩的な知識
・スワップコンベンションの一般的な基礎知識(当noteの姉妹編(メジャー通貨のスワップ編)を参照)

当noteを読んで得られるメリット:
・マイナー通貨のスワップのコンベンションが詳しくわかる
・マイナー通貨のイールドカーブ構築方法について概略をイメージできる
・ネット上の英語資料を調べ回る必要がなくなり、時間を節約できる
・頭の中に「地図」ができ、社内やネットの情報を効率的に吸収できる

当noteに書いていない内容:
・スワップコンベンションの一般的な基礎知識(当noteの姉妹編(メジャー通貨のスワップ編)を参照)
また、以下のような理論的な内容などは書いていない。
・イールドカーブ構築に用いる計算式
・スワップのプライシングに用いる計算式

当noteに関する注意点:
・マーケットコンベンションは市場環境の変化に応じて変わることもあるため、当noteに記載のコンベンションが常に唯一の答えであるとは限らない。
・noteに記載のイールドカーブ構築方法の概略は説明の都合上、実務をかなり大胆に単純化しているほか、イールドカーブ構築方法は会社や拠点によっても異なるため、あくまで一つの例に過ぎない。

ディスクレーマー:
当noteに掲載されている記事の内容につきましては、正しい情報を提供することに最大限努めてはおりますが、情報の完全性については保証せず、また責任を負いません。
当noteは初心者が理解しやすいことを優先した記述となっていますため、厳密には完全に正確とは言い切れない記述も含まれる可能性がある点につきましては、ご理解・ご容赦のほどお願い致します。
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当noteに記載の内容や意見につきましては、当note運営者の個人的見解であり、当note運営者の雇用主の公式見解ではありません。
当noteの内容を著者の許可なく複製、転載、共有、配布、転用、譲渡、販売すること、およびそれらに準ずる行為を固く禁じます。上記の禁止事項が発覚した場合は、然るべき対応をとらせて頂きます。

1.1 当noteの構成

当noteの構成は以下の通り。

2章では当noteで取り上げる通貨をグループに分けて、全体感を確認する。

3章以降が通貨ごとのコンベンションのチートシートである。各種マーケットレートのコンベンションを詳しく見ていく。
3章~5章でCHF, NZD, CAD、
6章でアフリカ通貨(ZAR)、
7章~9章で北欧通貨(SEK, NOK, DKK)、
10章~13章でロシア・東欧通貨(RUB, CZK, HUF, PLN)、
14章~18章で中東通貨(TRY, SAR, AED, QAR, ILS)、
について説明する。

19章で当noteをまとめる。

2.全体像の概観

当noteで解説する通貨を分類すると、CSA通貨とその他に分かれる。

CSA通貨:CHF, NZD, CAD
・担保通貨として採用され得る
・OISのクォートが取得できる
・変動 vs 変動の通貨(ベーシス)スワップのクォートが取得できる
・通貨ベーシスはMtM条項付きの前提でのクォート

これらは別noteで解説したUSD, EUR, GBP, JPY, AUDなどと同様、主要通貨に入れてもいいくらいメジャーな通貨と見ることもできる。

以下ではその他の通貨について見ていく。
まず、地域別に分けると以下の通り。

アフリカ:ZAR
北欧:SEK, NOK, DKK
東欧:RUB, CZK, HUF, PLN
中東:TRY, SAR, AED, QAR, ILS

アジア:(別noteで解説)
南米:(別noteで解説)

スワップマーケットの特徴も大体、地域別で異なるのだが、似たもの同士をまとめると次の通り。

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