【歌詞考察】スローに踊るだけ/ゲスの極み乙女-日常からの逃避
歌詞考察 第3回
スローに踊るだけ/ゲスの極み乙女 を取り上げる。
この曲は2022年に発表された、現時点(2023.7)での最新シングル。
って書くと、久しく新曲発表していないことが分かる。メンバーみんな多忙すぎるから……
この間の馳せ合いvol.5(※)で新曲披露してたし、配信が待ち遠しい!!
(※)2023年7月に行われたindigo la Endとゲスの極み乙女と対バン?絵音さんはワンマン?笑 ライブのこと。絵音さんはライブでよく新曲を披露してくれる。ファンからすると非常に嬉しい。
脱線はさておき、この曲の作詞作曲は川谷絵音さん。
個人的にこの曲、めちゃめちゃ好き。
ゲス乙女らしいアレンジと歌詞、どこか少し力が抜けるような気持ちになる曲。本当に好き。
なんでもっとバズらないのか、不思議。
(とは言いつつ、この曲を知っている自分に優越感を抱いているのかも。でもそのくらい良い。)
まだ聞いたことないよって方は、YouTubeや各サブスクリプションで配信中なので是非!
↑こちらYouTubeで公開中。10周年記念ライブ『解体』より。みんなめちゃくちゃカッコイイ!
では早速、歌詞考察。
一筋縄では恋に落ちない、川谷絵音
絵音さんには珍しく、ストレートに「恋に落ちた」と表現している。
(ひねくれ者の絵音さんなら、「恋に落ちた」とか「fall in you」とか使わなさそうなのに!)
でも、しっかり「毒によろめいてしまった」から「fall in you」。
さすが、一筋縄ではいかない感じが好きです。
ここでの「毒」とは何か?
①「恋に落ちた」相手の術
恋愛慣れしており、相手を手のひらで転がすタイプの人に恋してしまった。
慣れているため、相手を落とすための術(毒)を持っている。これに「よろめいてしまった」。
この場合、恋に落ちた相手は音楽のことではないかな〜と。
音楽が与えてくれる美しさと、音楽から逃れられない苦しさ。この葛藤。
絵音さんは特に音楽が日常になっていると思うので。
「日常」というのも1つキーワードだと思うので、覚えといてね。
②仏教の三毒
三毒とは、『毒のように私たちの心を蝕み、清らかな心を失わせる原因となる三つの心の動き・煩悩』
(神仏ネット2019.3より) のこと。
自分自身の煩悩が原因で「よろめいてしまった」。
(椎名林檎さんのアルバム『三毒史』が思い出される。)
毒=音楽っていう解釈もできる。
音楽が心を蝕み、清らかな心を失わせている。
そんな解釈も面白いかも。
他にも「毒」の適した解釈があれば、是非コメント欄まで。
「コルチゾール」はストレスから身を守るために分泌されるホルモンで、体を興奮状態にするらしい。
それが「上りっぱなし」というのは、ストレスが恒常的にかかっている状態。
私たち現代人も、常に時間に追われてストレスかかりっぱなしだよね…。
からの高速ラップ。
スローに踊るだけなのに、全然スローじゃない
このパートは絵音さんが高速ラップで歌ってる。
まじで滑舌すごい。絶対できない。
早口で歌ってるのは、時間に追われる現代人を表しているのか。
ゆとりのある生活をしたい〜と思いつつも、結局は毎日時間との勝負。
そんな余裕のない我々。
「ファンシー」=不安心(ふあんしん)
サビでは願望が語られる。
最近は欲望をストレートに歌うのが流行ってるのかな?
(米津玄師さんのKICK BACKみたいに。幸せになりたい、楽して生きていたい、的な。)
ここでの絵音さん天才ポイントは、「ファンシー」が「不安心(ふあんしん)」にも聞こえること。
あと最後の「こんなんじゃ」も「困難(こんなん)」と掛けてると思う。
この二重の意味を持たせる歌詞がすごい。好き。
ここはまた曲調が変化。聴いていて心地良い歌詞とリズム。
生きている限り明日はやってきてしまう。
何かを変えたいのに、日常に忙殺されてしまい結局変えられない。「どうしていいかわからない」。
こんな日常を送り続ける意味が何なのか。
考えようとしているだけ、良いのかもしれない。
「行かなくちゃ」が繰り返された後、突然の「生きなくちゃ」。
まさに今の自分と重なる部分が多くて、ハッとさせられる。
何かを変えたいのに、結局日常を送るのに精一杯になってしまう。
義務感で生きているような感覚。そして義務感に押しつぶされそうになってしまう。
日常の義務感に押しつぶされそうになり、心が泣いてしまう。
「そんなんで 生きてくの」とは、何も変えられない日常を義務感のまま惰性で生き続けること。
このままでいいのか?と「何回も 自問自答してる」。
「自問自答」「誰にも言えない」とは、自己解決しようとしているのだろうか。
または、誰かにこんな感情を話しても解決しないと諦めてしまっているのだろうか。
きっと同じような悩みを抱えている人はいるだろうと思うが、自己解決したくなる気持ちも分かる。
そんな心の葛藤、矛盾。とても人間的。
ラストのサビも基本同じように、不安で困難の多い日常からの逃避が描かれている。
違うのは最後。「疲れたな」の一言。
一気に現実に引き戻される感覚がする。
日常に「疲れた」のか、人生に「疲れた」のかで結末は大きく変わってくるが、想像の余地があって面白い。
個人的には前者で、結局逃避しても日常は追いかけてくるし、逃れられないようなイメージで終わっている。
後者のバッドエンドパターンでも面白いとは思うが!
脳内逃避してたらふと現実に戻ってきてしまい、軽く絶望してこの世から消えてしまうような。
(さすがにバッドエンドすぎるか?笑)
「スローに踊る」の意味とは?
最後にタイトル回収。
この歌詞を見てきて分かると思うが、タイトルとはかけ離れた「忙殺される日常」への葛藤が描かれているように思える。
「スローに踊る」=自分の理想なのではないか。
日常から切り離した、頭の中の理想架空世界で悠々自適に暮らしたい。が、現実そんな甘くないよね。
私もスローに踊っていたい。
大変な時に聞くと、日常への諦めを受け入れられるような、そんな曲。
決して前向き過ぎないところがすごく好きです。
私も音楽という毒によろめいてしまった内の1人なので。
これからも「毒」を摂取して、明日を乗り越えていく。
ねえ誰か教えて欲しい/独り言にしないで欲しい
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