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South China Morning Postを観察する

南華早報、即ちSouth China Morning Post(“SCMP”)の報道内容を観察している。

同紙は、イギリス領たる香港を代表するイギリス資本の英字紙であったが、87年にルパート・マードックに、93年にマレーシア華僑Robert Kuok(郭鶴年)率いるKerry財閥に、そして2015年に馬雲のAlibabaへとオーナーが変わっていった。

Robert KuokのKerryは食料品に強みあったことから中共政府の商務部との関係が強く(一時期、商務部の前身である対外貿易経済合作部はKerryが開発した建屋にあった)、Kerry傘下となった時点でSCMPは中共政府の管理下に入った、と認識された。

さらに、共産党員であることまで開示した馬雲の管理下に入ったことで、SCMPが中共管理下の香港英字紙となり果てたことは明白となった。

だからこそ、SCMPの報道内容の変化は中共の報道管理を知る有効なリトマス試験紙だと考えるのである。

今のところ、まだ民主派の立場の記事も一応掲載されてはいる。しかし、国家安全維持法成立前日に関連記事が一時途絶えたりするなど、相応の“配慮”を否応なく認識させられる。

その“配慮”の典型だと考えられる記事が
『Donnie Yen celebrates Hong Kong’s ‘return’ to the motherland – ‘I am fighting for the Chinese people’』
である。
(https://www.scmp.com/sport/martial-arts/kung-fu/article/3091681/donnie-yen-celebrates-hong-kongs-return-motherland-i-am)

これは正しく中共提灯記事だ。香港の代表的映画スターでハリウッドでも活躍する俳優が、「一国“一”制度」・国家安全維持法を指示している・・・、と思わせる内容だ。

Donnie Yenこと甄子丹・・・Star Warsのスピンアウト『Rogue One: A Star Wars Story』で盲目のジェダイ騎士を演じていた東洋人と申し上げれば、多くの方がご記憶あるのではないだろうか。

1963年生まれで、2才の時に両親と共に広州から香港に“移住”・・・要するに密航脱出。と、言うと民主体制を求めて越境したように見えるが、父親が香港の日和見・体制翼賛マスコミの代表(従って中共派)である星島日報のアメリカ特派員となったことを勘案すると、そもそも中共支持派であるものと推測される。

個人的に初めて彼を知った黄飛鴻映画でも、成人するまで中共にいた李連傑(Jet Li)が民主を標榜する黄飛鴻を演じ、甄子丹は民主派を弾圧する清朝の冷徹な官僚を演じていた。配役上のこととはいえ、実際の当人もそのような体制派の政治信条なのではないか?と思わせられる演技であった。

中共提灯記事“仕立て”だが、なかなか微妙な言い回しであり、結局のところ甄子丹の意見が如何なるものか、SCMPとして如何に評価するか、あいまいなままである。

“Today is the celebration day for Hong Kong returned to motherland China 23 years,・・・・・・Recalling such memorable night in 2017 where I had the privilege to performed with piano Maestro Lang Lang(朗朗) for Chairman Xi [Jinping](習近平) and wife along with several hundred guests who came to watch the show and celebrated the night!”

が、FACEBOOKに書き込まれている、と紹介するのみなのだ。

なにやら、編集部内、或いは編集部と経営と間に軋轢・せめぎあいが繰り広げられている情景が透けて見えてならないのである。

ところで、『Rogue One: A Star Wars Story』には改革開放開始時期に陳凱歌や張芸謀監督の意欲作に主演級で出演し、自身も監督作品を持つ演技派の姜文が何とも情けないキャラクターで出演していた。そこまでしてハリウッド作品に出る必要があったのか、観ていて悲しくなった。そう言えば、陳凱歌の監督作品もここ20年は通俗的な娯楽作品ばかりだ。

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