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人はいかにして世界を認知するのか? 私の探究の読書リスト

科学的アプローチによって分かった事実をまとめたもの、それらをわかりやすく解釈しまとめたもの、著者自身の人生哲学をまとめたものまで幅広く並べました。


神経科学から人を知る

※ この分野の本は主に↑を参考にしながら読み進めています。

進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線 (ブルーバックス) | 池谷 裕二
単純な脳、複雑な「私」 (ブルーバックス) | 池谷 裕二

2冊とも高校生数名に対して行った講義録です。
その形式ゆえに読み進めやすいです。私たちの脳、神経の動作から、意識、感情、心についての展開も刺激的です。哲学的な問いにまで踏み込みながら読み手に考えさせるような対話となっているので、事実を淡々と知りたい目的にはそぐわないかもしれませんが、私は一気に読み進めてしまうほど好奇心を刺激されました。

脳は世界をどう見ているのか: 知能の謎を解く「1000の脳」理論 | ジェフ・ホーキンス, Jeff Hawkins, 大田直子

一つひとつの神経の活動はかなり分かってきていますが、それらが相互にどう影響を与え合って動作しているかという統合的な理論は、今まさに研究・理論構築が進んでいます。その統合的な理論についての本です。
機械学習を仕事の軸にしている私にとっては、最近のLLMs等を巡る技術的背景と通ずるところを感じ、腑に落ちながら一気に読み進めてしまうようなエキサイティングな本でした。

最高の脳で働く方法 Your Brain at Work | デイビッド・ロック

実際の仕事の場面を思わせる具体的シーンを土台に、神経科学でわかっていることを取り入れるとどのように改善できるかを示してくれます。科学的に判明していることから我々の認知への対応づけがやや飛躍的な気もしますが、こういうシーンあるよなと感じ胃がキリリとする感覚は確かです。

認知科学方面から人を知る

私たちはどう学んでいるのか: 創発から見る認知の変化 (ちくまプリマー新書 403) | 鈴木 宏

能力と知識という定義自体への踏み込みから始まり、上達・発達・ひらめきとは何か、どのように行われるのかということに迫ります。学ぶ中で認識の上でどのようなことが起きているかを考えさせてくれます。

学びとは何か――〈探究人〉になるために (岩波新書) | 今井 むつみ

学ぶとはどういうことかをメタに考えさせてくれる本です。第一言語の習得がどうして自然と行われるのかという話を主軸に、主体的に学び探究するようになってみませんか?と投げかけられているように感じました。

現代の一人の視点からじっくり人を知る

世界一流エンジニアの思考法 | 牛尾 剛

ソフトウェアエンジニアの界隈で最近話題になった本です。ベテランは事実の断片を大量に持っているからベテランなのでなく、より良い思考法を持っているからこそ限られたリソースで大きな成果をあげるのだと改めて実感させられます。
今も度々耳にする、Kent Beck の "I'm not a great programmer. I'm just a good programmer with great habits." という言葉を思い出しました。

熟達論:人はいつまでも学び、成長できる | 為末 大

走る哲学者とも呼ばれる陸上競技者の為末大氏による、現代版の五輪書を目指した本です。実践的でありながらも枝葉末節をそぎ落とし、人が何かに熟達する過程をギュッとまとめ上げた秀逸なモデル化だと感じました。個人競技や完全情報ゲーム以外では、これに輪をかけて認知バイアスに向き合う社会的活動に頭を巡らせる必要があるのでしょう。
本の最後に、人が夢中になる様を子供が砂浜で砂を積み上げる短い情景描写で示した部分で、私は感極まって泣いてしまいました。ああ何かに熱中し熟達する様のなんと尊いことよ。

長い時を経てもなお語り継がれている思想書から人を知る

全文完全対照版 論語コンプリート: 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文 : 野中 根太郎

渋沢栄一が生涯バイブルとして扱っていたと言われる儒教の経書の一つです。対話の断片集であり当時と現在のコンテクストをよく考えながら読む必要がありますが、この先もことあるごとに胸に手を当てて自分に問い掛けたいような考えさせるフレーズが散りばめられています。徳を積みたいです。

NHK「100分de名著」ブックス パスカル パンセ | 鹿島 茂

原著を読もうと思いましたが、分厚さとキリスト教・神学の知識不足から、ひとまず解説書を読むことにしました。
NHKの100分de名著シリーズ(もちろん番組も)は、その本だけでなく、書かれた時代背景や前後の影響、現在においてどう受け止められるかを話してくれるのが好きです。100分で分かったような気分になるのでなく、その本を多角的に見ることができ、原著を手に取ろうという思いを作り上げてくれます。

暇と退屈の倫理学 (新潮文庫) | 國分 功一郎

これまでの思想家(パンセも含む)の考えを引用しながら、人類史を見たときに暇はいつ生まれてきたのか、退屈を覚えるとはそもそもどういうことかを紐解きます。人が定住を始め退屈を感じはじめた時を境とし、そこから文明が一気に花ひらいたという定住革命を取り上げているのが面白いです。暇ができ退屈を覚え始めた人々が何をしてきたのかを考えてみることは、そのまま自分にも跳ね返ってきます。

心理学方面から人を知る

THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す (単行本) | アダム・グラント, 楠木 建

アダム・グラントの本はどれも好きです。時にユーモアを交えながら、軽快にロジカルに問題を解きほぐしていく様に惚れ惚れします。思い込みに無自覚な自分自身や、強い相対する信念を持った相手と、より良い世界を築き上げていくためのヒントがもらえるでしょう。

ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ文庫 NF 410) : ダニエル・カーネマン, 村井章子

2002年にノーベル経済学賞を受賞した著者による行動経済学の本です。人々は必ずしも常に合理的な振る舞いをするわけではないということがさまざまな実験を通じて示されています。心理学においてはさまざまな○○効果などと銘打たれたものがいくつか展開されていますが、改めて検証されたものの中では再現しないものや効果がさほど強くなかったと判明しているものも多く問題視されています。全てを丸呑みにしてテクニックにしようとするよりは、人間は非合理な選択を簡単にしてしまうということ自体を感じ取るくらいがちょうど良いのかもしれません。
そういう趣旨に照らし合わせるなら、人間関係の原則にあたるようなものを記した古典「人を動かす」が短くまとまっており手に取りやすいです。

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