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「キスしたい?握手したい?」別れるとき女が聞いた

<バーアテンダント8>

「髪結いの亭主」の監督パトリス・ルコントの作品「橋の上の女(1999)」
”せつなの人生”の濃密さと、はかなさを教えてくれる。

橋の上の女©︎Database.com

「どうして川に飛び込まないんだ。キミは、誰かが止めてくれるのを待っているんだろうけど、誰も現れない」橋の手すりを越えて川面を見つめている女に男が声をかけた。

「それとも津波でも待っているつもりか」絶望のふちにいる女に、男が追いうちをかけた。

その言葉が女の背中を押した。女が川に落下していった。

「なんてことを」と叫んで、男も川に飛び込んだ。

ダニエル・オートゥイユ©︎pinterest.com

男は、ナイフ投げの芸人。女を救ったのは、すべてを捨てられる女が、ナイフ投げの標的に向いているので、探すともなく求めて橋に来た。

ナイフ投げの男にとって、標的になる女性とは、プラトニック・ラブをつらぬく。

邪念が手元を狂わせる。

そして、ナイフの標的には、自分は、ツイテいると思わせる。

イヤリングを両手に握り、どちらの手にあるかを当てさせる。「ほら、キミはツイテいる」と言って、片方をポケットにしまって、ナイフの恐怖を取りのぞく。


二人は、結婚しない。

男はストイックに、女は自由に振る舞う。

女は、ウーバーイーツを待っているように、近づいてくる男をこばまなかった。

ヴァネサ・パラディ©︎pinterest.com

二人が、しばらく別れるときは、
女が聞く「キスしたい?握手したい?」。

「忘れたい」とナイフ投げの男が答える。
「忘れられないわよ」と女は言い残して去っていく。

二人は、モナコ、イタリアから、クルーズ船でナイフ芸の旅を続ける。

”キミは、ベッドは、どっちサイドに寝る?”と聞いてくれたのは、
彼が初めてだったからという理由で、結婚寸前のイタリア男を、
新婦から奪って、クルーズ船の救命ボートで逃げる。

ナイフ投げの男のクルーズ船はギリシャに着くが、男は、女を見失い、失業し、
トルコへたどり着いた。

男は、イスタンブールの橋の手すりから川面を眺めていると
「なかなか飛び降りないのね。津波でも待ってるの」と、女の声がした。


はかないから濃密になるのか(3m17s)


フレンチっぽいのと言ったら、コニャックとあんずリキュールのカクテルを、
バーアテンダントが仕立ててくれた。
french connection©︎the spruceeats


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