0907「行かないとどうにもならない大国」

さすがにひどい時差ボケに呆けていて、東京滞在中にあまりにも忙しくて見損ねていた「いだてん」をNHKオンデマンドで見て(アメリカからだとVPNを使うので画質がひどい)、子どもたちを住んでいる建物のプレイルームに連れて行ったり、そのプレイルームでしばらく気になっていたロスチャイルド系の陰謀動画を見たりして家に帰ってきてからの記憶が無くて、起きたら夜だった。

とはいえ、アメリカに帰ってきて、一番心配していたことが解決したので結構気が楽ではある。その一番心配していたこととは何かというと、「次男がちゃんと新しい学校に通えるか」である。アメリカでは新しい学年が9月に始まる。次男は日本でいうところの「年長」(この学年を「Kindergarten」、つまり「幼稚園」という)になる。もともと兄弟血縁の優遇措置で長男が通っている学校=A校(幼小中一貫の公立学校、抽選で入れる。抽選で入れた)に通わせようと思っていたが、この学校には「年中」(「幼稚園前」=「Pre-K」と呼ぶ)のクラスが無かったので昨年一年は近所の別の学校(幼稚園)=B校に通ってもらっていたのだ。

で、今年から長男と同じ学校に通うことになっていて、「弟さんは、お兄さんが通ってる学校なら自動的に入れますよ」と言われていて油断していたのもあり、ボーッと生きていたら、いつの間にかB校から進学の通知みたいのが来ていて、次男がB校に行くことになっていることに気づいた。困ってニューヨーク市の役所に電話したら、なんかのミスで長男と次男が兄弟登録みたいのがされていないことが発覚した。アメリカの役所というのは基本的に「知らんものは知らん」というスタンスなので、「知らん。登録されてないんだから知らん」と言われ、しょうがないからA校に自分で行って「どうにかしてくれ」と泣きついたら、係の人に「あ、OK。じゃあ登録しとくわね」と言われ、彼女はPost-itに次男の名前を控えそのへんにペロンと置いたままどこかに行ってしまった。

数日後、入学申込書を書いてA校に持っていったが、係の人がいなくて、「あーそう。じゃあ渡しとくわね」と言われてその書類は机の適当な場所にポンっと置かれた。超怖い。

アメリカに住んで6年になるが、この適当な手書きペロン感、そのへんに適当に置く感のあるオペレーションに何回か煮え湯を飲まされている。そんな大事なことをPost-itで貼っておくものではなく、その場でコンピュータなりからちゃんとしたデータベースに入力して欲しいし、案の定この国では、「登録したはずのものが登録されていない」系のバグは日本の比ではないくらいの頻度で起こる。いろんな人がいろんなことを忘れるのが基本なのだ。

別の話で、長女を保育園に入れるために法定の健康診断シートみたいなの(ワクチン履歴)を医者にもらわないといけなかったので、6月くらいに医者に電話をしてリクエストした。「5日位でできるから連絡するわよー」と言われたが、9月になっても一向に連絡が来ない。もうそんなの完全に想定内だ。

で、Post-itペロン事件から3ヶ月の間に、2ヶ月日本にいたりして私自身連絡が付きづらくなってきていたのだが、私のEメールには「Welcome to B校」みたいな、あからさまに次男がB校に入る前提のメールが飛んでくる。ニューヨーク市のシステム上、次男はまだB校入学予定者扱いであることは明らかだ。

仕方ないから東京から何回か学校に電話したが、そこはアメリカ、夏休み中に誰か来ているはずなどない。

そんなんばっかりであるこの国では、究極のソリューションは1つしかない。長女の病院の健康診断シートについても、次男の新しい学校への転籍についても、それを確認するためには学校や病院に直接行くしかないのだ。そして担当者を詰める。そうすることでやっと「今どうなっているか」を真面目に教えてくれる。

何でもかんでもオンラインで合理化され、GAFAを生み出したデジタル大国であるはずのアメリカだが、その一方では「直接行かないとどうにもならない大国」でもある。

しかしそういうのにももう慣れている私は、ニューヨークに戻ってすぐに、早速A校に向かった。次男が登録されておらず一悶着するくらいの覚悟で行ったが、なんと次男はちゃんと登録されていた。そのへんに適当に置かれた書類は、ちゃんと受理されたのだ。「あんたそんなことより、おいしいマフィンがあるから食べていって」などと言われ、事務室に置いてあるマフィンをくれた。

次男も無事に学校に行けることになったし、7年目のニューヨーク生活が始まらんとしている。週明けには長女の病院に直接行ってくる。