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「MOTHER3」にじわじわやられている話

こんにちは。MOTHER3、完走しました。完走して間もないですので、このなんとも言えぬ儚き感情を忘れないうちに吐き出させていただこうと思います。きっと忘れることはないだろうけど。

当然ながらネタバレのオンパレード記事となりますので、未プレイの方はブラウザバックしてNintendo Switch Onlineの追加パックに加入しましょう。え?Switchがない?じゃあゲーム屋さんや中古屋さんに走りましょう。それもダメと言うなら………糸井氏との対談も実現しているリゼ・ヘルエスタ皇女のYouTubeで実況を見るとか、いいと思います。


うーん、MOTHER3、なんとも重く辛い作品でした。前作のMOTHER2はアメリカ〜ンな明るい作品で、ダークな部分すらもポップに演出されている印象でしたが、今作は楽しいことやおもしろいことで笑っていても心の中ではひたすら雨が降り続けているかのような、ジメッ…としたせつなさがありました。それでも、ラストはどこか救われた気持ちもあって、素直にMOTHER3の世界を受け入れることができました。


悲劇の中で生き続けた少年

私は物語が動き出した第一章からすべてが終わる第八章まで、ずっとずっとクラウスのことを考えていました。

主人公リュカの双子の兄であるクラウスは、一章にてふたりの母ヒナワが悲惨な死を遂げた後、敵討ちのためにひとりで改造メカドラゴに立ち向かい、虚しく打ち破られてしまいます。彼は誰にも見つかることのできない場所に転落し、うつぶせのまま倒れ込んでいました。そう、きっとプレイヤーだけがその姿を見られたのは奇跡だったのだと思います。なぜなら彼は、その後すぐにポーキーに連れ去られてしまうから。

彼がポーキーに捕らえていたことが判明するのは随分先でした。というか、ハッキリ分かるのはラストの第八章でした。それまでの間、父であるフリントはずっと彼を探し続けていたのです。タツマイリの村は変わり果て、洗脳された住民は次々いなくなっていく。きっと、クラウスのことを思い出すこともなく。見ていて本当に辛かったです。ヒナワの最期も思い出すだけで辛いけど、彼女は立派な墓が建てられました。ひまわりいっぱいの、綺麗な綺麗なお墓でした。クラウスにはなにもありません。でもそれは当然ですよね、あれから彼を見た者はいないのだから。彼はきっとどこかで生きている…という希望があったのだから。

さて、「かめんのおとこ」という人物が中盤から登場しました。ひと目見た時に、こいつはもしかして…。と思いつつもなぜか確信できないまま、ひたすらストーリーを進めました。確信したくなかった、というのが正しいかもしれません。大切な片割れと敵対するなんてあり得ない。きっと、幸せだったあの頃が待ってるはずなんだ。なぜか、私はそう願うばかりでした。

しかしそんな願いとは裏腹に、状況はどんどん悪くなるばかり。ハリを抜くことができる選ばれた少年はリュカだけではありませんでした。リュカの前にたびたび立ち塞がる、かめんのおとこ。残虐非道な力の使い方で周囲を圧倒し、彼がそこにいるだけで悲しく冷たい空気に包まれます。私は心の中で、どれだけ否定しつつも、分かっていました。この子はクラウスなんだ。ヒナワとフリントのもとで、元気にすくすく育っていた、ごく普通のおとこのこ。リュカももしかしたら気付いていたかも分かりません。だってあまりにも背格好が似ているし、見覚えのある色のズボンを履いているし。

そうして迎えた第八章。MOTHER3で一番大好きな章です。この作品の真実、そして狂気がすべて詰まっている章だったなと感じます。ようやくポーキーの名が大々的に出てきました。やっぱりこいつが全ての元凶でした。タツマイリの村が壊れてしまったのも、リュカの家族がバラバラになってしまったのも…。運命とはいえ、マジプシーが消えてしまうきっかけにもなりました。マジプシーの運命もとにかくせつなかった。キャッチコピーである「奇妙で、おもしろい。そして、せつない。」の「せつない」がグッときた要素のひとつでしたね。いや…何なら全部持ち合わせてるな。すごいぞマジプシー。

こちらを一方的に貶しながら、相変わらず己の武勇伝を熱く語ってくるポーキー。そのなかで、「いのちなきむすこ」がハリを抜いてくれる、という発言がありました。やはりクラウスは、すでに命を落としていたんですね。ここでその事実を突きつけられ、クラウスを想い涙が止まらなくなりました。ポーキーが連れ去っていなければ、フリントがいつかクラウスのなきがらを見つけられたかもしれない。改造キマイラとして惨い悪事をさせられることもなく、双子の弟と死闘をすることなんてなかったかもしれない。ただただ安らかに眠れたはずなのに。少しでも早く、ヒナワの元に帰ることができたはずなのに。

1対1。熱い展開で採用されるイメージだけど、
この戦いはただただ虚しかった…

それでも、最後のたたかいが終わった後は、少し気持ちが軽くなっていました。クラウスの言葉を聞くことができたからです。ヒナワが遠くの空からたくさん声をかけてくれたように、クラウスも最後の力を振り絞って話してくれました。ありがとう。ごめんな。また会えるよな。そして、母さんのところに行くよ…と。ヒナワの「つかれたでしょう。もうお母さんのところにおいで」という言葉が、しっかりクラウスに届いていたのが分かります。

なんて、なんて辛くて悲しくて切ない会話なんだろう。それなのにどうしてこんなにもあたたかい家族の会話だと感じられるんだろう。胸が痛むのに痛くない、みたいなよく分からない矛盾した感覚。死を迎えたその先にも、幸せってあるのかな。フリントとリュカがそれを知るときまで、ヒナワとクラウスは笑顔で待っていてくれるかな。

この家族の幸せを、私はたぶん一生願い続けると思います。


MOTHER3には、本当にたくさんの魅力が詰まっています。シリーズ恒例の愉快な演出やら面白おかしいセリフ回しやら、それはもう数えきれないほど。まさに奇妙なキャラクターがいたり、あとはぐんまけんネタも多くて、糸井重里氏と同じく前橋で育った私は大喜びでした。

それでも、ごめんなさい。シリアスシーンの印象が強すぎて、この作品に関して今のところ私はクラウスのことしか考えられません。ヒナワもフリントも、そしてリュカも。みんな辛い中一生懸命でした。もちろん一緒に旅した仲間たちも、かけがえのない存在です。でもやっぱり………私にはいつまでもクラウスのことが頭から離れないのです。


そうそう、完全に余談ですが、フリントってクリント・イーストウッドから来てますよね?名前からも見た目からしても…。私、クリントが監督した映画が好きで、特に「グラン・トリノ」や「ミスティック・リバー」がお気に入りなんですが、MOTHER3のやる瀬なさは、これらの作品の後味に似ているようなそうでもないような感じがありました。うん…それだけです。

音楽に何度も何度も救われる

はい。音楽のことも書かせてください。ホンマにホンマに超最高でした。MOTHERシリーズらしさを上手に残しつつもMOTHER3独特の世界観を感じることができて、なんてすばらしい作りなんだろうと。クリア後も、サウンドプレイヤーで何度もBGMを聴き返しています。

作曲者は酒井省吾氏。私はカービィシリーズでお世話になっております(誰や)。お恥ずかしながらこのお方がまさかMOTHERシリーズに関わっていたとは全く知らず、先日配信されたMOTHER2の30周年記念ライブにて酒井さんがMOTHER3の作曲者として登場されていたのを見て、初めて知りました。あーーっ!!?酒井さんやん!!!ってなってました。

この作品の顔ともいえる楽曲はなんといっても「MOTHER3 愛のテーマ」。せつないシーンから街のBGMとしてのアレンジまで、どこで聴いても心地良い、美しいメロディが特徴です。この曲が聴けるたびに癒されていました。同時にヒナワのことも思い出します。そして涙が出るわけです。マジで泣いてしかいない。

戦闘BGMも前作に引き続き大量にありました。個人的には「こまったやつら」が好きです。はじめての戦闘時に聴ける曲ですが、一番印象に残るのはタネヒネリ島ですね。あやしいきのこを食べて幻覚を見ることになる、別名トラウマ島。愛する家族がみんな、リュカを責めてくる辛い島。私クラウスのことばかり書いてしまっていますけども、当然リュカのことも死ぬほど考えてます。この島での出来事は、本当にリュカにはしんどかったことでしょう。そんな中で聴ける「こまったやつら」は、ある意味精神安定剤でした。敵の姿が「ぶきみなわらい」になるという視覚的にキツいシーンで、逆にテンション高めな音楽が流れるってのが良いですよね。狂気といえば狂気だけど。

MOTHER2で大好きだったウィンターズの「スノーマン」。まさか、その曲が3でも聴けるなんて思ってなくて、雪山で流れた瞬間しばらく立ち止まってしまいました。1は未プレイなのですが、初期から3代にわたって使用されている楽曲とのこと。納得すぎますね。スノーマンを聴きながら、テングエティをひたすらレベル上げに使わせていただきました。こう、前作の要素がところどころで感じられると、今作の悲しみや辛さが少しやわらぐ気がします。かつて明るい未来を築いた者たちからの熱いエールのようにも感じます。ストーリーを重く受け止めすぎてしまい、なかなか前を向けなかった私にはとてもよいお薬でした。

「おサルの宅配便」も大好きです。ヨクバという他人の痛みを知らない男に何度もいじめられたおサルことサルサ。彼がヨクバの奴隷となりおつかいをさせられているときに流れる楽曲です。オシャレなのにとにかく切なくて、サルサを心から応援したくなります。

そのヨクバも、正体を知ったときは結構グッときました。なんとマジプシーの最後の1人だったんですね。「裏切り者がいる」という話が出ていたときは一体誰なんだろう?と、ヨクバのことなんて気にも留めていませんでした。そんなヨクバとの戦闘時に流れる「プライドかけたハッスル」というBGM。「いわれなきリベンジ」というめちゃくちゃカッコいいボス戦BGMの豪華Ver.となっており、めちゃくちゃ好きすぎます。かっこいいんだよなぁ…。強敵のBGMってなんでこんなに熱いんでしょうね。しかも、ヨクバは戦闘を重ねるごとにどんどん強くなっていて、ラストの2回くらいは何度もやり直しました。でも、この曲が聴けるのがうれしくて全然へこたれませんでした。それにしても強すぎて心は折れかけていましたが。折れなくてよかったです。

マジプシーが消えたあとの部屋でひとり感傷に浸る時間が結構好きだったんですが、最後のマジプシー部屋はなんとも言えない複雑な気持ちでした。(出た後ブタ野郎に「失礼なやつだな。」みたいなこと言われてイラッとしたし…。)


楽曲自体の話からは少し変わりますが、最初に書いたサウンドプレイヤーにはFAVORITEという機能があります。これが本当に便利すぎて実装してくださったスタッフの方には感謝感謝です。昔のゲームになればなるほどサントラの入手って難しくて、復刻版みたいなものが発売されていない限りほとんどがプレミア価格になってしまってるんですよね。なんならサントラ自体を発売していない作品も多くて、そうなると音楽を聴きたいときはこのようにゲーム内にあるサウンドテスト的なものに頼るしかないのです。もちろん全曲垂れ流すのも良いんですが、好きな曲だけピックアップして聴きたいときもありますよね。今作はそれができるのが素晴らしいです。登録できる曲数は限られていますが、いつでも好きな時にお気に入りの楽曲を再生できるのが嬉しいです。

これも好きあれも好き、と選んでいたら
ソッコーで枠が埋まってしまいました。

あと、戦闘システムにも音楽が関わっていて驚きました。物理攻撃の際、曲に合わせてAを押すと追撃できるというもので、RPGなのに音ゲーやってるみたいな感覚でとても楽しかったです。全然うまくできなかったけど…。「つよきもの」なんかは無理すぎて、連打でごまかしたりしていました。

酒井さん、本当に素晴らしい楽曲をたくさん聴かせてくださって、本当に本当にありがとうございます。

思い出のスクショ集

スクショ集と言っても、終盤になって慌ててスクショを残し始めたので、それまでのスクショはほとんどありません。あまりにも作品に入り込みすぎてしまい、スクショという文字が頭から抜けておりました。

今作はコーヒーブレイク的文章がたくさんありました。
「よく ここまで きたね。」
この一文だけで、胸が締め付けられます。
ニューポークシティの映画館でMOTHER2が上映されていました。
ポーキー…ネスのことが本当に好きなんだね。
久しぶりに好物の名を目にしました。
おかあさんがいなくなってしまったから、忘れていました。
怖すぎて思わず撮った一枚。
小さいトイレをたくさん見た後のクソデカトイレ。
巨像恐怖症にはこたえました。
MOTHER2のおもいでたち。
全部ポーキーがひとりで集めたんでしょうか。
最後の温泉。
音楽がいつもの癒し系ではなくなっていて、休まりませんでした。
これ、クリア後に糸井氏のインタビュー記事を読んで「マジか」となりラスボス前のセーブデータをロードして、フリントに何度も話しかけてみました。
最終局面でこんなの思いつかないよ。やられた。面白すぎる。


こうゲーム画面を見返していると、やっぱりドットの表現って最高だな〜と実感します。MOTHER3がドット作品でよかったです。幻の64版も少し気になるけど。


最後に。
MOTHER3で覚えた知識の中に「ドアノブ」というものがありました。物語の序盤でドアから外れてしまった、リュカの家のドアノブ。全てが終わった後のエンディングで、プレイヤーが拾います。最後にプレイヤーの手に渡ったことで、またMOTHER3の物語にいつでも戻ることができる。そう記事で読んで、ホロリときました。

たとえゲームの世界だとしても、彼らはゲームの中でしっかり生きている。だから、またみんなにいつでも会えるんです。もう一度あの物語を見届けるのは相当な勇気がいるけど、私もリュカやクラウスにもう一度会いたいです。結末を知った上で。ポーキーの末路も知った上でプレイしたら、また彼に対する考え方も変わるかもしれないし(変わらないかもしれないし…)。「ドアノブ」くんも立派な大役をリダに任されていたのですね。


以上です。
ありがとう、MOTHER3。
ありがとう、月日やハードをまたいでMOTHER3を作り上げてくれた、糸井重里さん、酒井省吾さん、スタッフのみなさま。

ありがとう………クラウス。


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