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裁判傍聴:覚醒剤取締法違反 その1 その2

覚醒剤所持で現行犯逮捕されていても、認めない被告は多い。
その場合、警察の関係者が召喚され証言台に立つことになる。

覚醒剤取締法違反(わ)263号 その1

被告は頑なに、覚醒剤は自分の物では無いし、使用もしていないと主張している裁判だ。
それというのも、執行猶予中のため、認めると堀の中に逆戻りなのだ。

前科23犯。
この数字に驚かれるだろうが、前科23犯で間違い無し!
かなりの、やらかしようである。
その内の10回以上、覚醒剤によって刑務所とシャバを出たり入ったりしている。
被告は、筋金入りのスーパージャンキーなのであ~る。

まず証言台に、被告を職務質問した自動車警ら隊が立つ。
検察から、なぜ被告に職務質問したかのを質問がされた。

警ら隊
『パトロール中に○○さん(被告)が、警察官を見て顔を反らし、挙動不審であったので職務質問をしました。
右腕に注射痕を見つけ、荷物検査をしたところ、被告のポケット内から覚醒剤を発見しました』

更に被告の尿検査をしたところ、覚醒剤の陽性反応(←お前、覚醒剤が体に残っとるで反応)が確認された。
それでも被告は覚醒剤使用を認めない。

次に、金属10年以上の科学捜査研究所に所属する、技術者も召喚し証言台に立った。

検察官
『覚醒剤の尿検査とは、どのような検査を行うのですか?』

技術者
『はい。3種類の検査を実施します。
1つ目は、ガスクロマトグラフィー。
2つ目は、薄層クロマトグラフィー。
3つ目は、ガスクロマトグラフィー質量分析法です。
3つの検査で、全て陽性反応が出て、初めて覚醒剤と認められ鑑定書に記入できるものです』

検察官
『3つの検査で、被告の尿検査の結果は、どうでしたか?』

技術者
『いずれも全て陽性反応でした』


さて、これを覆すために、被告の弁護人は言い掛かり上等で熱弁を振るう。

『パーキンソンの薬でも反応する不明瞭な検査方法であります!』

『被告は脳内出血摘出の手術をしているので、その影響で反応が出たのでは無いですか?』

『検査時に、前の人の残留反応が出たと考えられませんか?』
……等々。

国選弁護人ではあるが、若さもありゴリ押しする。
弁護人、熱いぜ!

しかーーし!
ことごとく、技術者の正当な回答に八つ裂きにされる。
熱いバトルではあるが、話が専門すぎて軽い睡魔が襲う。

正直、弁護人が頑張ったところで、証拠が揃い過ぎて言い逃れは難しい。


もう、認めちゃえよ


案の定、判決は執行猶予中だったこともあり、2年ほどの懲役になった。
これで前科24犯だ。
何処まで自己記録を延ばすことになるのやら。


このように、現行犯逮捕でも容疑を断固否認する被告もいれば
『もう2度と覚醒剤には手を出しません』と涙する被告もたくさん居る。
大概この2パターンなのだが、それとは別に少し変わった被告が居た。


覚醒剤取締法違反(わ)480号 その2

風貌はクシャおじさん。
前科9犯(詐欺・窃盗・覚醒剤等)。
生活保護を受け、1ヶ月で1~5万円を覚醒剤に使用する。
障害者認定1級でもあり、統合失調症で1ヶ月の入院歴あり。
昔から覚醒剤使用によって、幻覚や妄想などで統合失調症に類似した症状が知られており、これらの症状は覚醒剤精神病とも呼ばれている。

この、くしゃオジさん
初めて薬物を使用したのは、中学1年の時であった。
同級生のお姉さんから勧められたのが切っ掛けで、被告はスーパージャンキーにな~る。

幼少期では、親戚をたらい回しにされ、4才から精神分裂になったという。
4才で精神分裂の診断されることは、非常に珍しいのだが、ごく稀にある。

裁判官
『あなたは覚醒剤で2回服役してますよね。
京都の刑務所出所後、1ヵ月で薬をやってますよね』

被告
『おん。薬、やめる気なかった』

裁判官は被告の返答に不意打ちを食らわされ、慌てた口調で
『やめる気は無いのですか!?』

法廷内はザワつく

被告
『ん~……やめようとは思うけど……ん~……ん~……よ~分からん!』

裁判官は、少し前のめりになりながら
『やめないのですか?』

被告
やめようとは思わん!!


即答かーーい!
むしろ清々しいわ!


そしてこの被告は、また刑務所に逆戻りになったことは言うまでも無い。
くしゃオジさんとは、また会えそうな気がする。

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