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《当代中国財政 上・下》(6)

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《当代中国財政》は上巻約450ページ、下巻約550ページ。日本で言えば“普及版”の装丁であるが、厚めのソフトカバーでカラー写真もふんだんに入っており、1988年当時の中華人民共和国で刊行される書籍としては“豪華版”である。

カラー写真の中に、李先念と薄一波の揮毫(題詞)があった。

『財政工作要為経済発展服務』李先念1986.9.12.
『財政是経済的綜合表現在改革中要充実発揮宏観控制的作用』1986.9.18.

最初の写真は、1963年に毛沢東・劉少奇・周恩来・朱徳・董必武・彭真が全国工業交通企業財務工作会議の出席者に接見するものである。

2枚目は、1950年にモスクワで周恩来がソ連からの借款条約に署名する姿。後ろに立つ毛沢東がスターリンの横で無表情に目線を上に向けているもので、中ソ対立の予兆としてしばしば取り上げられる写真だ。

毛沢東・陳雲・薄一波・李富春・鄧小平・周恩来・朱徳がそれぞれ会議等で講和する1957年まで7枚の写真が続いた次は、1963年の李先念による1963年決算・64年予算報告に飛び、その次は1979年の張勁夫による1978年決算・79年予算報告にまで飛ぶ。なんとも暗示的な構成である。65年から77年までは語るに落ちる、ということか。ここまでは白黒写真。

そしてこのあとは、趙紫陽がレーガン大統領と租税条約に調印する場面や、姚依林が世銀訪中団を迎える姿、趙紫陽の講話、ベーカー財務長官訪中を迎える李先念、そして竹下登と会談する王丙乾、などとなる。

以降の写真は、当時の経済活動や民生を映したものとなる。また色刷りのグラフや、きちんと数字の桁が揃った表も付いており、国家の威信をかけて編集されていることがわかる。

本書刊行から5~6年を経た90年代でも、政府機関から提出される数表の桁は揃っておらず、縦横合計も合っておらずと、閉口したものである。

第1編(~340ページ)は“中華人民共和国財政的建立与発展”で、以下9章から構成されている。

第1章 在民主主義革命中孕育成長
第2章 為恢復国民経済,争取財政経済状況的根本好転而斗争
第3章 貫徹過渡時期総路線,促進社会主義改造
第4章 促行社会主義工業化,保障第一個五年計画的勝利完成
第5章 “大躍進”時期的財政
第6章 調整経済,克服困難,争取財政経済情況好転
第7章 十年内乱中的財政
第8章 在経済的調整和改革中努力実現財政収支基本平衡
第9章 開創財政工作的新局面


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