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「もっと時間があればなぁ」と一年を振り返ったあなたに送る、有効な時間を10倍にする方法。

君が触れたのは君と成功との間にあった無限だよ。

五条先生からの改変引用

はじめまして齋藤です。タイトルはほぼ釣りですが、テクノロジーを活用して、業務効率アップ!生産性の向上!とはあまりいいたくないタイプなので、あえて「削減」ではなく「増加」の目線で語りたいです。

私は5年前まで、終電までオフィスで働くごくごく普通のブラックビジネスパーソンでした。しかし、現在はGoodpatchにおいてリモートワークを中心とした事業を運営しながら、京都の大学で芸術教育のデジタル化を考え、新潟で公務員として働き、燕三条のものづくり企業で顧問をし、自分の会社を立ち上げて、生まれたばかりの娘の育児もしています。

今までの仕事人生で、「最近ちょっと暇かも〜」と思ったことは一度もなく、常に「今が一番忙しい」と思いながら生きているのですが、なぜかなんとかなっているので、特に激変したここ数年での変化についてまとめてみようと思いました。ちなみに今も一番忙しいし、全てが間に合っていません。無限地獄。しかし自分が一番生産性が高いのはだらだらした時間であると言う確信があります。もっとだらだらしたい。

この記事は「フルリモートデザインチーム Goodpatch Anywhere Advent Calendar 2023」最終日の記事です。

今年のアドベントカレンダーはそれぞれの投稿に色々な闇が垣間見えるのですごくいいです。無責任な楽観を信じていない、陰キャ率高めなのにチームの未来を頑張ってトライしているみんなが大好きです。

通勤時間を捧げることで年間480時間を獲得

もはや言うまでもないことですが、リモートワークが実現すると通勤時間ってなくせるんですね。僕たちはコロナ以前より完全リモートワークでも、新たにお付き合いするクライアントと共に新規事業開発にも対応できる体制を実現してきました。新しいものを皆で生み出すためのプロジェクト運営だけでなく、採用・人事・労務の事務部門から作業環境の構築まで対応できているので、デジタル分野の仕事であれば大抵のことはリモート化することができます。

リモートワーク化を実現した身からすると、もはや状況は不可逆です。いざ出社するとなると1時間の会議のために往復で(外出準備諸々を入れればもっと増えますが)2時間程度の「作業もできず、連絡も取れない時間」が発生しますし、オフィスに行って会議する場所を見つけるのも至難の業です。なにより、いつもはMTGの隙間の2分でダッシュでトイレに行けていたのが、トイレが空いてなかったりします。みんなトイレに行きたい時間は集中するのに、物理世界でピーク需要に合わせてトイレを増やすことは難しいんですね。

ということで、僕個人が通勤を生贄に捧げて錬成した時間はざっくりと以下の通り。

1日の往復通勤時間 = 2時間
ひと月あたりの稼働日数 20日 * 12ヶ月

一年間に増やせた有効時間 = 480時間 

どうでしょう、自分のチームが5人いるとして、それぞれ年間480時間もの工数、合計2400時間を「歩いたり立ったりすること」に費やしてくださいとあなたは指示するでしょうか?オフィスで仕事をすることによる付加価値は本当にその工数に値するのでしょうか?最適な時間でトイレに行けないストレスを打ち消すほどの付加価値とはなんでしょうか?(知らん

出張の移動時間を有効化し、年間120時間を獲得

前述のリモートワーク化そもそも出張の必要性自体がほぼ消滅しています。しかしたまには顔を見たいし、お酒も飲みたい。ロボットと働いているわけではないですし、人類は相手のシチュエーションを完璧に想像しながら完璧にMECEな指示をすることも、それを完全に理解することもできません。コミュニケーションによってそれぞれが助け合えるようになるために、オンラインだろうがオフラインだろうが、さまざまな手段で「雑談」を行なっていく必要もあるわけです。もちろんそれ以外にも直接会うべき状況は多々あります。当然ですがリアルのコミュニケーションなどを全て否定するわけでは全然ないですし、引きこもり組織を作っている身としては、そのありがたみをより尊いものとして感じています。

こちらも言わずもがなですが、新幹線や飛行機でもう普通に仕事できますよね。十分な性能のラップトップが十分な価格帯で普及して、オフィス環境でデスクトップを選択する理由もだいぶなくなってきました。個人的にはマルチモニター環境が必須だと考えているので、これまではiPadを外部ディスプレイとして持ち歩いていたのですが、最近はXrealシリーズがあればそんなものは不要になりました。

サングラスの中に3枚の画面を召喚することができますし、ディスプレイ一枚買うくらいのお値段で購入できます。VR/ARデバイスではなく、拡張ディスプレイとして認知することをお勧めします。リモートワーカーとしては覗き込みインシデントなど、セキュリティに敏感になる必要もありますので、飛行機の照明が暗くなる中、神々しく輝く機密情報なんて許容できないわけです。Xrealをかけて、画面は真っ暗にすることで、セキュアかつバッテリー消費も抑えられます。

グラサンPCは不審者だと言われることにはもはや飽き飽きですが、セキュリティリスクと持ち運び重量や価格を鑑みたときに、代替ソリューションは現時点で存在しないのです。度付きレンズを作成して、超近眼でも使えていますし、何より手元が普通に見えるので、普段のキーボードをそのまま使えるのが感動です(完全なゴーグルタイプでは文字入力が難しいのです)。

これで出張の高速移動時間を有効化することができました。

出張1回の往復高速移動時間 = 5時間(東京↔︎関西圏を中央値に想定)
ひと月あたりの出張日数 2日 * 12ヶ月

一年間に増やせた有効時間 = 120時間 

これが実現すると、出張で向かう先との距離が無視できるようになります。最寄りの新幹線駅や空港まで移動できれば、仕事していれば目的地です。ちょっと集中して、顔を上げたら到着です。

予定調整をなくし、年間120時間

会議の予定を決める時間、これもそれ自体が価値を生み出すわけではないのでゼロにしましょう。プロジェクトとして継続的に動くものであればなるべく定例会議にして時間を固定するのがお勧めです。会議終了間際に次の会議の予定を決めることに手間取ってしまい、次の会議に5分遅れるという玉突き現象は会議参加者✖️次の会議参加者の時間を奪う行為なので、絶対に起こさないようにしましょう。

また、会議に参加する基準がなんとなくでも共有されていれば、周りの人にはGoogleカレンダーの予定を共有したり、予約用のURLを発行しておくことをお勧めします。

予定調整時点で、会議に参加するかどうかの判断や意志はあまり重要でないと思います。無駄だと思ったら「次の回には参加しません、呼ばないでください」とお願いをすれば良いのです。ここに判断を挟む状況を保持しておくと、永続的に全ての予定調整を自分の手で行う状況から抜けられません。

自分が予定を設定する場合にはSpirなどのツールを利用しましょう。参加者それぞれと連絡をとって、全員の空き時間をパズルするような仕事は人間よりもコンピューターが得意です。こうしたツールを使える状態にするためにもチーム内でカレンダー設定する時のルールは確認しておくと非常にスムーズです。

また、複数のカレンダーを利用している方にはTimelabというツールでカレンダーを同期しておくことをお勧めします。メインで使っているカレンダーに対して、サブのカレンダーから予定詳細を伏せて自動コピーしてくれるようになります。副業勢としては必須ツールです。

本記事は個人的に協力する「タイムラボアドベントカレンダー」の記事もかねています。

Timelab

こうした努力で1日30分くらいの時間を有効化できるようになります。

MTG終わりに次の予定を調整する時間(1日あたり) = 0.5時間
ひと月あたりの稼働日数 20日 * 12ヶ月

一年間に増やせた有効時間 = 120時間 

送迎の待ち時間を有効化し、年間120時間

ここからはちょっと特殊な自覚があります。僕はハイエースをオフィス化しているので外でもフル環境で仕事をすることができます。すると、移動先での待ち時間が、普段と同様に仕事ができる有効時間に生まれ変わります。

今年は子供が生まれたところなので現在は休職していますが、妻は出勤するタイプのお仕事をしていますので、できる限り朝は送っていって、帰りもお迎えに行っていました。朝は送り届けるだけなのでロスはありませんが、帰りはなかなか出てくる時間が読めません。そのため、早めに出て駐車場で待機します。これまでは片道30分で移動して、平均30分待機、トータルで1.5時間が必要でした。移動時間だけ確保できればいいので、一回あたり1時間が浮きます。待ち時間の長さが問題にならなくなるため、早めに出発して待機場所でMTGに出るなども可能になり、自由度がかなり高まります。

この自由度や、妻との良好な関係性維持による効果も考慮に入れると結構なインパクトなのですが、有効化された時間だけで考えても以下の通りです。

一回のお迎えで有効化できた時間 = 0.5時間
ひと月あたりのお迎え日数 10日 * 12ヶ月

一年間に増やせた有効時間 = 60時間 

そのほかの大声で言うことが憚られるかもしれない些細なこと

ここまでの項目で僕が年間で生み出すことができた時間がすでに780時間となりました。まるまる32.5日分です、ひと月以上の時間が生まれています。

さらに、テクノロジーや考え方で有効化できる時間は色々と挙げられます。

アピールや報告のためだけの資料作り : 月10時間 → 年間120時間
マニュアルを見返したり、やり方を思い出すためにかける時間 : 1日30分 → 120時間
時間をかけるほどヘイトを産む評価関連業務 : 半期に80時間 → 年間160時間
直接聞けば5分のことを聞かないで無駄になった作業 : 1日1時間 → 年間240時間
やってみなければわからない事象を上司に証明するための調査や資料作成 : 1日1時間 → 年間240時間
ピラミッド型の集権構造を維持するための報連相にかける時間 : 1日1時間 → 年間240時間
事前に完全な見極めができないはずなのに全力で行いすぎる採用にかける時間 : 1日3時間 → 年間720時間
ユーザーのことを何も理解していないのに一発逆転で成功を狙う新規事業 : 1日8時間 → 年間1920時間

無根拠のざっくり計算ですが、さらに3760時間プラスされて4540時間です。繰り返しますが無根拠にも程がある試算ですし、MECEでもないのでもはや意味はありませんが、単純計算で189日分の時間です。気を抜くとあっという間に、時間が消滅してしまうという感覚だけ得ていただければと思います。

僕のヒーロー、ダグラス・エンゲルバート御大は25歳のときに残り時間に気がついてしまったようです。

エンゲルバートは自分が人生であとどれだけ働くのかを計算し、およそ五百五十万分という時間をはじきだした。この時間を投資するだけの価値があるような、自分が本当にやりたいと思うことは何だろう? 一九五〇年十二月、当時二十五歳のエンゲルバートは、新しい人生の目標にどんなものを設定すべきか考え始めた。

新・思考のための道具 知性を拡張するためのテクノロジー―その歴史と未来

ちなみに、これらの活動で生み出された時間を企業の利用できる労働時間として考えることは、生み出される時間の量的にほぼ違法です。ある程度の効果以上を得たいのであれば、労働時間の上限に抵触しないように経営層に入れるか、指揮命令を外して業務委託として扱うなどの工夫(?)が必要です。

個人として見たときには、不要な時間消費をやめることで、集中モードではない脳の時間を確保することができます。クリエイティブ(って表現は嫌いですが)な脳を育て、維持するためにはこのような時間を設けることが科学的にも正しいアプローチとなります。うまく使いましょう。

また、経営層や上司は自分の発する「本当に些細な一言」でこれらの時間の有効利用の可能性を否定し、組織の無駄時間を大量に生み出すことを認識しなければいけません。「無駄な時間を1分たりとも生み出さないぞ」という強い覚悟が必要です。あなたが気軽に発した、本当に些細なその一言が、組織の中で連鎖し、指数関数的に消費時間が増加し、企業の競争力を極小化します。「ちゃんとしろよ」で正当化されてしまいがちな「部下の時間」ですが、本当にその指示は有効だったのでしょうか。ダニング=クルーガー効果という必中の領域展開がなされている世界において、「自分だけはそんな指示をしないから絶対に大丈夫」と確信できるでしょうか?

我々は閉鎖された環境で自分たちだけで企業活動をしているのではないため、こういったアプローチやAIをフル活用して当社比3倍くらい(当然もっとエグいプレイヤーは現れる可能性がある)の効率を叩き出すような競合がいつか現れると思ってビクビクと生きていきましょう。

これからは現代はAIや自動化の時代。新しい技術を取り入れることで、私たちはさらに多くの時間を生み出し、本当に大切なことに集中できるようになります。産業革命やインターネットレベルの生産性革命が起こる時代においては、変化に強い米国市場がいつも一人勝ちしていきます。一方で変化に弱いと言われる私たちですが、真にファンダメンタルズが強い企業や組織に生まれ変わるための最後のチャンスかもしれません。今この瞬間の自分個人の行動や考え方が、組織の成果に直結した効果をもたらします。人類をエンパワメントするコンピューティングの革命ってそういうものだと思います。


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