「猫の町」の日  11月 Vol.1

今日は「猫の町」の日。

だが、この予定の日、日本をコロナの第二波が襲い「勝負の三連休」が発令された。
猫の町は遠い。思いもよらない事態の変化に対して、迷惑をなるべくかけないように一人旅を計画し、対策をもろもろ準備して、勇気を振り絞って出かけた。

想定外に「危険な冒険」をしに行く気分になった。

コロナの緊急事態宣言が出た4月に「1Q84」を読み返して、第一波の解除後に、この1Q84フォトトリップをBOOK1「4月―6月」から開始した。
季節が巡り、BOOK3の「10月ー12月」になり、ついに猫の町にむかうという時、 コロナが再び我々を襲った。

コロナウイルスと「1Q84」には、なにかの関係があるのだろうか? と、猫の町にむかう列車で考えていた。
特急の中で、「1Q84」に収蔵されている「猫の町」の短編を読んだ。
天吾と同じく二度繰り返して読んだ。

「そして日が暮れ始めた。そろそろ猫たちがやってくる時刻だ。
彼は自分が失われてしまっていることを知った。
ここは猫の町なんかじゃないんだ、と彼はようやく悟った。
そこは彼が失われるべき場所だった。
それは彼自身のために用意された、この世ではない場所だった」


猫の町は、失われるべき場所であり、この世ではない場所だ。
猫の町への旅は安易に見えて、「危険な冒険」なのだ。
猫の町の青年は、興味本位で猫の町に行き、そこを探究する欲望に逆らえず、帰れる時に帰らず、その結果、永遠に帰れなくなった。

天吾は、猫の町で空気さなぎを見つけ、青豆に再会する欲望に逆らえずに滞在したが、安達クミに警告されて、猫の町から離れた。

安達クミ
彼女は猫の町に住んでいる、ハッシシを所有する看護師として。
「夜が明けたら天吾くんはここを出て行くんだよ。出口がまだ塞がれないうちに」

「1Q84読解 村上春樹変奏曲」によれば、安達クミは天吾の母親の生まれ変わりであり、天吾の守護天使である。猫の町で空気さなぎを待ち続ける天吾にとって、彼女の言葉は示唆と慈愛に満ちている。

「空気さなぎはどこからやってくるんだろう?」
「間違った質問」

ほうほう

「失われるべき場所、それは誰にとっての?」
「質問はいらない。自分から森の中に入っていけばいいんだよ」

ほうほう

アダチクミに導かれて、天吾は「教室の世界」に入り、少女・青豆と会話をする。

「どうすれば見つけられるだろう?」

「私を見つけて」少女は言う。「まだ時間のあるうちに」




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村上春樹さんの「1Q84」を古典として広めるために活動拠点をつくりました。
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