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「嵐の夜」の日 10月-Vol.8

そこでは、天吾はただ青豆に手を握られていた。
まるで金縛りにあったみたいに身体が動かなかった。時間が止まってしまったみたいだった。

青豆、と天吾は思った。
青豆に会わなければならない、と天吾は思った。


これが「約束」を思い出した瞬間だ。

ふかえりに導かれて、天吾と青豆は再会する。
そして「1Q84」の100パーセントの恋人たちは、約束を思い出す。
二十年前の「教室の世界」で交わされた、あの約束を思い出すのだ。

「あなたがいれば、もう孤独ではない」

この「1Q84」は、「教室の世界」で交わされた「約束」を思い出し、それに気づく物語なのだ。


逆に不幸にして「約束」を思い出せないパターンが「四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」なのである。100パーセントのカップルが約束を忘れてすれ違うのが青山の物語だとすると、「1Q84」は「約束」を二十年かけてでも思い出し、それを実行する物語だ。
       ---「1Q84読解 村上春樹変奏曲」より


そして天吾はレシヴァの才能を開花させ、以降、いつでもこの「教室の世界」へ行けるようになる。

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