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除雪の4トンダンプ編〜1〜

【出動ですよ】

「中型の免許持ってるから冬は除雪の会社でダンプだな」

ここは北の都、北海道の札幌市。
1年の三分の一は雪が積もっており、12月に入ると見慣れた街並みは粉砂糖を振り掛けたように真っ白になる。雪はどんどん札幌の街を飲み込んでいく。それでも毎日会社や学校に行かなければならないので車道の雪は建設機械で除雪される。除雪と言っても車を通行させるために左右に雪を押しのけ、とりあえず車や人が通行できるようにするだけで、道幅はどんどん狭くなっていく。3車線は2車線に、2車線は1車線に、1車線は…
もちろん排雪もしているが間に合っていないのが現状である。
除雪とは道などから雪をどかす作業で、排雪とはそのどかして溜まった雪を雪捨て場に捨てる事を言う。
雪が降り始める11月になると、待ってましたと言わんばかりに住民達は朝早くから通勤通学のためにスコップを握る。顔を合わせると
「また、この季節がきたねぇ。もう雪は見るのも嫌だよ。」
「そうですねぇ、今年は少ないといいなぁ」
などと言いながら、普通の生活をする為にせっせとスコップを振り続ける。みんな口々に雪に対する文句は出てくるが何故か雪のない所に引っ越しをする人は滅多にいない。
子供の頃はそんな大人達の会話を聞いて、だったら沖縄とか雪が降らない所に引っ越せばいいのに、なんで文句言いながら北海道に住んでるんだろう、と疑問に思っていた。
雪が嫌でという理由ではないけれど自分も18歳になってから東京や福岡に住んだ経験があり、雪がないって素晴らしいなぁと感じた時期もあった。だが結局は札幌に戻ってきた。
冬に雪が積もらない東京や福岡に住んでいたときには12月になっても、年が明けても、なお冬になった実感がなく、気づいたらまた夏がきた!という奇妙な感覚になった。
26歳で札幌に戻り、雪を久々に見た時は、数年ごしに冬がきた!と実感した。ワクワクすらしてしまった。
これがよく聞く北海道に住む理由、四季をはっきりと感じられるから。という事なんだろう。
そんな自分も1週間、雪が降り続けると自然と口から
「もう、雪はいいよ…」
と、こぼれ、嫌々スコップを握る。
37歳の初夏に2年間の東京単身赴任をやめ、札幌で就職することになった。
以前仕事でお世話になった人で、ずっと定期的に「元気かーい」「うまくやってるかい」と気にかけて電話をしてくれて東京の仕事の愚痴も快く聞いてくれていた。
だんだんその人と仕事がしたくなり、家族の事もコロナショックもあったのでテレビ業界をやめ、その人の紹介で同じ会社に就職をした。
橋梁補修という橋を直す仕事がメインの会社だが、まだ規模が小さく、橋梁補修をやっている会社に派遣される、いわゆるニンク貸しの会社だった。冬は仕事が薄いようで、自分が昔4トンダンプに乗っていたことから、冬は付き合いのある除雪の会社に行く事になった。
雪かき、除雪、排雪。
北海道では必須のはずのこの仕事。知っているつもりで知らない事がたくさんあり、北海道の冬の厳しさを改めて感じる事になった。
アスファルトでの4トンダンプ。雪道での乗用車。この二つはクリアしてるから大丈夫だろ。と鷹を括っていた。
初日から痛感することになる。雪道での4トンダンプは別次元の乗り物なんだ!と。

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