見出し画像

チケットノルマは必要か?

こんにちはQoiQoiの吉次匠生です。
今回は自分が役者と劇団の主宰の両方を経験した目線から、チケットノルマについて考えてみようと思います。
演劇関係者や役者を目指してる若い人たちの少しでも刺激になれば光栄です。
ではいきましょう!



ノルマは地獄だった。

僕は日本大学芸術学部演劇学科というところを卒業し、大学生の時に演劇を専門に学んできたため、学生の時から舞台に立つ経験ありました。
それはダンス、演劇様々なジャンルで、オーディションで掴み取ったものから、先輩のツテで出演させてもらったものもあります。
その中でいくつか公演によってチケットノルマがある公演がありました。

チケットノルマという言葉を聞きなれていない方のために、一応チケットノルマの説明をしておきたいと思います。

チケットノルマとは
・簡単に言えば出演者側が主宰者側に課せられたノルマのこと。

・だいたいチケット〜枚ぶんという形で課されることがあるが、〜円ぶんという単位で課されることもある。

・基本は売り捌けなければ余ったチケットを買い取りで罰金的な要素がある

↑簡単に言うとこんな感じです。どうでしょうか? そんなに高い出演料が出るわけでもない小劇場界において、結構厳しい制度だと思いませんか? 僕は学生で役者の時このチケットノルマが苦痛でノルマのない公演に出てたりしました。


主宰として見えてきたチケットノルマ

大学を卒業し主宰として公演を打つ立場になって、初めてチケットノルマを課す感覚がわかってきました。
だいたいお芝居は、劇場代や出演料、稽古場代、美術代などを諸々計算したら、小さな劇場でも、それなりの公演にしようとしたら最低50万前後はかかってくると思います。
50万円ぐらいで済めばまだいいですが、普通に100万を超えてくるお芝居はざらにあります。
事実、次僕らが来年3月に計画しているお芝居も100万以上の予算をかけてやっています。
その中で収入源はほぼチケット収入(物販とかもあるところもある)になります。
チケットが売れなければ、一回の公演で何十万という負債を抱えてしまうことになるので、キャストにチケットノルマを課して売り上げを確保したくなる気持ちはわかります。

死ぬ気でお客さんを呼んだ

僕らはビビリだったので役者に嫌われるのが嫌で、旗揚げ公演の時にチケットノルマを課しませんでした。
もちろん会場費から衣装代など、何から何まで実費で全て負担していたのでキャストにチケットを売ってほしかった気持ちはあります。

しかし、ビビってチケットノルマを貸さなかったので、確実な売り上げは見込めません。
僕らが取った方法は自力でチケットを売るということです。知り合いに、片っ端から声をかけて僕と相方の大橋2人でだいたい150人以上を呼びました。この時ほど死ぬ物狂いで知り合いに「観に来て!」と頼んだことはないでしょう。

しかし、死ぬ気でチケットを売ったから見えてきたものがあります。それは、お客様一人一人の価値です。

ここで見に来てくれた人に「本気で面白い」と思ってもらえないと、自分の信用も今後活動していく資金も全て失ってしまう。

このことが、作品を作るための熱量にもつながりました。



キャストにオファーする時に大事なのはノルマじゃない。

僕らは前回の経験を生かし一つ腹を括ったことがあります。

チケットは自分たちで捌く

自分たちの公演の資金源は最低限自分たちで確保して動く努力をしていこうと決めました。
なので、次回の公演のキャストの1人に出演交渉をする時に「チケットとかはそんなに気にしなくていいよ! お客様はこっちで呼ぶから!」と言いました。
その時は確実に「カッコつけてしまった」と後悔しました。内心はめちゃくちゃ呼んで欲しいと思っています。
しかし、それも含めて主宰である自分は責任を取るべきだと思ったのです。
キャストにチケットを売るのを義務付けるのではなく、キャストがチケットを売りたくなる作品を作る方が先ではないか? 人の協力を得て舞台を作ろうと思う僕らには、その人が立つ舞台を絶対面白くする責任があります。
キャストが「チケットを捌くのがキツイです」みたいな事を言ってる時点で、それは我々の敗北なのです。
必要だったのはチケットノルマではなく、公演を絶対成功させるという覚悟とそれに見合った行動です。

ノルマに苦戦してる役者の方へ

ここまで主宰目線で色々語ってきましたが、そろそろまとめに入りたいと思います。
世の中には、主宰をやってる人より役者単体でやってる人の方が多いでしょう。
僕は幸い両方携わることができているので、どちらの気持ちもわかります。ノルマに苦戦する気持ちもわかるし、僕自身の考えではチケットノルマには否定的です。
しかし、それでもノルマの壁に当たってしまった役者のあなたに少し考えて欲しいことがあります!

あなたがノルマに苦戦しているそのお芝居は、本当に心から人を呼びたい作品になってますか?
人が本気で人に声をかけたら、必ず何人かは集まると思うのです。もしそうでなければ、稽古の段階から少し自分の関わり方を見直してみてはどうでしょうか?
役者にとって本当に必要なことは、ノルマを捌くことではなく作品を面白くすることだと思います。
とここまで偉そうに言ってきた僕も、自分が作った作品が面白くなければ一気に信用を失います。ここまであえて自分を背水の陣に追い込んできました。しかし安心してください、僕は今制作している舞台を必ず面白いものにします。
あと少しで、情報も解禁しますのでみなさんチェックしておいてくれたらうれしいです。

ではまた!

QoiQoi 吉次匠生


QoiQoiプロフィール
2018年2月9日に大橋悠太と吉次匠生によって結成されたアートユニット。 当初はano(アノ)として活動していたが、2020年10月1日より団体名を改めQoiQoi(コイコイ)として新たな活動を始めている。

また、「想像力を創造する」を信念に演劇、映像、インスタレーションなどさざまな分野を飛び越え作品制作を行う。団体名のQoiQoiもquality of imaginationが由来である。 また、社会問題から個人の体験まで幅広い事象を可視化し、常に観客に「当事者性」を提示する作品作りが特徴である。

このnoteでは作品制作のことを中心に、被災地のことや原発のこと、その他考えたことなど、読んでくれている方へなるべく為になるような記事や僕らをより知っていただける記事を書いていくことを目指しています。
もしも気に入った記事や活動の参考にして頂けたら、スキやQoiQoiをフォローをしてもらえたら嬉しいです。
また、僕たちの活動を応援・サポートしてくれる方を募集しています。
サポートして頂いた資金は現地取材や稽古など全て作品作りに使用させていただきます。
今後とも我々QoiQoi(コイコイ)をよろしくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?