見出し画像

#26 JAPAN X BOWL 2020展望

今年の国内社会人アメフトシーズンを締めくくる第34回ジャパンエックスボウルが3日後に東京ドームで行われる。
富士通フロンティアーズが勝てば5連覇を達成する。それまでの連続優勝記録はオービックの4連覇なので(2010~2013年)、オービックとしては目の前で記録を破らせないとの意地を見せたい。
そこで、レギュラーシーズンのデータをもとにこの大一番を占ってみたい。
いきなりの言い訳だが、昨年のレギュレーションであればレギュラーシーズンで必ず1回対戦することになっていたし、準決勝を含めて8試合のデータが揃うのだが、今年の特別なレギュレーションにより富士通とオービックはまだ今年対戦がない。また、こなした試合数も富士通3にオービック2と極めて少ない。あくまでもデータで見ればこうなる、といった程度だが、事前の一興としてみたい。

1 オフェンス

富士通のオフェンスは今年大きく変わった。1試合平均の攻撃獲得ヤードは367.3ydsで、そのうちランは93.7yds(25.5%)にとどまった。ラン1プレー平均の獲得ヤードは3.9ydsで、オービックのそれと比べて1.0yd短い。対策が進んだのか、RBグラント(#29)はチーム一のランプレー32回を試みるも127ydsに抑えられ、TDも3試合で1本のみ。ニクソン(#2)は2018年大活躍したがディフェンスとの兼任で出場したこともありラン8回のみ。
一方パスではQBバードソン(#3)が44本を通し704ydsを獲得、3試合通算で複数回パスを受けたレシーバーは9人にのぼり、広くパスを分散させている。中でも2年目のWR松井(#85)はチームトップの166yds、3TDを記録しており、これまでのエースレシーバー中村(#81)、宜本(#9)と並び立つ存在になっている。

かたやオービックのトータルヤードは平均369.5yds、攻撃回数が47.5回でワンプレーの平均は7.8ydsで富士通の6.9ydsより約1yd長い。また、ランプレーの割合が33.3%と富士通より高いことを考えると、効率的な攻撃ができているといえる。
ランプレーの核はRB李(#29)。全50回のランのうち22回ボールを託され、175yds、2TDをマークしている。前年までのQBは自らキープして走るプレーが多く脚力を発揮できないことがあったが、今季はしっかりと走る場面が用意されている。また、同じくここ2年ほど機会が少なかったRB望月(#43)は持ち味のショートヤーデージが欲しい場面でのパワーラッシュで11回39ydsを記録し、使い分けができる状態に戻ってきた。
パスプレーではQBロックレイ(#11)が両チームのQB中で最高となるパスレーティング125.8をマーク。レシーバーではWR西村(#84)が8回203yds、5TDとエースに成長した。このほかWR前田(#9)、TEハフ(#85)が多くパスターゲットとなっている。ただ、これまでチームを支えていたWR木下(#18)は数字が伸びず、パスドロップなど精彩を欠いていたため、復調が待たれる。

2 ディフェンス

富士通ディフェンスの特徴は層の厚さにある。3試合で0.5タックル以上を記録した選手は34人。オービックでは27人なので、試合数の差はあるものの多様なディフェンスを繰り広げていることがわかる。またロスタックルを記録した選手は13人、合計17回73ydsと力強い守備を見せている。DB海島(#17)とLB竹内(#35)の2人が合計10タックル以上を記録しているほか、5選手が1回ずつINTを決めている。また、9回のQBサックを決めており、DL陣がライン戦をしっかり制していることからも、なかなか穴が見つけづらい守備だといえる。
これまで相手WRのマークで活躍していたDBアディヤミ(#40)が3試合5タックルにとどまっておりやや数字が物足りないが、これまで大一番でビッグプレーを見せてきただけに侮れない。

オービックの守備で特筆すべきはLB高橋(#47)。富士通から移籍して2試合で15.0タックルを記録、特にブロック第3節のパナソニック戦では1試合で9.5タックルと獅子奮迅の活躍。ここ数年DLとDBが目立っていたディフェンス陣で、中盤をコントロールできるLBとなったのは大きい。またRBからコンバートしたLB成瀬(#44)も2試合で5.0タックル、パナソニック戦で勝負を決めるファンブルリカバーを記録して勝利に大きく貢献した。LBの充実と引き換えにDB陣の数字がやや落ち着いたものになったのか、パスディフェンスの数字は富士通に比べて分が悪いのが気になるところ。富士通は1試合平均のパスの収支(攻撃獲得ヤード-守備喪失ヤード)が98.4ydsだが、オービックはわずか13.0ydsにとどまり、空中戦を挑まれると厳しい展開になる。ランの収支は富士通56.7yds、オービック50.5ydsと肩を並べる数字であるため、DL陣がどこまでライン戦で相手QBに迫れるかが鍵になりそうだ。

3 その他

キッキングでは両チームに日本代表経験者(富士通#11西村、オービック#12山﨑)がおり、精度に加えロングキックの応酬も期待できる。リターンチームでは今季富士通のWR高津佐(#13)がキックオフリターンで99ydsTDを決めたほか、オービックではWR木下(#18)がパントリターンで51yds、WR西村(#84)はキックオフリターンで77ydsを記録しており、スペシャリティを持つリターナーが一発でモメンタムを引き寄せるプレーを披露できる力があるだけに、カバーチームは細心の注意を必要とするだろう。

チーム全体の数値として目を引くのがペナルティだ。これまでオービックは反則が多く肝心な場面で罰退を受けている印象が強かったが、今季の1試合平均では富士通が7.3回(罰退59.7yds)、オービックが2.0回(同13.5yds)と大きく異なっている。ペナルティで相手チームが1stダウンを更新した回数は富士通1.7回、オービック1.0回。大事な局面でイエローシグナルが飛び交う展開になるとオービック有利かも。

各Qごとの得失点を1試合平均で計算すると次のようになる(各Qで得点/失点)。
富士通
 1Q 18.7/0.0
 2Q 4.3/6.7
 3Q 8.0/0.0
 4Q 10.0/2.3
 合計 41.0/9.0
オービック
 1Q 16.0/3.5
 2Q 17.5/5.0
 3Q 3.5/7.0
 4Q 10.5/1.5
 合計 47.5/17.0
攻撃では前半重視の試合運びとなっているのは両チームに共通している。Qごとの得失点では、富士通が2Q、オービックが3Qでそれぞれマイナスになっている。オービック有利の展開に持ち込むなら、1Qでリードを奪い2Qでダメ押し、そのリードで後半をしのぎたい。一方富士通は、前半でリードできれば言うことなし、イーブンであれば後半に豊富な選手を入れ替えながら相手のスタミナを奪い逆転のシナリオを実現させたいところか。

リーグの開催自体が危ぶまれる中でボウルゲームまでたどり着いたことに感謝して、15日の試合を堪能したい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?