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いつか、笑って話せるその日が、きっと来る

このタイトルを思いついた時、あれ、そういえば似たような題名で、過去に記事を書いていたな、と思い出しました。

生きていると、時に落雷にあったように、予期せぬ出来事が、ゴロゴロドッカーン!と、落ちてくることがあります。

人生、何十年も生きていれば、多かれ少なかれ、みなさんにもきっと、そんなご経験があるのではないでしょうか。

自分に起きることはもちろんですが、実はそれ以上に、大切な誰かに起きる出来事ほど、大きな衝撃とダメージを感じることが多かったように思います。

私が大学を卒業し、社会人になって数年目。
私の大切な人に、大変な事が起こりました。
それから、その人をなんとか支えようと、努力しましたが、状況は思わしくなく。
その日も、何日も連絡がとれなくなったその人の様子を見に行くために、重い足をひきずるようにして、最寄駅へと向かっていました。

何日も連絡がとれないその人が、いったいどんな状況なのか。
もしかしたら、もう家の中で、息絶えているかもしれない。

そう思いながら、でも、心配している家族のためにも、自分が安否を確認しないことにはどうしようもない、そんな使命感と不安、恐れ、逃げ出したい気持ち、いろいろなものが入り混じる中で、ふと目に入ったものがありました。

駅の路肩で、一人の男の人が、色紙を売っていたのです。
タイル貼りの通路に、レジャーシートを引いて、何枚もの色紙が並んでいました。
その中の一枚には「あなたの目を見て、言葉を書きます」と書かれており、その横で男の人が、体を寒そうに縮こませながら、一人、静かに座っていました。
冬が始まった頃の、寒い日だったと思います。

本当に何気なく、その色紙を見ていた私は、一枚の色紙に、目が釘付けになってしまったのです。
その色紙には(もうかなりうろ覚えですが)とても味のある、優しい筆文字で「いつか笑って話せる日が、来るといいね」と言った内容が書かれていました。

プツン。
張り詰めていた緊張の糸が切れた音がして。
次の瞬間、私の視界は溢れてくる涙で、何も見えなくなっていました。

こんなに苦しい思いも、行き場のない悲しみも、逃げ出したい現実も、いつか笑い話になる日が、本当に、来て欲しい・・・。

絶望の中に見つけた一筋の光にすがるように、私は、その色紙に手を伸ばしました。
「おいくらですか?」
確か、1000円とか、1500円くらいだったのではないかな。
男の人が、丁寧に紙袋に入れてくれたその色紙を、大切に抱えて、私はその人の家へと向かいました。

どうか、生きていてほしい。
きっといつか、全て笑って話せるその日が、来るはずだから。。。

色紙に勇気をもらい、自分を奮い立たせ、その人の家に行ってみると、インターホンをならしても、ドンドンとドアを叩いても、なんの応答もなし。
ドキドキと早鐘のように鳴り響く心臓の鼓動を抑えながら、震える手で、カチリ、と鍵を開けると。
ガン、という手応えと共に、開きかけた扉が何かに引っ張られて、それ以上は開かないのです。
中から、チェーンがかけられていました。
ドアの隙間から、ビクビクしながら中を覗いてみると、人の動く気配がわかりました。
耳をそばだてると、かすかに音も聞こえて。

ああ、生きてるんだ。
よかった。本当に、よかった・・・!

その安堵感で胸がいっぱいになったあの時の気持ちは、今でも忘れられません。
そしてドアノブに、用意してきた食べ物と、あの色紙の入った紙袋をかけて、帰りました。

この時のことを思い出すと、今でも涙が溢れてきます。
大切な人が目の前で苦しんでいるのに、何もできない無力感。
でも、心配で、安否を確認せずにはいられない、どうしようもない焦燥感。
そして、心配と不安から解放された時の、なんともいえない、あの安堵感。

さて、その人は今、どうしているかというと。
ふつーに結婚して、幸せに暮らしています☺️
あの頃のことを、全て笑い話にできているかは、ちょっと微妙かもしれませんが、その人なりに、色々乗り越えて、今を幸せに生きています。

そうえいば、あの色紙、どうしたかなぁ?と、ラインで聞いてみたところ、一言、こんな返事が返ってきました。

「全然覚えてない。すまない。」

そ、そんなもんですよね😂
性格的に、そんな色紙は見向きもせず、おそらく捨てたんじゃないかな、とは思っていたけれど、当たらずといえども遠からず、というところでしょうか。

人生の暗闇の中にいる相手には、どんな光も、優しい言葉も、届かない時が、あります。
周囲の人間は、黙って見守るしかできないことも、あるのです。
そして、その結果起こることを、受け入れるしかない時も、現実にはあるのです。

それでもやっぱり、気休めだとしても、私は自分に、暗闇の中にいるあなたに、この言葉を贈ります。

大丈夫。
いつか、笑って話せるその日が、きっと来るから。

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