髄の年輪のモノローグ 第11回 ウルフルズ『バンザイ』

 今の「小学校」という場所がどんなもので、どんな雰囲気なのかは知らない。ので、現在の実際のそれとは剥離しているかもしれない。けれど、これは、20年以上前に西多摩のとある小学校で実際にあったことなのだ。

 義務教育を受けていた間、特に小学校時代には良い思い出がない。とはいえ、学校でいじめられていたわけでもなく(生まれつきの変わり者であるが故、あまりにも浮きすぎていて、いじる対象にすらなっていなかったのだと思う)、不登校だったわけでもなく、むしろ家にいたくなかったので積極的に登校していたし、生まれてこのかたグレたこともないし、得手不得手こそあれど勉強そのものは好きだし、放課後は図書室や図書館に入り浸っていたので、外からは「変わり者だけど真面目に勉強している人」に見えていたと思われるし、実際にもそんな感じでだいたい合っていた。
 5年生の頃の担任は若い男の先生だった。当時おそらく30歳前後くらいで、いつもジャージで、いかにも体育会系っぽい雰囲気だったけれど、かといって文化系とは相容れないようなタイプでもなく、面倒見のいい「みんなのお兄ちゃん」的な先生だった。

 その年の冬、世間では『ガッツだぜ!!』という曲が流行っていた。
 当時の私はJ-POPをよく耳にしていた。小室哲哉さん関係が多かった。ちょうどそういう時代だったのだ。しかし、そこに突然『ガッツだぜ!!』が飛び込んできた。

 まずMVがちょんまげだし、曲調もそれまで聴いたことのないタイプのものだし、とにかくボーカルのお兄さんの歌がすごい。元気だしすごく上手い。他の流行りのJ-POPとは違う意味で「歌って踊れる」し、サビでは一緒に「ガッツだぜ!!」と言いたくなる。インパクトは大きかった。
 そんなある日のこと。給食の時間に、担任の先生が突然言った。
 「俺、ウルフルズが好きなんだ!」

 その日から学年が上がるまでの数ヶ月の間、先生は給食の時間にウルフルズを流した。校内放送でも放送委員会が音楽を流していたが、それを切って、ウルフルズを流した。『ガッツだぜ!!』だけではなく、他のウルフルズの曲も流した。最初は音だけだったが、途中からMVも流した。
 『ガッツだぜ!!』が流れてくれば、みんなで「ガッツだぜ!!」と言いながら食べたし、『バンザイ〜好きでよかった〜』もサビの頭の「イエーーーーーイ!!!」でひとしきり盛り上がったし、『SUN SUN SUN ’95』や『大阪ストラット』も教室内で人気があった。
 教育的にどうなのかはわからない。学校的にも、教育委員会的にもどうなのかはわからない。今の時代の小学校で同じことをやったら大問題になりそうな気がしなくもない。でも、あの時のあの教室の生徒たちは喜んでいたし、先生も楽しそうだった。
 そして私は、先生とウルフルズのおかげで、「バンド」という集団もしくは編成の魅力を知った。それまでに耳に/目にしてきたミュージシャンはソロの歌手や2〜3人のユニットやアイドルグループが多く、バンドはあまりいなかった(YMOはバンドといえばバンドかもしれないけれども、リアルタイムで触れたわけではなかったので、実際に演奏している姿は見たことがなかった)ので、数人集まって人力で生演奏するという形態を認識したのはウルフルズがはじめてだったように思う。音楽番組に出演し笑顔で演奏する彼らを見て、バンドって楽しそうだな、きっと楽しいんだろうな、と思った。
 (ちなみに、この数年後には西多摩にも「GLAYかラルクかLUNA SEAか」というバンドブームのようなものの波が来ることになる)

 それから随分経ち、音楽ライターになった私は、憧れだったRISING SUN ROCK FESTIVAL in EZOに参加した。その年の大トリは、ウルフルズだった。念願の、はじめての生ウルフルズ。早朝なのにパワフルで明るく、先生が教えてくれた曲もたくさん演っていた。『SUN SUN SUN ’95』のサビの両手を左右に振る振り付けに際し、トータス松本さんが「朝練だーーー!!!」と仰ったのは忘れられない。楽しかった。本当に楽しかった。ウルフルズは最高ですね、先生!


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掲載日:2020年1月19日
発売日:1996年1月24日
(23年11ヶ月26日前)
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髄の年輪のモノローグ 目次:
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