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“STAY HOME”が思い出させてくれた、半田舎の通学路の話

下は、この記事が入っているパブリケーション、「F0SCのこっち側」の前回の記事です。私はこの記事が好きで、これに触発されて、大切にしていることを書いてみたいな、と思いこの記事になりました。

普段、私は誰相手であれプライベートなことはあまりしゃべらないようにしています。
小さなできごとを単体で話したり、好きなものを断片的に話しても、考える経緯や、考え方を辿れるだけの道順はできるだけうやむやにしておきたいのです。

きっと、心の距離が他人と近くなるのが、苦手なのだと思ってます。いつだって手の内は明かさないでおきたいし、人(親でさえ!)に話すときは時期や場所をごまかしたりさえします。

でも、今回は、ちょっとだけ書いてみることにしました。先日散歩したときの回想です。

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昔、こんな記事を書きました。手前味噌ですが、時々読み返しては、今日を反省しています。

確かに今までとはまったく異種の、未知の空間ではあったが、それは次第に自分に取り込まれて、あたりまえになっていく。それはそれで正しいし、そうでなくては新しい場所で生活することにはならない。ただその場所に赴くだけでは、それは旅であり、自分の場所としては認識されない。自分の場所とは、場所と自分が溶け込んで、あたりまえになってこそ生まれる一体感なのだ。

そして、それを糧にして生きるとき、その原動力が、場所のちからです。
これを書いたときは大事な場所をすっかり忘れていました。自分が育った場所のことです。小中学生、9年間通い続けたはずの、あの道のことです。

私は今は、また違う場所にいるのですが(ここがちゃんと自分の場所になるかはまた別の機会に)、こんな世情ですから、やはり家に閉じこもる羽目になります。

しかし散歩くらいはしないと体が危ないので、必然的に、家の周りをくるくるすることになります。不審者顔負けにぐるぐるです。
普段、通学路と反対方向に駅があるので、めっきりいかなくなってしまったのですが、たまには、と思い歩いてみることにしました。

家を出ると、畑の耕地面積が、昔より小さくなってる気がしました。ちょっと道を外れたところでは、大きな畑の一部を売りに出したみたいで、家と道が作られる真っ最中でした。田舎にも、開発の需要はあるんですね。
近くの幼稚園(自分は通ってない)も跡形もなくなっていることを知りました。
育った場所の自然や環境は好きだから、なんだか寂しいです。
それでも、やっぱり森は暗くて、幼い頃と変わらず怖かったです。ここはずっと、変わらないんだろうな。
どうして、こんなに晴れてるのに、森はこんなにも暗いのでしょう。古い石の階段が、昔秘密基地だって登ってたのが信じられないくらい、無機質で、人を拒んでいるように感じました。幼心の君やフッフールにはもう会えないところまで、私はきてしまったのでしょうか。
そして、ずっと一本のまっすぐな道だと思っていたところが、くねくねしていて、記憶と違ったのです。工事されたのかと疑いましたが、たしかにその一瞬一瞬を切り取ると、あのころと何も変わってないのです。当時は道のことなんか少しも見てなかったのでしょう。
きっとこれが、場所が自分の中で自分の場所として糧になる感覚なのです。

実は、「場所のちから」の記事を書く1年ほど前(つまり2016年)、友達と、この通学路を歩きました。私も友達も、歩くのが大好きです。なんだか、街を歩いていると、いろいろなことに歩く速度で触れられて、心が豊かになる気がするんです。いろんな街を歩いて、いろんな表情を見ました。

この日、通学路だった理由は、お互い、お互いが育った場所のことを知りたかったからです。場所のちからや、沈黙の共有は、きっとその友達が教えてくれたことです。

友達の街は、私の街と似ていました。同じ県で、都心までの時間、電車や高速道路の状況や川もよく似ていて、「半田舎」なところまでそっくりでした。

その友達を通して語られる世界は、いつだって素敵に見えたのです。私は散歩しながら、その時のことを深く味わっていました。私のものの捉え方や行動は、友達の影響を強く受けています。

ちょうどこのときは、何かネガティブな発言をするときは、物や事だけにフォーカスし、決して人を責めたり批判してはならないという話をしていました。このことを話すのは初めてではなかったですが、たわいない話、くだらない話をしている中で、時折できるこういう真剣な重みの言葉が、私はたまらなく、あの時間が好きでした。

通り過ぎた時間は共有できないけれど、場所は過去を記憶します。そして、場所を共有することで、私達は時間をも共有できるのです。

時間とゆとりがある今、自分の昔いた場所や、今いる場所に、今一度じっくりと目を向けてみませんか。

おわり

サムネイル: ハナニラの写真です。とても白いのですが、儚げでない、しっかりとした姿は、勇気をくれます。

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