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022)20年間ワークアウトを続けている僕が続かないダイエットはなぜそうなるのかを考えてみる

ひとことで言うと、カロリーを減らすと逆に太る可能性があるらしい。

空腹感や満腹感のコントロールには、ホルモンが関係しているということが書かれている記事で、ナショナルジオグラフィック日本版のサイトに掲載されていた。

記事中で食欲に関連するホルモンを7つ紹介しているが、特にその中でも「グレリン」というホルモンの働きが興味深い。
カロリー制限を行うとグレリンの血中濃度が高くなり、いつも以上に空腹感を感じるて食べる量が増える原因になるんだそう。糖質オフなどカロリー制限を進めると、逆にダイエットには失敗してしまいがちであることを示唆している。

確かに極端な食事制限は上手くいかないことは実感として良く理解できるが、そのへんの事情をホルモンという切り口から説明してくれている。

空腹感と満腹感は、ごく単純な感覚に思えるかもしれない。何時間か食べずにいれば空腹になり、十分な量を食べれば満腹になるだけではないかと思うかもしれないが、実際にはもっと複雑なことが起きている。さまざまなホルモンが空腹感や満腹感、脂肪の蓄積を調節し、あなたの体重や健康に影響を及ぼしている。

「体内のエネルギー調節システムは非常に複雑です」と、米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院の体重管理・ウェルネスセンターの共同所長で肥満医学の専門家であるキャロライン・M・アポビアン氏は言う。簡潔に言えば、空腹感と満腹感は、腸と脳(特に視床下部)でのホルモンの相互作用によって調節されている。「これらのホルモンは強め合ったり打ち消し合ったりするように働いて、あなたが飢えないようにしています」と氏は説明する。「その主な働きは、あなたが蓄えた脂肪を守り、体重をできるだけ安定させることです」

この空腹・満腹調節システムは進化によって獲得されたものであり、代謝の速さや体重維持など、生存に不可欠な要素に影響を及ぼしている。

これらのホルモンには、遺伝的な要因に影響されるものもあれば、ライフスタイルや、ある種の病気や、体重や体組成の変化などに影響されるものもある。そうした中で、主に食べすぎを防ぐために食欲を短期的に調節するホルモンと、体内のエネルギー貯蔵量を正常に保つために長期的に調節するものがあると、米ジョージ・メイソン大学公衆衛生学部の栄養・食品学教授で書籍『Weight Loss for Life(生きるための減量)』の共著者である消化器専門医のローレンス・チェスキン氏は説明する。

それぞれのホルモンはオーケストラの楽器のように協調しているため、どれか1つだけに注目するのは正しくないと、専門家はくぎを刺す。

以下では、食欲をコントロールする7つのホルモンについて見ていこう。

レプチン:脂肪組織は、以前は大した働きをしないものと考えられていたが、現在ではホルモンを分泌する内分泌器官と見なされている。全身の脂肪細胞から分泌されるレプチンというホルモンは、もう満腹だというシグナルを送って、食欲を抑える。

肥満症の人は、体脂肪が多かったり、レプチンが働きにくくなっていたりするためレプチンの血中濃度が高くなる傾向がある。これに対して、摂取カロリーを減らして体脂肪を減らすと、レプチンの濃度は低下する。「レプチンは、飢餓や脂肪量の減少から体を守ろうとするもので、体重維持に関係しています」とアポビアン氏は言う。

グレリン:「空腹ホルモン」と呼ばれることが多いグレリンは、胃から分泌される。「グレリンの濃度は食事の直前に高くなり、食後は下がります」とチェスキン氏は言う。

体重を減らそうとしてカロリー制限を行うと、グレリンの普段の血中濃度(ベースライン)が高くなる。「空腹感がいつも以上に刺激されるため、減量が難しくなります」と、肥満を専門とする内分泌学者で、米クリーブランド・クリニック内分泌・代謝研究所肥満センター長であるマルシオ・グリーベラー氏は言う。2017年に学術誌「Obesity」に発表された論文によると、グレリンのベースラインが高い人ほど、脂肪分の多いものや甘いものを強く欲し、6カ月間の体重増加も大きかった。

コレシストキニン(CCK):CCKは食後に小腸から分泌される「満腹ホルモン」で、満腹感を生じさせる。また、胃からの食べ物の通過を遅くすることで消化を促し、満腹感を高めるとともに、膵臓(すいぞう)からの膵液や酵素の分泌を増やし、脂質やタンパク質や炭水化物を代謝させる。さらに脳の食欲中枢に作用して食欲を減らしている可能性があるが、このメカニズムは完全には解明されていない。

インスリン:インスリンは、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が上昇すると膵臓のβ細胞から分泌される。「炭水化物を摂取すると、インスリンの分泌が増え、より多くのブドウ糖がエネルギーとして細胞に取り込まれます」とグリーベラー氏は説明する。インスリンも満腹感を生じさせる。体がインスリンを無視したり、適切に反応しなかったりすることを「インスリン抵抗性」と呼び、肥満や運動不足のほか、食物繊維が少なく糖質が多い食品の摂取に関連している可能性があるとグリーベラー氏は言う。

コルチゾール:ストレスホルモンとして知られるコルチゾールは、実際には、代謝の調整など、さまざまな働きをしている。コルチゾールのベースラインの高さは、インスリン抵抗性や脂肪量の多さと関連している。慢性的なストレスにより「コルチゾールが急増すると、食欲が増して特に甘いものや塩辛いもの、脂肪分の多いものを好むようになり、血糖値とインスリン濃度が上昇します」と、米ラッシュ大学医療センターで肥満治療を専門とする看護師のフランシス・リー氏は説明する。実際、2022年に学術誌「NeuroImage: Clinical」に発表された論文では、コルチゾール濃度が高くなると空腹感が生じ、食物の摂取を調節する脳領域の血流が低下することが示されている。

グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1):食後に腸から分泌されるGLP-1は、脳内の受容体に作用して満腹感を生じさせる。また、消化を遅らせ、消化管内での食物の移動を遅くすることで「満腹感を長続きさせ、食べる量を全体的に減らします」とグリーベラー氏は言う。

グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP):GIPは食後に小腸から分泌されるホルモンで、インスリンの分泌を促すことで、グリコーゲンと脂肪酸の合成を刺激し、脂肪の分解を抑制する。GIPには解明されていない点がまだ多く残されている。

新しい肥満治療薬

グリーベラー氏は、空腹ホルモンに関連した近年の大きな動きとして、GLP-1やGIPの働きをまねて肥満症や糖尿病を治療する新薬の開発を挙げる。

そうした薬の1つが「セマグルチド」で、米食品医薬品局(FDA)は2021年に「ウゴービ」という商品名で承認した(編注:日本では2023年3月に厚生労働省から製造販売承認を取得)。ウゴービは、少なくとも1つの体重関連疾患(高血圧など)をもつ太り気味または肥満症の人のための週1回の注射薬だ。

セマグルチドは2017年に2型糖尿病患者のための注射薬「オゼンピック」としてもFDAに承認されている(編注:日本では2018年に承認、2022年に発売)。また、FDAは2022年に「チルゼパチド」という薬を2型糖尿病の成人のための注射薬「マンジャロ」として承認している(編注:日本では2022年に承認、2023年4月に発売)。

チェスキン氏は、これらは食欲を抑えて血糖値を調整する革新的な薬だと言う。太り気味や肥満症の人の大幅な減量にも役立っているが、食生活の変化や運動と併用することが前提だ。「薬だけに頼るのはだめです。単独で解決できる問題ではありません」とグリーベラー氏は言う。

健康的な食生活を心がける

健康な食生活とは、加工食品の摂取を最小限に抑え、全粒穀物、果物、野菜、高タンパク質で低脂肪のものをたっぷり食べるということだ。そうすることで「多量栄養素(炭水化物、脂肪、タンパク質)をバランスよく摂取することができ、適切なカロリーで満腹感を得られます」とアポビアン氏は言う。

「食べる量だけでなく、食べるペースや、1日の食事の回数や、食品の成分も重要です」とチェスキン氏は言う。氏は、これらのホルモンをより安定させるために、3時間間隔で少なめの食事や間食をすることを勧めている。

十分な睡眠をとる:たっぷりの睡眠は、一部の空腹ホルモンの調整にとって不可欠だ。グリーベラー氏は、「よく眠れないと、コルチゾールとグレリンの血中濃度が高くなり、レプチンの濃度が低くなります」と言う。2022年に学術誌「Obesity」に発表された論文では、女性は男性よりも一晩眠れなかった場合に満腹ホルモンであるレプチンの減少が大きく、肥満の人は睡眠不足の後に空腹ホルモンであるグレリンの増加が大きくなることが明らかになっている。

定期的に運動する:これまでの研究から、有酸素運動は空腹感やグレリンの血中濃度を一時的に抑え、GLP-1の濃度を上昇させることが分かっている。また、健康な人では、より強度の高い運動の方がグレリンを抑える効果が高いことを示唆する研究もいくつかある。定期的に運動することで、こうしたホルモンの変化を味方につけ、インスリンの効き具合をよくすることができるとリー氏は言う。

ストレス対処法を見つける:ストレスを避けることは基本的に不可能だが、ストレスにうまく対処することができれば、空腹ホルモンや食欲の調節で大きな効果を得ることができる。

これまでの研究によると、急性のストレスは食べる量を減少させるが、慢性的なストレスはコルチゾールの濃度を高め、食べる量(特に高カロリーのもの)を増やす。

リー氏は、ストレスを軽減してコルチゾールの濃度を下げるには、定期的に深呼吸や運動をするのがいちばんだと言う。2022年に学術誌「Behavioral Sciences」に発表された論文では、特殊な呼吸法を用いた12分間のバイオフィードバック(無意識の体のプロセスを知覚できる情報にして本人に示すことによるリラックス法)により唾液中のコルチゾール濃度が大幅に低くなることが示されている。

文=STACEY COLINO/訳=三枝小夜子(ナショナル ジオグラフィック日本版サイトで2023年4月23日公開)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC022OV0S3A500C2000000/

シメの文言が「健康的な食生活」とか「定期的な運動」とか「十分な睡眠」とか、メチャクチャありきたりで当たり障りが無さ過ぎてスゴいが、まあ確かにその通りではある。。

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