見出し画像

【短編小説】ワードウルフ

「呼ばれるまでまだまだ時間ありそうだからワードウルフでもやる?」
「いいねぇ、ワードウルフ。懐かしいや。」
「あ、俺まだアプリ残ってるからこれ使っていいよ」
「そのアプリかぁ〜。私そのアプリ、お題がちょっと幼稚であんまり好きじゃないかも。」
「まぁ、所詮暇つぶしだしさ。いいんじゃない?これで。」
「それもそっか。じゃあ私から…。はい見た。」
「うんうん。俺もOK。」
「あー、なるほどねー。次、どうぞ。」
「…理解理解。よし、じゃあ初めよっか。早速だけど、これみんなはどう思う?」
「私はちょっと怖いかも。」
「どういうところが?」
「えっ、私だけ掘り下げるのズルくない?みんなの意見も聞かせてよ。」
「俺も怖いのは同意見。多分テーマとして怖いものっていうのが共通点になってるんじゃないかな。」
「なるほど、多分そうだね。でも俺はそんなでもないかも。いや、これを怖いと思う人がいるのは分かるけど。」
「えー、これが怖くない人っているの?信じらんない。怪しいなー。」
「俺は鍛えてるからさ。簡単に負ける気は無いし。」
「うわー、結構攻めた発言するじゃん。でも逆に信用できるな。多分俺と同じだ。」
「私も一緒だと思う。私はきっと勝てないと思うけどね。笑」
「えー、じゃあ私が違うのかなぁ。」
「このままだとお前に決まっちまうぞ〜」
「んー、仕方ない。私もちょっと攻めるか。私はね、『コイツ』と対面した時の対処法知ってるんだ。」
「それって、例のアレ?」
「そ。死んだフリね。笑」
「やっぱりか、じゃあ仲間確定だわ。」
「あれって本当に効果あるのかな?意味ないって聞いたことあるような気がするけど…」
「でも、逃げるのが一番良くないらしいぜ。」
「どうせ、逃げられないもんね。」
「最近ニュースで見たよ。逃げようとしたけど、結局無理で死んじゃった人の話。なんでも頭を食われちゃったんだって。想像するだけで恐ろしい…。」
「確かになぁ。っていうか、結局誰が狼なのか分かんなくなってきたな。」
「お前もなんか情報出してくれよ。さっきからみんなに乗っかってばっかりで怪しいぞ。」
「俺?そうだなぁ…。1度は出会ってみたいかもな。」
「嘘だろ?出会わないに超したことないだろ。」
「いや、私もちょっとそうかも。スーッとして気持ち良さそうだしさ。」
「気持ちよさそう?お前がやっぱり違うんじゃ…」
「うーん、おすすめはしないよ。実は私少し入りかけたことあるんだ。確かに、ちゃんと戻って来れる深さなら気持ち良いんだけどね。お姉ちゃんは自力では帰って来れないところまで行っちゃって地獄を見たって言ってた。」
「嘘!周りに経験者が居たなんて知らなかった。なんでもっと早く言ってくれなかったの?」
「俺にもコツ教えてくれよ!実は1人で練習してたんだけどなかなか上手くいかなくてさ。」
「そんなこと言われたってさ〜。友達を失いたくないし、責任も取れないからさ。それに、本当にちょっとだけなんだから。」
「ちょちょ、ちょっと待ってくれ。お前ら何の話してるんだ?」
「おいおい、それを言ったらワードウルフにならねぇじゃんか。ま、もう狼は分かったけどな。笑」
「っていうか、逆に何の話だと思ってたわけ?」
「えっ…お前らてっきり『熊』の話してるのかと思ってたよ…」
「あー、残念。笑」
「正解は『時間の連続性への違和感から生じる点としての存在たる生が持つ徒爾及び荒誕さの自覚の際に訪れる、生命活動の断絶より高次元に位置する形而上の死を惟う事で没入し得る仮想的な意識凍結に立ち向かう恐怖』でした〜。」
「なっ…」
「そんなことより、コツ教えてくれよコツ!いや、教えてください!」
「んとね、意識凍結というものをどう捉えるかって所が重要なんだけどね。」
「うんうん。」
「これは常時の脳が使用できる範囲内での思考回路では到達出来ない考え方になるんだ。だから実際の意識凍結に近い形で物理世界から脳を騙す必要があるんだ。つまり…?」
「死んだフリってことか!」
「ちなみに、熊に死んだフリは科学的根拠がないらしいよ。」
「つーか、いくら鍛えたからって熊に勝てるわけないだろ。笑」
「でも、トレーニングは大事だよ。結構負荷が大きいからね。それこそ脳が飲み込まれちゃう危険性があるから…。」
「お前の姉貴は誰にリブートしてもらったんだ?」
「それが身近に優秀な融解技師が居てね…。っていうか、みんなも知ってるよ。」
「もしかして、あの!あ、えーと名前忘れちゃった。一個下の代を担当してるイケメンの理科の先生でしょ?なんか前々から噂立ってたよね。」
「そーそ。電話で呼んだら見た事ある顔の人が来たからビックリしちゃったよ。」
「あの顔で公務員と融解技師の兼任って…。人間って不平等だな〜。」
「ま、あの人家族全員、集団意識凍結事故で亡くしてるらしいからさ。他人とは覚悟が違うよね。あ、そろそろ呼ばれるよ。」
「やっとかぁ〜。ここのオムライス前から気になってたからようやく食べれるわ。お前、サイズどうする?せっかくこんなに並んだし
Lサイズ?」
「えっ…。あぁ、そうだな…。」
「ワードウルフ負けたし奢りでいいんじゃない?」
「ここのオムライス、結構するしさすがに可哀想だろ〜。飲み物の分だけで我慢してあげるわ。笑」
「やっぱりあのワードウルフ、お題が幼稚であんまり好きじゃないな。簡単すぎるんだもん。」
「まぁまぁ、暇潰しにはなったし良いじゃん?それに、コツも聞けたしな。早速家帰って練習したくなってるし俺。笑」
「私も〜。笑」
「もう、2人とも…。私どうなっても知らないんだからね!」

翌日、2人は学校を欠席した。

おわり

初めてお話を作ったので、大目に見てください👀

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?