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ご当地キティは「ひょうい型女優」

キティとは、サンリオが展開する今や日本を代表するグローバルなキャラクターとなったハロー・キティのことであり、“ご当地”とは全国各地、はたまた様々な企業、団体あるいは商品にキティが使われていることを意味することは、もはや説明する必要もないであろう。

最近、ご当地キティのキャラクタービジネスを展開するにあたり、サンリオはキティを「ひょうい型女優キティ」として広く営業している。“ひょうい”とは“憑依”である。

YouTubeのサンリオ公式チャンネル「ハローキティのお仕事紹介」は、キティという虚構のキャラクターをどのように活用すれば、広宣素材として有効であるのかを訴求する、優れた広告であり、取扱説明書になっている。

つまり、「憑依」の仕方を極めてわかりやすく例示しているのだ。

50~60年前までのキャラクターを利用した広宣は、アニメやプロ野球選手或いは大相撲力士が食品や文房具などに印刷されている程度であった。ハロー・キティにも「キティちゃんの歯ブラシ」のような商品がある。

これは「憑依」の第一形態だったのであろうが、現代のように「憑依」の形態・様式が拡散するまでには様々な試行錯誤と偶然があったことだろう。

ご当地キティおよび限定ハローキティの版権を管理する㈱あすなろ舎によると、1998年の「ラベンダー・キティ」が第1号で、

ナショナルブランドのキャラクターに地域限定という希少価値を付けて、旅行者の心をくすぐる企画が大ヒット。地域のお土産品や名産品市場に新風を吹き込んだとして日経流通新聞紙上でも大きく取り上げられました。
地域に密着したきめ細やかなマーケティング展開と、専門子会社での卓越した企画・デザイン力、そしてこれまでに培った流通のパイプを生かした全国販売網が大きな成功要因となっています。

とのことである。 (https://gotochikitty.com/)

「憑依」する対象は、“モノ”商品に止まらず、“コト”サービス、地域文化、企業、都市、芸術作品、芸能人(歌手など)はたまた他のアニメキャラクター、と例外は皆無だ。

そして重要なのは、今やこのような「憑依」対象の方から「憑依」を求めていることである。求めるということは、そこに効用を認識しているはずである。

ではその効用とは何か。当然ながら、「憑依」に対価が必要である以上、「憑依」されることで売上が向上することが高い確率で期待できる事を確信しているからであることは間違いない。

では、キティが「憑依」した“モノ”や“コト”に対して消費者が購買意欲をそそられる理由は何であろうか。単なるマニアやコレクターだけの需要を喚起するのみであれば、誰も「憑依」を望まない。

おそらくは既にキティにある種の権威が生じているとは考えられる。

言い換えれば「キティ様がお憑きなされた有難い“モノ”・“コト”」という感覚である。

比較の対象としては誠に畏れ多いが、かつて天皇陛下がご行幸された場所に人々が集まって観光地化された事例、あるいは空海、行基あるいは親鸞などの高僧が立ち寄った先が巡礼地化された事例、と同じ感覚が生じているのではないだろうか。

そして、このような権威の本質は、サンリオやあすなろ舎による厳格な選定基準と綿密なマーケティング企画である。これが「憑依」の対価見合いなのである。

AKB48も同様で、タレントを送り出す芸能プロダクションは、秋元康のマーケティング能力に権威を認識して、所属タレントにAKB48を「憑依」させているのだと考えられる。

だからこそ、サンリオは権威を高めるためにピューロランドのみならず多摩センター周辺全体を「聖地」として整備しなければならないし、AKB48は秋葉原を「聖地」として整備しなければならないのだろう。

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