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レビューとレポート「家船特集」  資料に見る「家船」の進捗状況 ~家船LINE編~

構成=平間貴大

作品「家船」は様々な作家・協力者によって共同制作されている。参加人数が多く、作品構造もかなり複雑な為、一言でどのような作品かを説明するのは難しい。このテキストでは「家船」がどのように制作されているのか時系列順に見ていきたい。

先月配信した【レビューとレポート「家船特集」資料に見る家船の進捗状況~船大工編~(https://note.com/qqwertyupoiu/n/n67ad85bdc3c2)】では、「家船」の主に外観の船体部分を集団制作した作家たちが、どのように制作に携わっていたのかを、「船大工グループ」のLINE履歴を参照することで遡ってみた。設計から機材の調達、材料の運搬、加工など試行錯誤を経て完成へたどり着いた様子が読み取れたと思う。LINEグループは全員が含まれる「家船」と、集団作業が必要な仕事ごとに「船大工」「リサーチ組」「助っ人」と分かれており、今回はこの作品に携わっている作家のほぼ全員が参加するLINEグループ「家船」を見ていこう。

このグループは2019年1月25日に開始された。メンバーはKOURYOU柳本悠花小宮麻吏奈福士千裕坂本夏子伊藤允彦シゲル・マツモト井戸博章荒木佑介弓塲勇作高橋永二郎村上直帆山本和幸湯浅万貴子三毛あんり平間貴大柳生忠平である。上記のメンバーは女木島「家船」に関わったメンバーであり、その後の加入者もいる。

LINEグループ開始前の主な動きについては、KOURYOUのスケジュール手帳を参考に構成する。

2018年12月22日~27日

KOURYOUは女木島だけでなく、瀬戸芸の会場となっている島々と高松市内を巡る。24日に小豆島で柳生忠平と出会い親切にしてもらう。後に彼が小豆島の妖怪美術館館長である事を知る。

2019年1月17日

「家船」の企画書が完成。参加作家の各々が「家船」のシナリオに関わりがあるが時間軸の異なるものを担当し、その集合体をKOURYOUが一つの「家船」という形に設計するというもの。詳しくは、KOURYOU「家船」制作インタビュー(https://note.com/qqwertyupoiu/n/ne74b2493197f)を参照してほしい。

坂本夏子、福士千裕、小宮麻吏奈、柳本悠花、荒木佑介、高橋永二郎、井戸博章に企画書を渡し参加を打診。


1月22日~23日

女木島、男木島に再訪。瀬戸芸事務局(以下事務局)担当者と数度目の打ち合わせをし、会場として使用する女木島の古民家が正式に確定。
23日の夜にゲンロンカフェでイベントがあり、イベント参加予定の柳本悠花、荒木佑介、藤城嘘と会合。荒木の紹介でイベントに来ていた弓塲勇作、伊藤允彦の参加が決定。


1月25日 

福士、坂本、小宮、柳本、KOURYOUが新宿で打ち合わせ。

LINEグループ「家船」開始
(参加者=荒木、伊藤、井戸、柳本、小宮、福士、弓塲)

KOURYOUはアルバムに作品に関係する参考画像と文献のPDFを共有した。内容は会場古民家の写真33枚、古代船の画像225枚、住吉神社の写真63枚、女木島の写真90枚、紫雲丸の画像106枚、女木島周辺の地図23枚、男木島周辺の地図52枚、讃岐彫の写真8枚、衣服と装飾品の画像22枚、テーマパークの画像13枚、瀬戸内の島々の風景写真87枚、料理の写真10枚、文献テキスト105枚である。必ず全てに目を通してほしい訳ではなく、興味があるものがあれば見てほしいと言葉を添えた。

加えて伊藤がハザードマップ等、収集した島の地図を共有。

事前の打ち合わせでKOURYOUが伝え忘れた事として「作品や作品の配置方法などは、必然性があれば、私の作る設計に介入したり壊したりするものでかまわない。」と付け加えた。
 

1月26日

高橋、KOURYOUが渋谷で打ち合わせ。

KOURYOUは、前日の打ち合わせで柳本が持ってきたヤシの木の作品を「家船」に貸出できないかと打診。柳本は承諾して女木島に送る荷物の中に入れて送るとコメント。

さらに柳本は、自身の引っ越しで廃棄する大人用の布団が一組あり、実家には子ども用の布団もあるかもしれないので「家船」に使えないかと提案。KOURYOUは新しい布団を買おうとしていたが、古い布団の方がエイジング作業を省けるので使いたいと返答。しかし破棄する布団はそれほど汚れておらずサイズが大きかった。柳本の実家から、すぐに子ども用布団の確認ができない旨の連絡を受ける。そのため会場の寸法にあった布団を制作しエイジングを施すかボロ布を買って作る方法にしようという結論になる。エイジングに関しては、会場にある本物の埃を使う方法があると井戸がアドバイスした。

打ち合わせの際に小宮が作成してきた書類をKOURYOUが全員に共有。小宮は古代中国で東の海上にあると言われた想像上の神山、蓬莱に生育していた植物であるという橘の木を植える予定だ。KOURYOUは「家船」に土を使用した墓を作る予定なので、橘を植える際にその土が使えるのではないかと提案。小宮は船が海に浮かんでいる様を島としてイメージしており、「家船」は漂着しているので植物の種が溢れていることもありえるとコメント。

柳本は植物搬入の際、設営時の気温が低いので枯れるのではないかと心配していた。園芸に詳しい柳本の母からも、4月の女木島は寒い上に会期中の水やりが必要なので枯らさず育てるのは難しいと連絡がある。KOURYOUは植物に関するレクチャーを柳本の母から受けたいと伝える。

荒木は防寒対策として前回の設営では宿舎の石油ストーブを使っていたとコメント。しかしそれは事務局の貸出品で無い事が判明。設営時にストーブを購入する必要がでてきた。

KOURYOUは荒木に、横に長い漁師の神棚の形態が気になるので、詳細を調べてほしいと依頼。


1月27日

荒木は前回の女木島展示の記録画像をKOURYOUに送った。KOURYOUはその画像を全員に共有したが、手順が2度手間になる。これ以降、共有するデータは各自アルバムに保存し共有することになった。早速荒木が神棚の資料と地図データをアルバムに追加共有。
  
柳生忠平が参加。

参加作家のプランやスケジュールを管理するために、KOURYOUが各々のLINEノートを作成。LINEでは会話が進むと過去の発言が流れてしまうため、大事な事はノートに記入し保存する決まりとなる。

シゲル・マツモトが参加。

シゲルの提案で、「船大工」「リサーチ組」「助っ人」という3つのサブグループを作成する事となる。連絡が錯綜するのを防ぐためだ。「家船」グループで全員が大事な情報を共有し、各サブグループで細かいやり取りをする決まりになった。

KOURYOUは井戸に、屋外に設置する作品の耐水性について、コーティングすれば紙粘土等で作ったものでも置いておけるのかと質問。井戸は、コーティングすればある程度持つが、強度重視にするならFRPが好ましい。しかしFRPは専用工具が無いと綺麗に仕上げるのが難しく、大型のものは高額になると返答。


1月28日

シゲル、KOURYOUが六本木で打ち合わせ。シゲルが山本和幸を紹介し、山本の参加が決定。

小宮、KOURYOUが個別打ち合わせ。


1月29日

シゲルが予算管理を担当する事になる。各作家は経費をシゲルに計上する。

柳本は素材に使用する毛氈(もうせん)についてKOURYOUに相談した。柳本は制作にフェルトを使う事が多いが、今回は新羅を通じて日本にもたらされたという毛氈を使用すると打ち合わせで話していた。
100%ウールは色落ち加工が出来るが最寄り店に在庫が無く、単位もロールで買う必要があるのに対し、ウール60%なら小さいサイズをネットで購入できるとの事。KOURYOUは60%ウールにしようとコメント。柳本は幾つか購入して染色、色落ちなどの実験をすると伝えた。


1月30日

坂本、KOURYOUが個別打ち合わせ。

KOURYOUは井戸と高橋に、坂本が銅板を使用した作品を検討中だが、加工の方法を知っているかと質問。井戸は、切断は通常シャーリングマシンで行うが、薄い銅板なら金属用のハサミで切れる可能性もあると返答。

シゲルが予算についてのガイドラインを作成し共有。
 

1月31日

KOURYOUは住吉神社について詳しく調べるため、全国の住吉神社の総本社である大阪の住吉大社に向かう。観光家の陸奥賢に案内を受ける。

荒木がアルバム「大堂家遺留品」を追加。遺留品の中から使えそうなものをKOURYOUに渡す約束をする。さらにアルバム「海外移住資料館」を追加。

坂本夏子が参加。

KOURYOUがアルバム「大阪の住吉大社など」を追加。リサーチした住吉大社の写真や、陸奥賢に教わった事のメモ書きを共有。


2月1日

荒木、伊藤、KOURYOUがリサーチ内容について打ち合わせ。


2月2日

KOURYOUがアルバム「イメージ画20190202」を追加。瀬戸芸のガイドブックに完成予想図を掲載しなくてはならず、そのために描いたイラストである。

KOURYOU、高橋、坂本が北千住で打ち合わせ。
坂本の作品に使用する銅版加工を高橋が請け負う事となる。

KOURYOUがアルバム「船作り案ラフ」を追加。船首部分の制作工程についてのアイデアがまとまっている。

大堂家遺留品は2月7日に荒木がKOURYOUに手渡しをすることに決まった。この日に神棚についての打ち合わせも行う約束をした。


2月3日

井戸、KOURYOUが個別打ち合わせ。
 

2月5日

シゲルが参加作家の現地入り日程を把握するため、作成したGoogleドキュメントに各自入力するよう求めた。

KOURYOUは秋山にアポをとり、外観の建築方法についてアドバイスを受けた後、三毛と打ち合わせ。
三毛あんり、湯浅万貴子の参加が決定。


2月6日

事務局から作業開始は最短で2月18日からとの連絡を受けた。そのため、当初の予定を変更し、2月20日から3月5日に現地での滞在制作の第1回目を行うことに決定。


2月7日

荒木、伊藤、KOURYOUがリサーチ内容について打ち合わせ。
翌日から6日間、荒木と伊藤は本島、佐柳島、志々島、栗島へリサーチに向かう。


2月8日

2月17日に柳生忠平が東京に来るので、そのタイミングで集合し、リサーチ組の調査報告会を品川で開くことが決まった。荒木は主に両墓制と神棚について調査中であり、伊藤は地質についてのマップをまとめているという。柳生は小豆島で現地の漁師に聞き込み調査を行っている。


2月10日

福士、KOURYOUが個別打ち合わせ。


2月11日

弓塲、シゲル、井戸の紹介で、美術セットの仕事をしていた村上直帆の参加が決定。

村上直帆が参加。


2月12日

KOURYOUは女木島のコミュニティーセンター長と現地で話した時に、その方が風景画を多数描いている事を聞いており作品を見せてもらっていた。その絵の貸出ができそうだと事務局から連絡を受ける。

その後、事務局から宿舎の使用方法と注意について詳細をまとめたPDFがKOURYOUに送られてきた。KOURYOUは全員にPDFを共有し「皆大人なので大丈夫だろうと思うが、念のため、島民の方への迷惑行為や失礼な事はしないように」と伝えた。

荒木がアルバム「会場の屋根、屋根裏の天井」を追加した。リサーチ中に女木島に寄った荒木が追加で古民家の詳細情報を伝えるための写真だ。


2月13日

KOURYOUがアルバム「設定資料集」を追加した。
「家船」について、思考している抽象的な図像や、断片的なドローイングをまとめたものだ。各自の作品制作で参考になればとコメント。


2月14日

荒木がアルバム「地図」を追加した。
家船で生活していた人々がどこに寄留し、移住したのかを記した画像をまとめたものだ。昭和45年発行の資料では女木島も移住先になっている。『船に住む漁民たち』(岩波書店、1995年)によれば、昭和36年あたりまで現役の家船が確認できる。


2月15日

伊藤、KOURYOUが個別打ち合わせ。


2月17日

品川でリサーチ組の報告会が行われる。参加可能な作家は参加し、来られない作家には後日報告をまとめた資料を共有するとKOURYOUが約束。


2月18日

KOURYOUがアルバム「リサーチ報告会」を作成した。17日に行われた報告会の資料画像や、要点をまとめた文章が共有される。


2月19日

事務局が参加作家全員の女木島滞在スケジュールの提出を要求。

シゲル、KOURYOUが予算の状況やスケジュールについて打ち合わせ。


2月20日

第1回目の滞在制作開始。
この日から3月5日までの現地制作では、主に「家船」の外観部分や内部の基礎構造を制作予定だ。参加作家はKOURYOU、弓塲、高橋、村上。それ以外の作家は各自自身の作品を制作中である。


2月22日

KOURYOUが、高橋の制作した鉄骨の門の設置状況と画像を共有。


2月25日

伊藤がアルバム「地すべり分布図」「土砂災害警戒区域」を共有。


2月27日

山本が自身の作品完成日と配送手段についてKOURYOUに質問。運送を依頼している知人業者の都合によるが、4月6日完成を目指してほしいと返答。


2月28日

柳本が2月の経費をシゲルに計上。

2月21日から「家船」会場近隣の木造家屋の解体が始まっており、その廃材を船体制作に使用しているが、2~3日後に家財道具を保管している倉庫部分の解体作業が始まると連絡を受ける。
KOURYOUは倉庫内の状況とタンスや電球、鏡などの写真を共有。必要な家財道具があれば早めに連絡が欲しいと伝えた。

シゲルは宝の山だと返答。荒木は神棚と古新聞の保管を要求した。KOURYOUは柳本に、ガラス戸の棚があるので、エイジング不可の過去作はこのタンスに入れてガラス越しに見せれば加工せずに済むのではないかと提案。柳本はこの提案を受け入れた。


3月3日

KOURYOUが村上と弓塲の制作した船体部分の骨格の画像を共有。参加作家から「すご.....」「やば...」「すごい!!」「おお...!」と感嘆の声があがる。

解体業者のご厚意で、4月の滞在制作期間には他の現場で出る廃材を運び入れてくれる約束となった。追加で必要な材として、村上は垂木を要求。


3月4日

第1回の滞在制作期間は、男木島の宿舎から女木島に通う生活である。荒木が、宿舎はこれからも男木島なのかと質問。弓塲は、4月は女木島に宿泊できると返答。荒木は喜びを露わにし、弓塲はそれに共鳴した。


3月5日

第1回滞在制作が終了。

KOURYOUは、この時点ですぐに作品設置が出来るほど基礎が出来上がっていないと報告。第2回目の滞在制作期間に自身の作品設置だけでなく「家船」全体の制作協力ができる参加者を募った。


3月7日

KOURYOUが2月分の経費を計上した。


3月8日

平間貴大、三毛あんり、湯浅万貴子が参加。

KOURYOUは新しく参加する3名を紹介した後、荒木と共に考案した神棚作品について詳細をノートに追加。祀られる神様の作品制作を複数の作家に依頼。

各神様について詳しく知りたい場合は荒木に聞いてほしいとアドバイスした。荒木は、自身の解説文章をノートに記入しているが、これはあくまで制作の補助として使ってほしい文章であり、各々で自由に再解釈し制作してほしいとコメント。

事務局から屋根部分の構造体の安全性チェックが入ると連絡があった。また、参加作家全員の名前表記は、瀬戸芸会期後に制作する瀬戸芸2019記録集には掲載出来るが、瀬戸芸2019公式ガイドブックへの掲載は難しいとの連絡もあった。KOURYOUは数回事務局へ打診したが、他の瀬戸芸出展作家も多くの協力者がおり、掲載しない方向で統一しているとの事。庭に設置予定の玉垣には全員分の名前を入れ、来場者には分かるようにするとコメント。

山本、KOURYOUの個別打ち合わせ。


3月12日

KOURYOUはVOCA展2019へ出展する作品を搬入した。

シゲル、KOURYOUが予算状況とスケジュールについて打ち合わせ。


3月14日

福士がデータ上で作品を完成させ、KOURYOUに提出。
山本が印刷業者を調べ上げ、入稿作業を担当する事になる。


3月21日

KOURYOUは神棚作品の神様カードのフォーマットを共有。カード全面に作品が印刷され、下部に神様の名称等が入る仕様だ。

搬入トラックでの作品回収日程と運送費確定のため、回収場所の全住所を把握したいと運送業者から連絡がある。トラックで搬入予定の作家は、住所をKOURYOUに送る。


3月23日

KOURYOUが事務局から送られてきた女木島宿舎の使用方法と注意のPDFを共有。


3月25日

柳本が女木島宿泊先の情報を共有。


3月26日

第2回の滞在制作では、KOURYOUは交通費削減のため、搬入トラックに同乗し女木島へ向かう事になった。これにより到着が4月6日ではなく7日に変更された。
荒木と弓塲は6日に到着予定。弓塲の到着に合わせてトラックをレンタル出来るようKOURYOUが手配。

神様カードへ印刷する作品は31日の午後までに入稿しないと搬入に間に合わないので、30日中に提出してほしいとKOURYOUはお願いした。

柳本は7日の夜から女木島に滞在予定。料理が得意な柳本は全員の晩御飯を担当する事となる。女木島の宿舎からその都度買い出しに行くのは大変なので、柳本が住んでいる高知で食材を大量購入し宿舎に送ることにした。受け取りは6日の時点で女木島に到着している荒木が担当することに決定。

事務局から長期滞在の場合は調理器具や食器は持参して欲しいと連絡があった。しかしなるべく荷物を減らしたいので、柳本は女木島宿舎に常備されている炊飯器、フライパン、鍋、ボウル、サランラップ、食器、箸、その他のものを、早く到着した作家にチェックしてほしいと頼んだ。


3月27日

高松港付近と女木島には事務局のトラックが一台ずつ常駐しており、借りる時は事前予約が必要である。第2回目の滞在制作期間は他の多くの出展作家がトラックを借りる可能性があるので、長期貸出はできず、長くて半日のみの貸出であると事務局から連絡が来た。
KOURYOUは、第2回滞在制作の最初に、作品全体に必要な土運びをする計画である。6日にトラックを予約する予定だったが、弓塲、荒木の到着時間によっては7日に借りたほうが確実かと質問。これを受けて荒木は、トラックのレンタルは7日の方が良いと答えた。
 

3月28日

KOURYOUは神様カードについて、断ち切りを入れるので四隅が少し切れる事、帯の色と配色について確認をした。各作家の途中経過を把握し、三毛の阿弥陀如来は画面上の糸部分を現実空間と繋げる工夫をする事、KOURYOU自身の担当するマリア観音は、柳生のリサーチ報告会でのキリシタンに関する報告を取り入れ、画面上の絵ではなくカード自体に光をあて影で十字架を表現する事、大日孁貴神(おおひるめのむちのかみ)のカードの中心にピンホールのような穴を開け、外の光を部屋へ入れ込むなどの案を共有。

KOURYOUがアルバム「神様カード改」を追加。

荒木が神棚の屋根の部分にあたる構造体の画像を共有。


3月30日

KOURYOU、VOCA展2019の作品を搬出。

各作家の作品〆切日。


4月3日

荒木が、搬入トラックの集荷の際、自宅を追加したいとKOURYOUにお願いした。KOURYOUは様々な予定が重なっており超多忙であるため、搬入予定に関して誰かLINEの履歴をまとめて一覧にしてほしいと依頼。荒木がすぐにノートを作成。

坂本が会場の土が何色なのかを質問。KOURYOUは土を掘る場所の確認はしているものの、まだ掘り起こしてないため確認は難しいが、多分茶色ではないかと答えた。


4月4日

集荷の件で坂本は、もうひと仕事したいので、今回の搬入トラックは見送ると報告。運送業者とは荒木がやり取りを担当している。KOURYOUは当初予定していた搬入スケジュールでは運送業者の負担が大きすぎるので、トラック到着を8日に遅らせる判断をする。同乗するはずだったKOURYOUは急いで飛行機のチケットを取り、予定通り7日に到着できるよう手配した。

搬入トラックは5日、6日、7日に作品回収にまわり、8日に女木島に到着する日程に決定。


4月6日

第2回目の滞在制作開始。

荒木は朝、今日から作品回収が始まることを全員にリマインドした。荒木は飛行機で向かう為、その間連絡が取れなくなることも付け加えた。15時20分に高松空港に到着の予定。

村上は13時15分に現地に到着。日差しが強い中の屋外制作なので、「高松市内のコンビニで日焼け止めを買ってきてくれ」と荒木に依頼。KOURYOUは村上と荒木に「今日はよろしくお願いします!」とエールを送った。

村上は会場に脚立が用意されていないことをKOURYOUに連絡。KOURYOUはすぐに事務局へ連絡し、脚立が置いてある場所を村上に伝えた。
事務局から、2つ借りられる予定だった脚立が1つしか確保できなくなったと謝罪の連絡が入る。2つ以上必要なときは、他の瀬戸芸出展作家から借りる対処をすることになった。

神様カードの印刷と郵送は山本が担当していた。当初の予定よりも早く仕上がり、女木島のフェリー待合所に届いていると連絡を受ける。KOURYOUは村上か荒木に受け取って欲しいと連絡。荒木は村上に、神様カードの待合所での受け取りを依頼。待合所が開いているのは17時まで。村上は神様カードの受け取りを試みたが、村上にとって難易度が高く失敗した。

作品回収に回っているトラックが大幅に遅れていると連絡が入る。予定の集荷時刻に間に合わない可能性が高くなったが、夜までには必ず回収するとの事。夜に集荷場所に居ない作家は玄関先に集荷作品だと分かるように置いてほしいとKOURYOUが全員へ連絡。

「家船」の紹介が雑誌「エル・ジャポン」に掲載される。

小宮が滞在スケジュールを変更した。12日から14日の予定だったが、11日から13日と一日早まった。シゲルは荒木に、現地で担当者に会った際に参加作家の一人の滞在予定が変更になった事を伝えてほしいと連絡。
18時半頃に荒木が女木島に到着。担当者に小宮の滞在日程変更を報告。


4月7日

荒木が午前中に待合所にて神様カードを受け取った。柳本が送った食料品は重すぎる為、女木島宿舎まで直接配送することになった。

15時過ぎに柳本が女木島に到着。柳本が作る晩御飯をいただく時は、1食300円を柳本に支払う事に決まった。宿舎には海外作家が多く滞在しており、人見知りだという柳本はキッチンでコミュニケーションが上手く取れない事から、やや怯えていた。

小宮が搬入トラックに橘の木を積んだ。到着後に温かい場所で保管し、葉を湿らせたり、土に水をやって欲しいと頼んだ。KOURYOUは了承した。

16時半、KOURYOUが高松に到着。「死体が動いている状態ですが研ぎ澄まされています」とコメント。頭は冴えているが、体力面ではかなり疲れている模様。

KOURYOUが現場で行う作業の流れを全員に共有。KOURYOUは集団制作が苦手であり、一人で制作する時間がないと本来の力が発揮できない。朝4時から7時がKOURYOUの完全に1人での制作時間、7時から19時まで各々のタイミングで共同制作、19時から晩御飯というスケジュールが組まれた。朝食と昼食は各自食堂や売店でとってもらい、休憩や休日は各自自由に決める。

KOURYOUが現地制作に来る予定の作家に2つのお願いをした。直径20センチくらいの丸い石を見つけたら会場に持ってきて欲しいという事と、お菓子を買ってくる場合はなるべくビックリマンチョコを買って、シールを譲ってほしいという事だ。

参加作家の柳生がビックリマンシールの企画で「妖ゼウス」を制作していた。このシールを「家船」に使いたいが、関東限定販売なので高松では手に入らない。
高橋は自分が持っている肉リマンシールの画像を共有したが、KOURYOUに却下された。シゲルが大人買いしたビックリマンシールから「妖ゼウス」を入手しており、会場に送る約束をする。

柳本が晩御飯について、共有スペースに19時から20時まで配膳しておく事、21時には全て片付ける事、食器は各自で洗う事を連絡。


4月8日

KOURYOUは坂本に現地の土の色の画像を送り、色は茶だという事を伝えた。荒木は乾くと表面の色が薄くなると付け加え、運ぶ前の乾いた状態の画像を共有。


明日こえび隊一名が手伝いに来る事になった。8時20分のフェリーで到着予定。柳本が迎えに行くことに決まる。

搬入トラックが到着する。


4月9日

現地で制作中の作家はギリギリのスケジュールで制作しており、細かな予定を覚えておく余裕がない。シゲルがこえび隊の到着を知らせる。柳本の手が離せない状態だったのでKOURYOUが迎えに行く。屋外作品の耐水コーティング作業をお願いする。

弓塲が10日の朝に女木島に到着すると連絡。現在高松でトラックを借り、買い出しができる状態だ。

柳本が弓塲に、買ってほしい食材のリスト(塩鮭、もやし、アスパラ、卵、ほうれん草、ナス、トマト、ピーマン、ひき肉、玉ねぎ、豚肉、鶏もも肉)を送った。
KOURYOUは、屋外用のパテ、垂木、コンパネ、石膏、セメントの購入を依頼。


4月10日

柳本が弓塲に追加でバナナ1房の購入を依頼。
高橋が現在まで溜めていた経費を計上。

弓塲が女木島入り。
借りているトラックを使用し、弓塲、荒木、村上による大量の土運びが実施される。


4月11日

12時のフェリーで小宮が女木島に到着する。小宮の滞在日程は短い。KOURYOUは小宮が到着するまでに小宮の作品配置予定の屋根裏の整備と塗装作業を急いで進めていた。

屋根裏部屋でKOURYOUと小宮は着物が入っていると思しき箱を発見。翌日中を確認する予定を立てた。


4月12日

屋根裏部屋の箱の中から、神功皇后と応神天皇が描かれている旗を発見した。

KOURYOUは細かな制作が必要な作品を宿舎へ持ち帰り、午前3時から朝方まで宿舎で制作をしていた。村上はKOURYOUが早朝1人での現場制作をしないと聞き、6時前から現場作業に入る。
この日KOURYOUの現場制作は朝9時から開始することになる。それに合わせて床のペイント作業の協力が出来る作家を募った。

4月12日

現場での制作の様子 撮影:荒木祐介

廃材を提供してくれていた解体業者が、KOURYOUが丸い石を探している事を聞き、「ちょうど良い石を見つけた」と画像を送ってくれた。KOURYOUはこの石を採用することに決定。

明日、福士と伊藤が現地入りする。KOURYOUは福士に、体調不良の作家が出た時のため、薬を買ってきてほしいとお願いした。内容はイブクイック、葛根湯、ユンケル。シゲルは「ユンケルならば粉のほうがコスパが良いので、ユンケル黄帝顆粒にしましょう」と提案。


4月13日

事務局から弓塲に、こえび隊の女性5名と男性1名が8時20分着のフェリーで向かっていると連絡を受ける。KOURYOUが迎えに行った。この日から2日間こえび隊6名が福士作品の切り抜き作業を手伝う予定になった。

福士は昼に到着するので、それまでこえび隊には会場庭で蔀戸(しとみど)として制作している板に着彩する作業をお願いした。福士が到着後、宿舎の共有スペースにて福士の指導の元、作品の切り抜き作業が開始される。

伊藤が現地に到着。こえび隊が終えられなかった着彩作業の続きを担当。

荒木と伊藤が、借りていたトラックで西浦の調査に行くが、トラックの返却時間を超過してしまい事務局に注意される。

4月7日

女木島、西浦に住む漁師の方の家。漁などに使う材と住宅が融合している。 撮影:荒木祐介

小宮の滞在制作が終了。残っている作業をKOURYOUに託す。

明日、井戸が現地入りする。柳本は井戸に、味噌と乾燥わかめを買ってきてほしいと依頼。KOURYOUは井戸に、足りなくなっているコバルトブルーとセルリアンブルーのアクリル絵の具の買い出しを依頼。


4月14日

この日も朝からこえび隊が福士の作業を手伝う。細かい手仕事が得意な方に集まってもらったが、ドットに合わせてカッターで精密に切り抜いていく作業はかなり難易度が高い。
KOURYOUはベタ塗りの作業が多く残っている部品があるのを思い出し、それを福士達の元に持って行き、切り抜きが得意な方とベタ塗り作業をしてもらう方に分かれて作業してもらう。福士とKOURYOU、こえび隊の女性5名は丸1日黙々と作業をする。KOURYOUはこえび隊作業としては大変すぎなのではないかと心配したが、細かな作業に徹するのが好きなので苦にならないです、という方達ばかりで、とても助かった。

男性のこえび隊1名は会場で力仕事の協力をする。そちらの方の作業内容は伊藤に一任する。

KOURYOUは弓塲に天球儀の着彩が済んだら見に行くので呼んでほしいと連絡。

井戸は買い出し先の絵の具売り場の写真を共有。絵の具の種類が少ない為目的の色がなかったが、KOURYOUと相談し似ている色を無事購入する。12時のフェリーで現地に到着。

井戸は運んできた自身の作品を完成できていなかったので現地で制作の続きをする。
弓塲は石膏ボードで作った蔀戸を設置し穴をあける。この作業で、弓塲が受け持っていた制作が全て完了した。

井戸と伊藤の滞在制作が終了。
井戸の作品で残っている作業をKOURYOUに託す。


4月15日

陶芸家である女木島の自治会長に弓塲、KOURYOUが挨拶へ行く。自治会長の作品を見せてもらい、「家船」に貸出して下さる事になった。

弓塲の滞在制作が終了。

まだ制作予定のものが多く残っているため、手持ち無沙汰になった方は電話して下さいとKOURYOUが連絡。

以前フェリーでKOURYOUと仲良くなった、女木島在住の竹藤狐さんが作業を手伝ってくれる事となる。現代美術を学び、デザイナーやイラストレーターをしつつ、女木島の地域おこしの仕事をしている若い男性だ。

晩御飯の後、柳本が福士の切り抜き作業を手伝う。
KOURYOUは福士の作品の貼りつけ作業が福士の滞在日程内に完了できるよう「家船」内部構造の完成を急ぐ。


4月16日

柳本が村上にこれまでの食費を請求。

鬼ヶ島観光協会(以下観光協会)の方から、晩御飯を食べにおいでとご自宅にお呼ばれする。

シゲルがビックリマンシールと煙草のカートンを発送。


4月17日

天球儀の構造体に設置する、三角錐が貼りつけられた球体を柳本が完成させる。三角錐は平間、三毛、湯浅が制作。球体全てに貼りこむ計算をしていたが、数が足りない事が判明。KOURYOUは剥がれて落ちている演出に変更したが、それでも足りない三角錐は夜に宿舎で柳本と共に制作。

坂本が作品を発送。KOURYOUに頼まれた絵筆も購入し同封する。翌日到着予定。

4月17日

設営中の神様カード 撮影:荒木祐介


4月18日

宿舎の廊下を塗り直しているため、しばらく通れなくなった。

柳本が買い出しに行く。パテ、木工用ボンド、造草などを購入。

村上が数日延期してくれた滞在制作を終了した。


4月19日

柳本の疲労も溜まっている。KOURYOUが柳本を気遣い、この日の晩御飯は各々で用意するようにと連絡したが、柳本は調理時間が休憩のようなものなので気にしないで大丈夫と返信。福士も柳本を気遣い、「今日はまじでゆっくり休んでね!」とコメント。

柳生が現地入りする。柳生の助言を参考に、福士が入口に獏の絵を描く。柳生はその後、KOURYOUが苦戦していた石運びと、内部の大きな物体の設置を手伝う。さらに最終フェリーの時刻まで、着彩が終わっていなかった山本の作品の着彩を担当する。

高橋が現地入りする。

KOURYOUは福士が作品を貼りこむ状態までには「家船」内部の作業をもっていけていなかった。なので福士は作品を貼りつける場所にアタリをつけ、貼り方のメモを共有。

井戸の作品への着彩を託されたKOURYOUは福士と相談し、福士が訪れた事のある神社の像の画像を見せてもらう。その像の目の形がとても良かったので、それに似せた形状でKOURYOUが着彩を行う。

福士の滞在制作が終了。


4月20日

柳本はKOURYOUに、米を炊いてから会場に向かうと連絡。

よく現場を覗きに来てくれていた近隣の方が、小宮の橘の木がこれでは育たないと指摘。小宮は橘の木の植わっている部分の土を双方中円墳の形にしたいとKOURYOUに話していたが、土を盛っただけでは雨で形が分からなくなってしまっていた。そこでKOURYOUが双方中円墳の画像をその方に見せ悩みを話すと、形が崩れないよう周辺をセメントで固め、古墳の形状に整える作業をしてくれた。

荒木の滞在制作が終了。

4月20日

制作途中の「家船」 撮影:荒木祐介


4月23日

柳本が高橋に、明日の朝食はいつもの所に置いたので電子レンジで温めて食べて、食事が終わったら食器は洗うようにと連絡。付け加えて買い出しに出かける高橋に、肉、きゅうり、人参、ピーマン、ちくわ、絹豆腐、焼きそばの買い出しをお願いした。

観光協会の方に協力をお願いしていた、レシピのメモが届く。「家船」内の台所に配置。

柳本は屋根に造草の取り付けを行う。
高橋は入口の看板とロボットを制作。

瀬戸芸2019のプレスプレビューが行われ、制作中の「家船」に多くの取材陣が来る。


4月24日

夜、柳本が宿舎で火傷を負う。翌日KOURYOUと高松市の病院に向かう。


4月26日

朝9時、前日から徹夜作業を続けているKOURYOUは、これから瀬戸芸2019の開会式が開催される事を全員に知らせた。「家船」を代表してKOURYOUが登壇する際、シゲルは「平成最後の、というフレーズをねじ込んできて下さい」と頼んだ。

シゲルはこの時点で未精算となっている交通費があることを知らせた。主に4月分の交通費である。
 
KOURYOUはアルバム「春会期の家船、現状」に画像65枚を追加した。さらにKOURYOUは「家船」の出来に納得しておらず、夏会期まで制作を続けると報告。

柳本の滞在制作が終了。


4月27日

小宮が制作した屋内作品が、重力でどんどん下の位置に下がってきている事をKOURYOUが報告。元に戻すにはワイヤーで吊るし直す必要があるがどうするかと質問。小宮はもう少し様子を見て、必要があれば現地に行って対応すると返信。

高橋の制作が完了していなかったので、KOURYOUと高橋は滞在日程を延長し、瀬戸芸閉場後に制作を続行。


4月28日

KOURYOUが、高橋が制作したロボットが稼働している動画を共有。参加作家から「ロボやばい!」「すご」と驚きの声が上がる。
その後も数日、昼夜逆転しての制作が続く。

オープニングの日の夜、強風で壁の一部が壊れたため、坂本の作品に土が少し乗ってしまった。KOURYOUは画像を共有し坂本に報告。坂本は許容範囲内なので問題ないと返信。

幼稚園児の団体が「家船」に入場した際に、小宮の作品の一部が壊れてしまった。応急処置として高橋が元の位置に置き直した。KOURYOUはなるべく作品に保護柵などは作りたくないと連絡。小宮も柵は取り付けたくないので、別な対策を検討すると約束した。
 

4月30日

柳本が3月分の制作費、4月分の買い出し経費と交通費を計上。

KOURYOU、高橋の滞在制作が終了。


5月1日


KOURYOUが夏会期前の滞在制作の予定を調整。春会期の状態に納得のいっていない作品の追加制作及び台風の対策を行う。夏会期前に制作できる期間は5月27日から7月18日。

シゲルは未精算分の経費の請求の締め切りを5月末とした。


5月2日

夏会期前の制作を表明しているのはKOURYOU、村上、小宮、高橋。そのほか伊藤、柳本、福士が調整中。


5月4日

KOURYOUは、現在の「家船」は時間が抜け落ちてしまっているというか、グループ展とさほど変わらない状態だと思っているので、夏会期までにきちんと仕上げたいという旨を表明。

また、現地に来られない作家も共有した写真を見て、自身の作品に納得のいっていない部分があれば、KOURYOUが代わりに調整する事が可能であると伝える。

助っ人グループで情報共有していた山本が家船LINEに正式参加。


5月5日

シゲルから予算についての連絡。搬出作業用に予算をまだ残してはいるが、搬入トラックが予定日数を超えた関係で、費用が当初の計画を上回ってしまったため、夏会期前制作の作家全員の交通費及び制作費をKOURYOUが持ち出しする可能性が大きい。そこでそれを防ぐため、謝礼と制作費のための前金としてKOURYOUが各作家に渡していた金額の中から、再び滞在制作する参加作家へ参加作家全員からのカンパを募りたいと提案。

事務局から連絡があり、この日までの作品の破損状況は、看板に貼りつけた文字が取れてしまっているのに加えて、筏が破損している。現在事務局がインシュロックで固定する処置を行っているとの事。外れて落ちていた看板の文字は回収できた分を保管中。KOURYOUは、もし皆が了承するなら、春会期に壊れたものはすぐに対処せず弱点を把握し、絶対に壊れてはいけない部分の強化を夏会期前までに行いたいと提案。


5月10日

KOURYOUがノート「夏会期前制作について」「取材、作品解説について」を共有。

夏会期前の各作家の追加制作の内容は、福士が作品の貼り方の処理が気になる部分をKOURYOUに詳しく伝え貼り直しを託す事、小宮が屋内作品にもっと積極的なエイジングをする事と、本物の植物の時間を追加する事、高橋が作動していない装置を動かす事、村上が納得のいっていない外観の完成度を上げる事、伊藤が台風対策の担当をする事、柳本がみんなの制作補助をする事、などである。

KOURYOUは全ての異なる時間が一つの「家船」になる設計を完成させるため、全体の制作をする予定である。


5月15日

KOURYOUがノート「家船作品、破損許容範囲管理表」を共有。

これは伊藤とKOURYOUが相談し、伊藤が作成したものだ。各作品の破損許容範囲をまとめ、それぞれの作品がどれくらい自然劣化や事故による破損を許容するのかが一目で分かる。5月27日までに各作家が項目を記入する。

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家船作品、破損許容範囲管理表の一部


5月16日

伊藤、KOURYOUの打ち合わせ。春会期前の制作で上手くいかなかった手順見直しと台風対策について相談する。


5月28日

KOURYOUが高松に到着。
高松市内の古本屋「なタ書」へお邪魔し、その後店主の藤井佳之に高松市周辺の案内をしていただく。

女木島の宿舎利用のルールが変更されたと事務局から連絡がある。


5月29日

KOURYOUが現地入りした。
KOURYOUは作品の破損具合を確認し画像を共有。筏作品が屋内一周を走行するためのレールがかなり破損していた。小宮の屋内作品は完全に千切れてしまっていた。坂本の作品には細かい砂が掛かっていた。裏門の恵比寿様を支えている蔀戸がたわんでいた。落ちたら大変だ。


その他の大きな変化としては、屋外作品を中心に観客によるお賽銭が沢山供えてあった。

KOURYOUはまず、参加作家に託された内容の作品修正にとりかかる。


6月4日

台風対策で使える板が7枚残っている事を共有。事務局からは屋根のアーチ上構造体に網をかけてほしいと要請があった。

女木島の住吉神社大祭で、若い担ぎ手が足りないので「家船」メンバーの男性作家に参加してほしいと島民からKOURYOUに声がかかる。この祭は今年で終わってしまう可能性が高いという。会期は8月3日、4日。弓塲が参加を表明。

KOURYOUは別の作品展示の予定があるため、一度東京に戻る。


6月9日

KOURYOUが再び現地入り。制作を再開する。


6月11日

KOURYOUは夏会期前の宿舎予約を事務局に連絡。全員の予定確認をするためにノート「宿泊予約確認エクセル」を共有。


6月17日

伊藤がノート「工程管理表」と「購入物品リスト」を作成。「工程管理表」は、屋内での制作場所がなるべく被らないように作ったものだ。「購入物品リスト」は、ホームセンターへの買い出し回数を出来るだけ減らすために作ったもの。


6月25日

柳本が現地入り。
柳本は追加で桶の作品を制作しており「家船」に配置。その他KOURYOUの制作補助にあたる。

夏会期前の制作期間中、KOURYOUの思考と制作は自由度を増しており、柳本が滞在を始めてからは、柳本の制作との即興セッションのようなやり取りが続いた。KOURYOUはとても幸せな制作時間だったと回想する。


7月2日

小宮が現地入り。
改めて屋内作品の破損は積極的に許容し推し進める事と、造草と本物の植物を混ぜて屋内に張り巡らせるという制作を行う。

KOURYOUは小宮の作品と自身の「ちねちね」と呼んでいる蔓のような文字の作品を融合させたり、小宮が拾ってきた骨を使って新しい神棚を追加制作したりする。


7月6日

小宮の滞在制作が終了。


7月11日

村上が現地入り。
外観の完成度を上げる制作の他に、自身で用意してきた千羽鶴や鈴などを配置。

KOURYOUは、村上の制作への姿勢を尊敬しており、一緒に制作する時間はお互いに刺激し合う素晴らしいものだったと回想する。


7月14日

伊藤が現地入り。
台風対策の指示と、破損したレールの強化処置を行う。また近隣の方へ配る書類を作成。台風対策のための制作物作成を村上にお願いする。

村上の滞在制作が終了。


7月15日

伊藤の滞在制作が終了。


7月17日

柳本の滞在制作が終了。
柳本が制作費、交通費の領収書をシゲルに提出。


7月19日

瀬戸芸2019夏会期が始まった。

KOURYOUは、自分が納得して完成品と言える状態まで「家船」を持っていくことが出来たとコメント。「皆さん全員と一緒に作ったから生まれた作品です」と、参加作家へ感謝の気持ちを伝えた。

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春会期開催直前の「家船」屋内の一部 撮影:KOURYOU

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夏会期開催直前の「家船」屋内の一部 撮影:KOURYOU

事務局から台風対策について指導が入ったが、なんとかクリアできた。


7月20日

KOURYOUがアルバム「夏会期、現状」を追加。
100枚の画像で全員に「家船」の状況を共有。

生い茂る草により玉垣などが隠れてしまっているので、事務局が一部草を刈り取る事が決定。


7月21日

安全のため屋根裏部屋が12歳以下立入禁止になった。


7月22日

KOURYOUは作品の状態を報告するために、作家別にアルバムを作り作品写真を共有。KOURYOUが気になる所を指摘し、作家がそれに対応するという手順で確認作業が続く。


7月23日

観光協会の方が行っている女木島ツアーの中に「家船」が組み込まれ、観光客に紹介してくれている事が分かった。瀬戸芸期間外の制作中にも団体客が何度か来ており、不思議に思っていたが謎が解けた。

女木島にある瀬戸芸出展作品は海水浴場周辺に密集しており、「家船」はその反対側の離れた漁港付近にあるので気がつかない観客もいるという話を聞いていたため、ツアーに組み込んでくれた観光協会の方や、鬼の台所という軽食店のご家族が積極的に案内をしてくれていると聞き、KOURYOUはとても感謝した。

KOURYOUの滞在制作が終了。


8月2日

女木島の住吉神社大祭を見学するため、KOURYOUは再び女木島入りした。観光協会の方のご厚意で、猛署の中クーラーがない宿舎は厳しいだろうとご自宅に泊めていただく。


8月3日

女木島の住吉神社大祭が始まった。朝から獅子舞が各家庭の入口で舞を披露する。夜、住吉神社にて宵祭りが行われる。


8月4日

担ぎ手として参加する弓塲が女木島に到着。住吉神社大祭の本番が開催される。

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女木島住吉神社大祭2019の様子 撮影:KOURYOU

夜はKOURYOUと弓塲の2人とも観光協会の方のご自宅に泊めていただく。


8月5日

早朝、弓塲は改めて「家船」を鑑賞し、帰路に着く。
住吉神社大祭の様子を描いたドローイングを制作。


8月17日

伊藤が瀬戸芸2019を観客として巡る。台風通過の後だったが「家船」を確認した所、影響はほとんど無かった。

伊藤は今回の瀬戸芸2019を分析し、全体の傾向としてホワイトキューブ的な展示方法や、アトラクション性のあるテーマパーク的な演出に寄せている印象だったとコメント。その中にも数点、それらの進出により消えていってしまう島の現状や風土、歴史に寄り添うような作品もあったとの事。「家船」はテーマパーク自体も廃墟化しているシナリオだが、多くの展示があまりにもホワイトキューブ的、テーマパーク的に整備された印象が強いため、じっくり鑑賞しないと「家船」は、島から消えていく風土や歴史に寄り添っただけの作品に見えてしまう。前回までの瀬戸芸でならそうは見えなかっただろうが、今年の瀬戸芸を巡る中で「家船」を見ると、作品に組み込まれた複雑な構造が見えにくい、と助言。

加えて、それを回避する案として、テーマパーク的な場所でもあった事がさらに分かりやすく読みとれるように、テーマパークや博物館などの施設内に展示されているような年表を制作し展示するのはどうかと提案した。

KOURYOUはこの分析に納得し、伊藤の案を採用した。さらにその年表作品にエイジング処理を施し、ステイトメントのように見せず一つの作品として展示すると発案。


8月19日

KOURYOUがアルバム「夏会期、伊藤さんによる確認写真」に画像64枚を追加した。


9月19日

年表作品のデータが完成。


9月20日

10月28日に、齋藤祐平が妻・末度加と共に経営する古本屋「YOMS」で、「家船の可能性を巡って」というトークイベントが企画された。


9月22日

KOURYOUが現地入り。
追加の作品、年表とシャボン玉装置の設営にとりかかる。


9月24日

伊藤が「家船」を鑑賞した時に、屋内の照明が消えていたという問題があった。全ての電源を統合した点灯スイッチを用意しており、そこの操作だけで済むようにしていたが、個別のライトのスイッチを誰かが間違えて消してしまっていたようだ。この事故を防ぐため、伊藤の案でこえび隊の使用する机に大きな指示書を貼る事にした。


9月28日

瀬戸芸2019の秋会期が始まった。

夏会期との大きな違いは、入り口に展示された年表作品と、20分に1度動くシャボン玉装置が追加された事だ。

画像7

入口の年表 撮影:KOURYOU

シゲルが女木島に向かう目処が立った。
柳本は明日女木島に到着する予定だ。KOURYOUは柳本と会った後に帰宅する事にする。

KOURYOUが年表の画像を共有。さらに齋藤葵というカメラマンに撮影を依頼していると全員に報告。


10月19日

シゲルが「家船」を鑑賞する。ツイッターでレポートをする予定だと報告。シゲルは良い写真が撮れるよう努力するが、文章はテキトー極まる事が予想されるとコメント。


10月28日

古本屋「YOMS」にて、トークイベント「家船の可能性を巡って」が開催される。岸井大輔、陸奥賢、KOURYOUによるイベントだ。観客として柳本も参加。


10月30日

テレビのバラエティー番組で女木島が特集される。「小さなお店プロジェクト」を中心に編集されていたが、「家船」も少し映った。


11月3日

事務局から「家船」は会期終了後に撤去であるとの連絡が来た。KOURYOUは女木島の方から、会場古民家は年間数万円で借りられる物件だと聞いており、所属ギャラリーのカオス*ラウンジと共に古民家を借りて「家船」を保存できないかと提案したが、事務局は反対であると言う。撤去作業を11月中に行うなら、バッカン車の費用を事務局と折半できるとの連絡を受ける。


11月4日

瀬戸芸2019の全会期が終了。


11月6日

「家船」のそのままの保存は契約違反となり、もし保存したい場合は一度解体、撤去を完了してから再び作り直す必要があると連絡を受ける。


11月7日

KOURYOUが家主との交渉を事務局にお願いする。しかし一度解体完了してからでないと家主の意向を聞く事も不可であるとの事なので、どのみち解体作業をすることに変わりはない。解体した作品は、女木島の倉庫に保管する事になった。


11月12日

KOURYOUがカメラマンの齋藤と共に女木島入りする。
齋藤はKOURYOUの話を聞き、自身の作品としてコンセプチュアルに撮影した写真と、記録用の写真の2種類を撮影した。

黒瀬陽平が女木島入りし「家船」を鑑賞。


11月16日

解体作業の日程が22日から27日までに決まった。27日に現状復帰の確認が入る。

再建し保存する場合、KOURYOUが知人に紹介を受けた美術作品管理会社から、「家船」は好きな作品であったので管理委託を受けてもいいとの連絡を受ける。

女木島に再建ではなく違う場所に出航するのはどうかというアイデアも出てきた。これにより、移動して漂着した「家船」が再び移動する可能性が。

事務局が家主に意向を聞いた結果をKOURYOUに伝える。再建不可の最終判断が下った。


11月21日

KOURYOUが女木島到着。


11月22日

梅津庸一が女木島入りし、解体直前の「家船」を鑑賞。

14時に平間、村上が女木島到着。
解体作業を開始。


11月23日

平間の滞在終了。


11月24日

柳本が女木島到着。
屋外の解体作業を村上が担当し、柳本とKOURYOUで屋内解体と作品移動、現状復帰を行う。

破棄する材はゴミ処理業者に回収を依頼。



11月27日

撤去作業が終わり、事務局のチェックもOKが出た。
屋外の解体は村上一人で完遂し、屋内の現状復帰も土運びなど力仕事を柳本とKOURYOUの2人で完遂するなど、搬入作業以上に壮絶なものであった。

作品と一部廃材は女木島に3月まで保管出来る事となる。


12月4日

カメラマンの齋藤から写真作品の見本が到着する。70年前のレンズを使用した写真作品と、記録用の写真に分かれており、素晴らしいものである。


12月6日

12月27日の芸術動画ヤミ市への出展が決まった。KOURYOUの出展ブース内で「家船」のグッズ販売コーナーが設けられる。


12月9日

芸術動画ヤミ市の搬入は25日、26日に決定。


12月11日

みそにこみおでん主宰の「レビューとレポート」の12月号に、KOURYOUへのインタビューが掲載されることになった。インタビュアーは平間。後に「家船」特集号も組まれる予定。


12月15日

KOURYOUは、「家船」の移動プロジェクトの準備を開始。移動をしていく作品になる事で「家船」のコンセプトが明快になると表明。

まず候補地の大阪を視察。西九条の作家に案内を受けた鴉宮神社は、「家船」のように神社に船首がくっついている造形だ。KOURYOUは画像を共有。それを見た荒木は家紋が3つ組み合わさっていて面白いとコメント。


12月22日

2020年3月に予定しているレビューとレポート「家船」特集号で、「家船」の参加作家にインタビューする連載形式の記事の企画が通る。芸術動画ヤミ市の終了後に個別で予定を話し合う。


12月24日

芸術動画ヤミ市の搬入についてKOURYOUが連絡。26日の昼にKOURYOUの自宅に運送トラックが来るので、それまでに作品やグッズ制作が間に合わない場合は各自会場まで持参する事となる。


12月27日

芸術動画ヤミ市の当日。
「家船」コーナーで販売するグッズは、KOURYOU、柳本、三毛、弓塲、荒木、シゲルの参加するzine、「家船」間取り図のステッカー、小宮のタトゥーシール、柳本のバッグやポーチ、平間のポリゴン、山本の水虎、三毛の絵画、湯浅のチョコマシュマロ、「家船」の本物の廃材の一部。


12月29日

KOURYOUが芸術動画ヤミ市で売れた商品代金を精算。

「家船」の移動プロジェクトの資金調達について、海老名祐がサポートしてくれる事となる。


12月30日

KOURYOUが芸術動画ヤミ市で販売したzineのデータを共有。


2020年1月8日

レビューとレポート「家船」特集の内容は、参加作家のインタビュー、荒木・伊藤・柳生の瀬戸内についての調査報告書、黒瀬陽平・岸井大輔の対談、「なタ書」の藤井佳之・「YOMS」の齋藤祐平へのインタビュー、平間貴大による「家船」制作経過のまとめ記事になることになった。

11日の夜に亀有「あお乃」で食事会が企画される。


1月25日

海老名祐が参加。

KOURYOUが大阪へ二度目の下見に行く。陸奥賢に淡路島を案内して下さる方を紹介いただき、淡路島へ向かう。

KOURYOUが大阪と淡路島で撮影した画像を保管したアルバムを3つ追加。


--以降もやり取りは続く--


追記:この年表を作っている最中、平間はKOURYOUから「クトゥルフ神話TRPG」のリプレイ動画を紹介された。(実はめっちゃ面白いクトゥルフ神話TRPG:https://www.youtube.com/watch?v=_6PupA6-zak)


KOURYOUから平間に「平間さんの作成している年表は、一つのリプレイとして見ることが出来るんじゃないか」とコメントがある。

レビューとレポート3月号「家船」特集「対談/黒瀬陽平×岸井大輔」(https://note.com/misonikomi_oden/n/nffef75209055)での黒瀬、岸井、KOURYOUの会話の中でも、「家船」とシミレーションゲームについての言及がある。

見出し画像:KOURYOU描き下ろし
参考資料:KOURYOU主宰LINEグループ「家船」


「レビューとレポート」 第11号 2020年4月
(パワードbyみそにこみおでん)


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