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生活者見立て通信 編集部こぼれ話~#003 コンプライアンスを重視する潮流に乗りつつも、「コンプラを“上手にあしらって楽しむ”」~

QOのプランナーがマーケティングに関わる方にお届けしている「生活者見立て通信」。

本連載は、生活者見立て通信編集部が、執筆に関わったプランナーへのインタビューを通じてこぼれ話を掘り下げる企画です。どのようにテーマを選び、見立てを練り上げたのか。どんな苦労や学びがあったのか―――レポートでは納めきれなかった裏話をざっくばらんに伺います。 

第三回のテーマは「コンプライアンスを重視する潮流に乗りつつも、「コンプラを“上手にあしらって楽しむ”」」。今回執筆した寺西さん、木村さんのお二人がインタビューに応えてくれました。

📝生活者見立て通信#003「コンプライアンスを重視する潮流に乗りつつも、「コンプラを“上手にあしらって楽しむ”」」_抜粋版資料(PDF)
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昭和復刻コンテンツの主人公に感じた「男らしさ」


――今回のテーマに着目したきっかけを教えてください。

木村:寺西さんと1on1で次の見立て通信のテーマを相談していた時に、「男らしさ」が気になっているという話をしました。というのも、NETFLIXで流行っていた『シティーハンター』の実写映画を見て「面白いな」と感じた主人公が、昔ながらのいわゆる「男らしい」キャラクターだったんです。

普段のちょっとしたコミュニケーションでも「男らしい・女らしい」と言うこと自体が憚られる世の中なのに「なぜこのキャラクターに魅力を感じて、作品を好意的に受け取ったんだろう?」と自分のことながら不思議で。そこに何か逆張りのニーズがあるのではないかと考えました。もちろん、昭和のコンテンツを令和に生きる人々にも受け入れられるようにカスタムした部分もありつつ、やっぱり根底にある「男らしさ」を求める生活者は多いのではないかなと。

イメージ写真(出典:UnsplashThomas Tuckerが撮影した写真)


寺西:
私が担当していたクライアントさんの案件で、ジェンダーに関するテーマを深堀っていた時期と重なったこともあって、木村さんの話はすごく共感できたんですよね。実は生活者の意識の中に、ストッパーがかかっている「男らしさ・女らしさ」の不足や渇望みたいな心理があるのではと。そこで、「男らしさ・女らしさへの回帰」みたいな方向に自然と話が膨らんでいきました。


――私は昭和世代ど真ん中なんですけど、当時はシティーハンターに「男らしさ」を全く感じなかった気がして。そのアンバランスさも面白いですね。

木村:そうですね(笑)。世の中的に「中性化」というか、性別を意識することが少なくなっているので、「男らしさ」が新鮮に感じられたのかもしれません。

寺西:性別の話でいうと、SNS上で専業主婦に対してワーママが攻撃するような構図も目立っていて、女の敵は女みたいな風潮もあるように思います。他方、LGBTQへの注目が高まり、「男らしくあれ!」と全員に強制することへの問題意識が強まるにつれ、自分らしさの一環として、男らしさを出すことも含めて一律でタブーになっているように感じ、個人的に違和感を感じていました。また、「ジェンダーレス〇〇」を謳うサービスや商品が増えていて、「性」の区分を出さないトレンドの高まりも感じていました。


コンプライアンス軽視ではなく「あしらう」というニュアンス


木村:
そうやってお互いに抱えていた違和感をたどる中で、「コンプライアンス」のキーワードに行き着いた気がします。

寺西:そうそう。ちょうど都知事選で不適切な選挙ポスターが貼り出されて荒れたことが連日ニュースになったり、「産休をいただきます」というメッセージをプリントしたクッキーがSNSで炎上したりしていた時期も重なって。事例をあげるのには事欠きませんでしたね。

木村:世の中でなんとなく「こうあるべき」とされていることが「コンプライアンス」だとした時に、いずれの事例にも共通するのは、コンプライアンスに対する疲れだったり、スカッとしたい心理ではないかという結論に至りました。


――見立てにまとめる上で苦労したことはありましたか。

木村:コンプラを無視したいわけではなく、コンプラを分かったうえで楽しむという微妙なニュアンスを誤解なく伝えたかったので、言葉選びは議論に議論を重ねてこだわりました。その中で、「あしらう」「一本取る」「乗りこなす」等の表現が生まれました。

寺西:本当にバランス感覚が難しかったです。コンプライアンスを守るべきだけど、ちょっと面倒に感じるジレンマについて、どんな方向性を提示できると生活者の共感を得られる表現になるのかなと。だいぶ迷いもしましたが、最後は納得感のある表現に落とせたのは良かったです。

 木村:見立てができた後の最終チェックとして「見立て通りに自分も動くかどうか」って、大事な観点だと思っているんですが、ふとスマホのカメラロールを振り返った時に「逆写真詐欺」で有名なコメダ珈琲に行った時の写真が出てきて。自分がメニュー表とは裏腹な大きな食べ物を頼んで喜んでいたことを思い出しました。これも「商品の写真と実物に差があってはいけない」というコンプライアンスをうまくあしらった事例ですよね。行動と紐づいた納得がいく見立てになったかなと自負しています。


感じた違和感を仲間と共有し、多面的にとらえ直す

イメージ写真(担当者撮影)


――今回のきっかけは映画でしたが、仕事で見立てをつくるために趣味や余暇を楽しむ中で意識していることがあるんでしょうか。

木村:見立てにしよう!と常に意識できているわけではないのですが、今回のシティーハンターの場合は「面白いけど、変だな?」とメモを残していました。寺西さんと議論させてもらって初めて気づいたことが多く、あくまでも私は材料を持ち寄った感覚でした。ただ、チームで話し合う時には、普段は言わないくらい詳細に自分が感じた違和感を伝えるようにしています。会話を通して、どこが共感できて、どこが独りよがりなのかが、わかってくるので。

今回のスタート地点はたまたま映画でしたが、実は自分の生活と繋がってくる部分が多かったので、生活の中で罪悪感を感じることや、ついやってしまう習慣をスルーしないようにするのは次に活かしたい学びです。

寺西:違和感を持ち込む話、私もすごくよく分かります。様々な事象を見た上で「こういう風に思うかも」ぐらいで他の人とも話してみるのって大事だなと。セーフかアウトか、面白い・つまらないかみたいな感覚が違うところが必ず出てくる。それは多分、炎上するかしないかの線引きに近いものもありますよね。別にどっちが正解とかじゃなくて、ある価値観に対するいろいろな見方を共有できたのは、すごい見立ての幅を広げることにつながった気がしました。


【生活者見立て通信とは】

QOのプランナーが、定期発行しているレポート「生活者見立て通信」では、世の中の流行やトレンドに関する具体的な「事例・事象」を数多く紹介し、背景にあるインサイトについて独自の視点で「見立て」て、日々のマーケティング活動に活かす「ツボ」を提案しています。

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*担当者:寺西 成美(Narumi Teranishi)、木村 なみ(Nami Kimura)


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