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「確認」とはなにか ──よりよい依頼のプロセスとスポットライト効果
今の会社に転職してすぐの頃、作った資料を携えて上司に「ご確認お願いします」と伝えたところ「確認って何ですか?」と問われて面食らったことがあります。皆さんなら何と答えるでしょうか。もちろん、日本語的な意味を問われていたのではありません。私が何をお願いしているのか、それについて自覚的であるかを問われています。
新卒社会人の皆さんはこれから上司や同僚、クライアントに「確認」をお願いすることが多々あるかと思うのですが、その意味や背景を考えるお手伝いになれば幸いです。
誰に向けた記事か
・社会人になりたてで、作成物レビューなどを依頼する立場にある方
・部下や後輩の依頼の仕方が良くならず困っている方
もちろん依頼というのにもいろいろあるので、今回は過去の私のように作成物のレビュー依頼を例とします。私自身はデザイナーですが、デザインに限らずパワポ資料や記事原稿など、様々なものに通底する話として一般化して書き残します。
「確認」 の意味 ━━何を確認しているのか
タイトルに戻りますが、「確認」ってなんでしょうか。
Weblioの「実用日本語表現辞典」には下記のような説明がありました。
「確認(かくにん)」とは、物事に対する認識・把握・理解あるいは意思疎通などについて、不確か・あやふや・曖昧な状態に留めずに、「このようである」と断定・断言できる程度に、はっきりさせることである。または、そのような動作・行動のことである。
なるほど。仕事において大切なことは色々ありますが、その一つには「合意形成」があります。登場人物の認識を擦り合わせ、誤解のないようにはっきりさせることです。このステップを踏まないと責任の所在が分からなくなったり、後で大きな手戻りが発生したりします。厄介ですね。
先の例では、不確かだったのは「私の認識」と「上司の認識」が合致しているかどうかです。さらにいえば、この作成物が「最終提出先のクライアントの期待」と合致しているかどうか、資料の位置づけが正しいかどうかも、私の依頼時点では不明確なことです。私が依頼していたことは上記をはっきりさせ、少なくともレビュー相手である上司との合意形成をすることでしたが、もちろん当時の私はそこまで思い至ってなかったのでした。
仕事において使われる「確認」にもいろいろあります。本当にあやふやなものについて意見を聞きたい「相談」や、間違いや問題がないことを認めてもらって判子が欲しいだけの「検証・承認」など。自分が何を求めているのか、他の言葉に変換してみると自覚しやすく、また伝わりやすくなります。
「ご確認お願いします」 の何が良くなかったのか
前述の内容を踏まえ、私が無意識に「ご確認お願いします」と言っていたのを正確に分解すると下記のようになります。
「ご確認お願いします」
= この資料を「私の認識」に基づいて作成しました。これが「あなたの認識」と合致しているかどうか、中身を見た上で教えてください。前提として「クライアントの期待」についての理解はこれこれであり、プロジェクトの状況は云々と解釈しており、したがってこの資料の位置づけは何某と考えています。「○○」の内容には確信を持っているので「承認」してほしいですが「△△」に関しては自信がなく、「相談」してご意見をいただきたいです。
まぁ、実際はここまでオーバーに言う必要もないのですけれど。私が問われ指摘されていたのは、すなわち以下のようなことです。
・「私の認識」がどのようなものか明らかにされていない
・求められていることが「相談」なのか「承認」なのかわからない
・そのうちどこが対象なのかもわからない
・したがって上司側としては何を依頼されているのかがわからない
端的に言えば言葉足らずだった、ということです。「依頼の仕方が感じ悪い」と受け取られてしまうという方も、概ね同根なのではないでしょうか。逆にレビューを依頼されたもののモヤモヤしているという上司側の方は、上記のようなことを相手に問うてみると何か打開の道が開けるかもしれません。
依頼の仕方
解としてはシンプルで、下記のようなことを依頼に添えるようにしましょう。
・資料の位置づけやクライアントの期待に対する自身の理解
・「相談」や「検証・承認」の対象箇所
・(一度提出し修正指摘を受けたものなら)前回からの差分と、その意図
少々オーバーに感じるくらいでいいです。前提として、レビューをする側というのは上の職位にいることが一般的で、すなわち時間があまりなく、多数の仕事を並列で処理している可能性が高いです。ですのでこれまでの議論や資料の状況などをすべて子細に把握している状態が維持されているとは限らないのです。
認知心理学的には「自分の知識状態を他者に対して過剰に投影してしまう傾向」をスポットライト効果(Spotlight effect)と呼ぶそうですね。「私が理解していることは相手も理解しているだろう」と思ってしまう傾向です(ありますよね、こういうこと)。今回の話に置き換えれば、自分が確信していることや悩んでいることについては説明せずとも上司も分かっているであろうと勝手に期待してしまい、結果的に言葉足らずな依頼になってしまうということです。多かれ少なかれ人間にはこうした性向があるので、自分から見て少々オーバーなくらい合意形成を図ることで逆にちょうどよく、依頼としては丁寧になります。
思ったようなフィードバックを上司や同僚から得られず困っているという方は、ぜひ一度ご自身のコミュニケーションの仕方を「確認」してみてください。
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