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バエる・エモいを絵として具体的にwebtoonに落とし込む

Minto STUDIO シニアアートディレクターのみやながです。

もう完全に定着した感のある「バエる」「エモい」という言葉。 この言葉も、そしてその表現手法自体も、僕なんかより若い世代の方々の方が圧倒的に使いこなしていること間違いないでしょうが、 絵・写真・映像を扱う人間として、どうすれば具体的に「バエる」「エモい」画面が作れるのか、表現できるのか? 特にwebtoonにおいてのコツとは?そこについて多少、私見を語らせて頂こうと思います。
蛇足ながら、”映える” と書くと「はえる」になってしまうだろうと思い、あえてカタカナ混じりで「バエる」と書いております。

5分で読めますのでお気軽に!

全て私見=何らかの実験やデータに基づいた論理や公式ではない ことを最初にお断りしておきます。 (私見でも言い切るのが僕のスタイルなので、併せてご容赦ください)

昨今の写真、映像などのコンテンツにとって、「バエる」「エモい」は避けて通れない表現の方向性になっています。 もちろん、webtoonにとっても。 いや、webtoonこそ、「バエる」「エモい」を積極活用した、最も低コスト(?)な映像コンテンツでしょう。 ※Minto STUDIO では、webtoonを映像と捉えて企画・製作しています。

結論から言っちゃいますが、 「バエる」=高コントラスト、高彩度、多色感、光彩・HDR感。「エモい」=バエるをベースに、適宜フェード。それぞれこんな具合かなあと。

異論は多々あると思いますし、全て受け入れます。むしろ教えてください。 ただ、僕が語るとしたら上記のようになります。
めっちゃ端折ってますし、実際やってみると細かな調整をアレコレやりますが、絵や写真をやっている方にとっては、言わんとしていることは概ね伝わるんじゃないかと思います。
※伝わってなかったらゴメンなさい。

一番わかりやすいのは写真です。
例えばこんな写真。

上の写真は普通ですが、バエる&エモいを入れると下みたいな感じに。 普通の状態も悪くはないけれど、ポイントを押さえて強調してやることで、グッと印象に残る絵になる。 この表現(誇張)はある意味ウソなんですが、「あ、綺麗!」と感じるその感覚はウソではない。 写真は記録媒体として非常に優れていますが、印象を伝える手段としても最高のもののひとつです。 記憶や印象の彼方にあるイメージをいかに増幅して伝えるか。ここにフォーカスした場合、このウソは事実よりも限りなくリアルに感じられ、素敵な表現手法となります。

絵の世界では、視線誘導・ポイントの強調・誇張は、テーマをより強く伝えるために昔から行われてきています。全部がHDRみたいなもんです。良くも悪くも【絵=ウソ】であり、本当にリアルなことを追求するよりも、「リアルと感じられる」ことの追求が重要なのです。そしてこれは、日常の中で非日常を感じる瞬間でもあるのです。多分ね。

また、デジタル画像は、透過原稿です。なにしろ原稿それ自体が発光しているのですから、これ以上の透過原稿はないでしょう。これは、先述した「バエる」の条件を反射原稿(=紙、印刷)よりも圧倒的に体験しやすいことにつながります。加えて、2010年以降、画像の高精細なデジタル化が進んだお陰で、その生成と保管・閲覧が手軽になり、SNSの浸透にも大きく後押しされて、爆発的な拡がりを見せています。

こうした背景が、「バエる」「エモい」、つまりウソっぽいほど綺麗な画像に日常的に触れる機会を一般化しました。自然な表現や絵作りを否定するつもりは毛頭ありません。むしろ個人的にはその方が好きですし。しかし、誰が見てもパッと一目で「おっ、鮮やか!綺麗!」と感じる可能性が高いのは...言わずもがな、かなと。

色々言ってますが、これ、アニメや映画のVFXではもうずっと使われていて、素材と工程のデジタル化により、一層高品質に、高精細 に、低コストで仕上がるようになってきています。
この流れは今後も続き、さらに加速するでしょう。

そんな「バエる」「エモい」。アニメや映画の【綺麗さ・華やかさ】表現の常套手段なら、webtoonへの親和性が良くないワケがない。webtoonは映像(弊社見解)ですし、ネイティブな透過原稿ですから。

一例ですが、

 1.逆光シーンでの全体の高コントラスト・高彩度の画面作り
 2.光源の華やかさを誇張した鮮やかな描写
 3.夜景などの暗いシーンでの豊かな色彩感
 4.鮮やかさの中にある “くすみ” の誇張
 5.エフェクトの輝くような高輝度・光彩感

こんなことをやるだけで、それはもう、反射原稿では到達不能な表現と感じ方ができちゃう。これは…やらない手はありません。
実際に色々やってみた Before/After の一例を置きます。上がBefore、下がAfterです(Beforeには微妙にブラッシュアップ指示が雑に書き込まれていますがご容赦を)。

元の絵(Before)も充分キレイで素敵です。何も悪いところはありません。単行本だったらこのままGoして良いと思います。しかし、どうにも反射原稿っぽい。原稿自体が発光していることを利用しきれていないと言うか…まるで紙に印刷して観ることを前提にしているような落ち着かせ方を感じるんです。

対して修正指示(After)では、エフェクトの追加や背景の落とし、全体のコントラスト調整で、ちょっと目が痛いくらいの派手さと迫力を演出しています。コントラスト、特にハイライトとシャドウの落差は、透過原稿であることを思い切って利用しています。ハッキリ言って絵のウソ全開ですが、それで良いのです。真にリアルであることより、リアルに感じられること、まるで風や温度を感じるような迫力・臨場感を伝えられることが重要です。
まあこれは、どちらが正しいという話ではありません。

演出意図をしっかり絞って、見せたいところを強調して魅せる。それを徹底してやってみるといいよ、映像的技法も使って。的なことです。

「バエる」=高コントラスト、高彩度、多色感、光彩・HDR感。
「エモい」=バエるをベースに、適宜フェード。


Minto STUDIOでは、自社製作のwebtoonに、超積極的に使用していきます。そしてドンドン使いこなしていきたいですね(自分自身に言いきかせてます)。

ではこれにて!20年後くらいには、恐らく「自然な表現」の方が「バエる」「エモい」と言われるんじゃあないかと予測するおじさんでした。 


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