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エリカの暴露 第5話 「自殺未遂」



「お店を一緒に出そう」



 ある日、萩原がそんな話を持ちかけてきた。


 出会ってから1年くらい経った時だった。



 萩原の計画では他の店の人気No.1トップセラピストを引き抜いて、有名セラピストのみの店を作るというものだ。



「うん、やりたい!」


 エリカはやる気満々で答えた。


 今までに本当のトップセラピストしかいない店なんて存在しない。

 もしそんな店があったら、相場よりも高い金額を提示しても客は金を払うだろうし、何より今よりも稼げる。


 それに、今はただのセラピストだが、一緒に店を出したら経営側に回れる。

 いくらいい加減に客をあしらっているからと言っても、骨の折れる仕事だ。

 経営者になれば、セラピストが勝手に稼いでお金が入ってくる。


 そうなれば毎日贅沢しながら遊んで暮らせる。


 

 なんて最高の人生だろう。




 ふたりは話し合い、計画を立ててから、新規開店に向けて、着々と準備を進めた。





 セラピストは、萩原が都内の色々なメンズエステに通っていたので目星を付けていた。

 そして、そのセラピストにはエリカから接近することにした。

 エリカは有名セラピストになってから、同じセラピストから憧れの象徴として崇められてもいたので、ツイッターでコンタクトを取ってくる人や毎回いいねやコメントを残す女の子が増えていた。


 そんなエリカが自分から声を掛ければ、セラピストは警戒せず話に乗って来やすいと考えたのだ。







 しかし、ある事件が起こった。

 萩原はエリカが本命だが、他にも売れてるメンズエステのセラピストとも付き合っていた。


 それはエリカも知っていた。


 萩原は出来る男だから、自分以外にも女はいくらでもいる。

 実際に、愛情はないだろうが奥さんだっている。

 だけどどれだけ女がいても、エリカのことを一番好きなのだろうと軽く考えていた。





 ある夜、普段は冷静な萩原が慌てた様子で電話をかけてきた。



「どうしたの?」



 エリカが聞くと、



「付き合っていた女が自殺未遂した」



 萩原が不安げに言う。



「自殺未遂?なにそれ、そんなのほっとけばいいじゃん」



「そういうわけにはいかないよ」



 萩原はそれから、自殺未遂の事件に関して話し始めた。





 その女とは、新店のためのセラピスト探しをしている時に、出会ったそうだ。


 もちろん、彼女もその店のNo.1であった。


 意図したヌキはしないものの、かなり過激なマッサージで、射精してしまう客も少なくないのが特徴だ。


 萩原はその女を持ち前のルックスと話術で虜にさせて、新店に引っ張ってくる約束を取りつけた。

 その女のことはエリカも事前に知らされていて、やっかみも何も感じてはいなかった。



 だが、その女が萩原とエリカが付き合っているということを知ってしまった。



 元々、感情が不安定になりやすい性格だったそうだ。

 妻がいる事は承知していたが、自分の他にも愛人がいた事実を受け止めきれなかったのだろう。


 彼女が事実を知った次の日、初めて彼女を指名した客が部屋にやって来るなり、



「ごめんなさい。でも、こうするより他にないんです」



 と、客の目の前でリストカットをしたそうだ。



 驚いた客は慌てて救急車を呼んだ。




 彼女は病院に運ばれたのち、その店のオーナーがどうしてそんなことをしたのか話を聞いた時、エリカと萩原の関係、さらにはトップセラピストだけを集めた店を開業するために数々の店で引き抜きを行おうとしていることを暴露してしまった。




 この業界で引き抜きはとても嫌われる行為だ。タブーと言ってもよいだろう。


 ましてや店のトップセラピストがいなくなるとあっては店の存亡に関わる可能性だってある。



 彼女は物凄く大きな爆弾を投下したのだ。







「二股かけられたから死ぬとかメンヘラすぎ。別に気持ちいいことする相手なんて人間誰しも一人な訳ないんだから大人になれよって感じじゃない?」



 エリカは小馬鹿にしたように答えたが、



「なあ、わかってないようだけど、その店のオーナーはエリカの店のオーナーに全部話しちゃったんだよ。2人で引き抜きされないように色々な店やセラピストに根回ししてるはずだよ。ってことは、新店の話もなくなるかもしれない」



「えっ、まさか」



「各店のトップセラピストたちを集められなかったら終わりだ」



 萩原はいきり立ち、



「エリカも覚悟しておけ」



 と、言われた。





 

 続く....

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