富士山はご来光登山こそ間違いの基

 富士山の弾丸登山がいろいろと非難されている。弾丸登山とは、山頂でご来光を見るために夜に五合目を出発し、山小屋に泊まらず山頂まで登りそのまま降りてくる登山のことらしい。確かにこの登り方にはかなり無理があり、体調を崩す人が続出しているようだ。しかしそれ以外にも、夕刻8合目、9合目の小屋に着いて仮眠し、真夜中に小尾を出発して頂上でご来光を見るという、現在、主流となっている登り方自体もおかしいのではないだろうか。
 
 富士登山のかなりの部分がツアー会社の募集ツアーで行われており、登山初心者も気楽に参加できるようになっている。確かに富士山は標高も高いし岩場だらけで簡単な山とはいえないにしても、鎖場があるわけでもなく、急登もなく藪や迷いやすいところもないので、慎重な計画でガイドが付けば初心者でも登れる山だと思うし、実際に他の高山より初心者が多いようだ。しかし、初心者には夜間登って頂上でご来光を見る登り方のメリット・デメリットを比較判断することが難しく、主流になっている登り方を当たり前のように受け入れるしかない。しかし、頂上でのご来光というメリットの反面、デメリットが大きすぎると思われる。それはまず第一に夜間登山自体の問題で、暗い中で足元も見えにくく、周りの景色も楽しめない状態で登らなければならない。それと関連して、仮眠しかしていないので当然ながら睡眠不足の状態での登山である。早めに山小屋に着いて仮眠と言っても、夜中の1時ころの出発であれば、ほとんど眠れない人も多いと思われる。したがって登山で最も重視されるべき体調が万全とはならないのである。
 
 私の、富士山は一度だけだが何十回も日本アルプスなどに登った経験から言えば、やはり登山の基本はまず体調管理であり、ボオーッとした頭では楽しさも間違いなく半減する。また、事故が起こり易いのも確かであろう。頂上に山小屋が有る山では何度もご来光を見てその素晴らしさも知っているつもりだが、何がなんでもご来光、というほど登山の第一目的にする意味は全くないと思われる。真っ暗い山道を延々とライトの列が動いている富士山の光景は、やはりちょっと異常に思える。なぜ富士山だけ他の山と比べてご来光登山にこだわるのだろうか。

 改めて現在のツアー登山を考えてみると、ツアー会社としては、1日目は短い行程で、早めに小屋に着いて、2日目はちょっと長い行程でも時間がたっぷりあるので、計画に余裕が持てるということも有って、この行程を中心にしていると思われる。またもちろん「頂上でのご来光」という呼び込み文句も使える。繰り返すが、何度も登山をして、夜間登山と他の登り方の比較ができる人が夜間登山を選ぶのならそれはそれで良いが、富士登山=ご来光登山というのが当たり前のようになっていて、多くの人が良くわからずそういうものだと思って参加している現状はもっと問題にすべきであろう。それに富士山上部ははげ山なので、途中の山小屋からでも十分ご来光は楽しめるのである。私は7合目の小屋で朝食前にすっきりした頭で見ることができた。

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