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2023年7月に読んだ本

読書感想文の宿題なんて大嫌いだったのに、なぜうんうん唸りながら
自主的に読書記録を書いているのか・・・。
本読むのも好きだし、内容も忘れないように書いておきたいけど
他人に強制されるのが嫌だったんだな、たぶん。

寺地はるな『水を縫う』集英社

素直でお人よし、才能もあるけど、生活力がなかった父。
主人公の息子は結婚する不器用な姉のためにウェディングドレスを作る。
最近「A子さんの恋人」というマンガを読んだばかりだったのだが、
夢中になれるものを持っていることの強さというか
広い海原を一人で淡々と泳いで行く人のまぶしさについて
共通して描かれていると思う。
かと言って「好きなことを仕事に」を賞賛するのではなく
自分の仕事をしっかりこなすことや家族とかそれ以外の結びつき、
不器用でもまっすぐ生きることの尊さが散りばめられている。
これまで読んだこの作者の先品の中で一番気に入ったかも。

角田光代『わたしの容れもの』幻冬舎

何年経っても変わらないもの、たましいのような何か、を中身とすると
その外側、私たちの体が「いれもの」。
いい表現だな、と思う。
変わらないものってあるねっていう話をしつつ、
変わっていく「いれもの」、主に体の経年変化について話しています。
カルビよりハラミ、減らない体重、思い当たる節がありすぎる。

角田光代『あしたはうんと遠くへいこう』マガジンハウス

これもエッセイかと思って図書館で借りたら小説だった。
(帯の情報や文庫の裏にあるあらすじはそれなりに重要なのだ)
主人公が高校生の時の片思いから32歳までの恋愛遍歴。
そこはかとなく漂う退廃的な雰囲気と刹那的な恋に合わせて
音楽の描写がたくさん出てくる。
私はそんなに洋楽詳しくないので、実在なのかもわからないのだけど
勝手にバンド名から雰囲気を想像していた。

朝井リョウ『正欲』新潮社

最近「多様性」という言葉をよく聞くけれど、
自分が理解できるものだけを許容することを指してはいないか?
また、それが許容できるものかどうか判断しているのは誰なのか?
マジョリティーっていったいどんな人?
あらゆる疑問を作者が投げかけてくる作品。
『桐島部活やめるってよ』の時からずっと変わらない、リアルな会話。
いかにもカースト上位の人たちが言いそうなセリフすぎて眩暈がする。
YoutuberとかSNSとか今時要素も自然に使いつつ
現代の課題みたいなのを小説で提示してくる作者すごい。

白尾悠『サード・キッチン』河出書房新社

娯楽で読むにはちょっと重いというか、ちゃんと考えないといけない本。
差別は単純なものではなくて、
気を付けている、と思っても誰かを傷つけたことがあるのだと思う。
同じ日本人でも、お互いの位置を探り合い、
インター育ちと公立校出身では価値観が全く違うという出だしは
自分にも想像がつく話だけれど、次から次へといろいろな事例が出てくる。
特に「文化の盗用」は、無自覚に犯していることが多いかもしれず
耳が痛かった。夏休みの課題図書的存在。

僕のマリ『すべてあたたかい海』

浅草のBOOK MARKETで購入。自費出版の日記集。
3月20日の日記、WBCの準決勝についての記述。
「大谷翔平選手が二塁上で仲間に向かって吠えていたところを見て、
思わず泣いてしまった。かっこいい、すごい、という感情を超えて、
その姿がただ美しかった。」激しく同意。
私もあの場面が一番感動した。

近藤聡乃『不思議というには地味な話』ナナロク社

「ニューヨークで考え中」というマンガの作者のエッセイ集。
マンガと同じ空気感のニューヨークの日常の雑感と合わせて
作者の幼いころの記憶や、朝方覚えていた夢の中の話のような
題名そのもののエピソードの数々。
ところどころに挿絵があってさらっと読める。

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