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【レビュー】希学園 小4 公開テスト 2024年8月 国語

(「希学園 小4 公開テスト 2024年8月 国語」についてのレビューになりますので、お手元に試験問題をご用意の上でご覧下さい。なお、全体の分量は約2500文字です)

 このところの傾向として、希学園の小4の公開テストは物語文の難度が高くなっている模様です。8月のテストも大問2の正答率をチェックしていくと、4が33%、8が21%、9-Ⅰが25%、9-Ⅱが36%という具合でなかなか手強いものがそろっています(知識問題は除外)。これらの問いから得られたものを今後に活かせるようになるかどうかが小5以降の成績を左右しますので、気を引き締めて復習しておきましょう。一方、大問3の説明文は4の正答率が30%だったことを除けば、それ以外は40%台が2問あるだけでそこまで厳しい設問はなかったと言えます。希学園がターゲットとして想定している学校の傾向を踏まえると、小4のうちから文学的文章に対する意識を高めておきたいという塾側の狙いがあるのかもしれません。
 さて、今回のレビューではまずテスト全体の中で最も正答率の低かった大問2の8を取り上げ、少し考え方等を深掘りしてみようと思います。
 8を解くためのカギは「予想」になります。この問いが求めているのは空欄⑥、⑦に当てはまる言葉を探すことですが、設問文の中には答えについての有効な予想を立てるための判断材料がありません。こうした場合は空欄の前後に目を移し、何かヒントはないかと確かめてみるのが定石です。試しに空欄⑥、⑦を含む一文全体を抜き出してみると、「すみれはそんなわかばのことを、「[ ⑥ ]」だから自己防衛のために[ ⑦ ]になっていたなんて言ったけれど、そうなのかもしれない。」となっています。この文を読んだ瞬間に「すみれは」と「言った」に反応できた受験生は、ここから次の思考へと進むことができたでしょう。
 空欄⑥、⑦を含む一文の主語が「すみれは」であり、述語が「言った」であるということは、空欄⑥、⑦の当てはまるのは「すみれ」の言ったセリフの一部のはずだと予想されます。従って、「すみれ」のセリフの中を探していけば正解にたどり着けるということになりますが、さらに考えると本文の中で「すみれ」が出てくる場面は限られているため、答えの出てきそうな範囲もかなり絞り込めるだろうと見当がつきます。そこで早速文章を調べてみると、探すべき範囲は線Bの2行あとから★の直前まで(=「わかば」と「雅人」と「すみれ」の3人が会話をしている場面)のはずだと判断でき、その中に出てくる「すみれ」のセリフを順番に調べていくという段階に入っていけます。あとは、線Cの次の行から始まるセリフに目を向け、その中にある「だからね」と空欄⑥の直後にある「だから」を重ねて空欄⑥の答えを確定し、さらに同じセリフの中を確認して「臆病」を空欄⑦に入れたらいいと気づけたら完答に持ち込めるというわけです。
 1つの着眼点からスタートして予想を立て、思考を積み上げて答えのありそうな場所を絞り込めたかどうかで勝敗が分かれるようになっており、受験生の実力を推し量る試金石としてとても優秀な設問です。こういう問いを効果的に織り交ぜてテストを作成してくるところは、さすが希学園と言わざるを得ません。対応できるようになるのは「設問の仕組みを理解する→解き方を記憶しておく→テストの時に記憶を呼び起こしながら実践する」という訓練を反復することが重要ですが、実は今回の8と似たような性質を持った問いが7月の公開テストにも大問2の11として出題されていました。あの問いで間違えてしまい、今回の大問2の8も解けなかったという受験生は改めて両方をよく見直し、「ステップ・バイ・ステップの思考」の感覚をつかんでいきたいところです。
 続いて、大問3の4にも注目しておきましょう。こちらは大問2の8のような「ステップ・バイ・ステップの思考」とは異なったアプローチが必要になるため、別の意味で要注目です。設問としては、空欄④に「ア 動物園/イ ガソリンスタンド/ウ コンビニ/エ 公園」のいずれが当てはまるかという選択問題であり、見た目はごくシンプルに感じられます。しかし、出題者の意図を正しく見抜けていないと間違えるように作られており、油断のならない厄介な問いです。
 ポイントは空欄④を含む段落から読み取れる構図であり、ここでは「昔:牛や馬を利用」⇔「今:自動車やトラック、エンジン付きの機械を使用」という対比が示されています。そして、牛や馬にはエサとして草が必要だったと書いた上で、「現在、あちこちにある[ ④ ]がすべて草刈り場だったようなものです」と筆者は述べています。これらの条件を総合し、「牛や馬には草を食べさせる。では、自動車やトラック、エンジン付きの機械を動かすのに必要なものは?」という問いかけが頭に浮かんできた受験生は、イの「ガソリンスタンド」が正解と思いつけたことでしょう。この設問は条件と答えの間にちょっとした「隙間」があり、そこをひょいと飛び越える柔軟性がないと正解に着地できないようになっています。その一方で、より問いを難しくするために引っかけの選択肢が準備されているところも心憎い点です。もし対比の構図に注意を向けず、単純に空欄の直前の「現在、あちこちにある」だけを見て考えるとウの「コンビニ」を選んでしまうといった事態にもなりかねません。
 4は空欄のすぐ近くにある言葉に引っ張られるとつまずくように選択肢が工夫されている上に、「段落の説明に注意深く耳を傾ける+柔軟な思考」も求められており、二重の仕掛けが施されています。希学園の作問の上手さがよく表れている問いですので確実に吸収しておきましょう。
 今回は希学園の小4の公開テストについて、興味深い考え方や解き方が含まれた問いを2つ紹介してみました。希学園のテストはところどころに巧妙な問いが用意されており、計算が行き届いた作りをしています。その分だけテストとしての難度は高いと言えますが、それらを自分のものにできると必ずプラスになっていきます。しっかりと復習して思考力の底上げにつなげていって下さい。

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