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ショートストーリーに挑戦2

「白日夢」


先日実家にて妹の由美子に
昔こんな事があってねぇ…と
実家で母のエピソードを聞いた


当時は会社勤めをしていて
その場に居なかったから知る由もなく
生まれて初めて聞く話しだった


それってあなたが大学生の頃じゃない?


そうそう…と由美子は話を続ける

どこから話そうかしら?
由美子がそう呟いて
インターフォンへ目を向けた

どこから話そう…か…な
もう一度由美子は呟いて
私の方へ顔を向けて話し始める

あれは25年くらい前の事
ある日お姉ちゃんが仕事で留守の時
私は学校がお休みで家にいたの

急なお客さんが来たのよね…


応対している母を後ろから
そっと耳を澄ます由美子

すると近所では聞きなれない声
インターフォンのスピーカーからの印象では
上品そうな 落ち着いた女性の声だ

まず母は
「どのようなご用件ですか?」と聞いた

すると
⬜︎⬜︎と申します少しの時間宜しいでしょうか?


母は強めな口調で
販売や営業はお断りしているんです…


声の主はは臆さず 丁寧な言い回しで

急な訪問で申し訳ありません
ごもっともでございます

実は◯◯様に ご相談しました時
こちら様の事を伺い お願いしたい事が
ありまして やって参りました

面倒見の良い母の事だ 誰かの紹介で
ここへ来たのなら不義理な事はできないと
思ったようで
◯◯さんと言う人の事を 多分町会の
あの人…と勝手に勘違いしたのかもしれない


普段の母は押し売りには
断固拒否反応を示す人だった
早々にインターフォンを切る行動に
出るはずだからだ

この時は何故か信用して
玄関まで出て扉を開けた

確かに上品そうなご婦人
そこで玄関先での立ち話となる

由美子は
好奇心で母が玄関を開ける前に
キッチンまで移動し姿を隠した
側に身を隠し さらに詳しく話を
聞こうとしたらしい


その女性改めて名前を名乗った後
こう続けたそう

改めまして私は⬜︎⬜︎と申します

東京某所で占いを生業に
しているものでございます
私には跡取りの息子がおりまして 
嫁を探しております身

先日占いをしてみたところ
我が家から指し示す方角があり 

さらに詳しく占うと…それがこちらの界隈で 
年頃の娘を探すようにと出まして 

そこで友人を通じて◯◯様に
ご相談させて頂きました 
そうしましたら年頃のお嬢様が
2人いらっしゃると言うではありませんか


そこで…本題ですが
こちらのお宅のお嬢さんを
我が息子の嫁に頂けませんか?

「ぶっ⁉️」

ここまで聞いて
私は吹いた
何これ…まるで漫画じゃん


この後母親はどんな顔をしていたのだろうか?
どんな台詞で追い払ったのでのか
頭の中はぐるぐる駆け巡る

けれど女性が帰るまでの肝心な
その辺りのやり取りは曖昧だ


ちょっと〜由美子
何それ 怪しいじゃん 駄目だよ嘘は

由美子は口をへの字に曲げて
強く言い返す

ううん‼️

是非お嬢さんをうちの嫁にって 
言ってた


それでは母さんはどうやって追い返したのよ
そんな話初めて聞いたよ!
私も少し興奮気味だ…



お姉ちゃん…多分ね

そこまで聞いて 
うちは遠慮しますって
母さんが追い払ったのよ


私はさらに

いやいやいや 
嫁の話のインパクトが強くて強くて 
肝心なその後のやり取りがざっくりすぎて 
作り話でしょ これ
台所で耳を澄ませたんでしょ?
よく考えるとさぁ 怖いもの…これ


まさに 「えー⁇」なお話

冷静に考えてみたら
突如来訪して 息子の嫁にだなんて
夢を見て作ったとしか思えない

でも真剣に話す由美子を見ると一瞬ホント?
って思ってしまう
けれど うーむ これは謎だ
確かにありえないけど作り話としては 
うますぎる


真相は藪の中おしまいってことよ
そう由美子が一言 言うと席を立って
キッチンから出て行った

1人ポツンと残った私は…さっきの
やり取りを振り返る…

これでめでたしめでたし…
なのかな?

時が流れて数年後

こんな日は一日中ゴロゴロが1番よ
そう…実家で由美子との
やり取りはすっかり頭の中から消えている

私はテレビのリモコンで電源を入れ
バラエティをやっているチャンネルを押す


ではでは1人でTVをみましょうかねぇ

今この時間にこんな番組してたっけ?
休みだから特番かな

丁度番組は占いコーナーになっている

MCが
では⬜︎⬜︎さん 
今年の金運を上げるのに
どんな事をしたら良いでしょう?

「そうですね…西南西の方角に
良き運気があるでしょう旅行とかオススメです」


ん…⬜︎⬜︎どっかで聞いた事ある苗字…


そこで玄関のインターフォンが鳴った

ピンポン〜

は〜い


立ち上がりテレビインターフォンを覗く

そこにはスーツを着た上品なご婦人 

見慣れない人だわね…
年は同じ私と同じくらい?かな


するとインターフォン越しに
女性が挨拶をしてきた

⬜︎⬜︎と申します 少しお時間宜しいでしょうか

さーっと背中に何か流れる
一気に由美子の話を思い出し
そして同時にドクンドクンと心臓の鼓動を感じた

……  この前の由美子の話と同じ?
私には娘が1人いるんだよ

ええ〜?まさか 怖い

リビングでは番組内の占いコーナーが終わり
ゲストとMCとで 結婚するならどんな人で
話が盛り上がっていた

こちらは脂汗が出てそれどころでは無い

インターフォンのご婦人は続ける

急なご訪問 申し訳ありません
⬜︎⬜︎と申しまして 占いを生業に…


いや もういいです!

お願い 夢ならすぐ覚めて


終わり

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