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銀行が脱炭素に取り組む理由とその動向

近年、金融機関が脱炭素に取り組む姿勢がますます注目を集めています。地域経済の要となる地方銀行を中心に、再生可能エネルギー事業の推進や環境関連投融資など、具体的なアクションが増えています。なぜ銀行が脱炭素社会の実現に力を入れているのか、その理由と具体的な取り組みについて詳しく解説していきます。


1. 脱炭素に取り組む理由

地域経済を守るため

銀行が脱炭素に力を入れる最も大きな理由は、地域経済の持続可能性に直結しているからです。地域の経済活動が脱炭素に対応できなければ、国際的なサプライチェーンから外される恐れがあり、結果的に地域全体の経済が衰退する可能性があります。

たとえば、山陰合同銀行の山崎徹頭取は、地域経済の衰退を防ぐため、2022年に地銀として初めて電力子会社を設立し、太陽光発電事業を始めました。この取り組みは、地域企業と連携しながら地元の脱炭素化を進める大きな一歩となっています。

新たなビジネス機会の創出

脱炭素社会への移行は、単なるリスク管理だけでなく、銀行にとって新たなビジネスチャンスでもあります。再生可能エネルギーや環境関連の投融資、サステナブルファイナンスなど、脱炭素に関連する金融サービスが次々と生まれています。

たとえば、伊予銀行を中心とするいよぎんホールディングス(HD)は、脱炭素支援に積極的に取り組んでおり、グリーンボンドやサステナブルファイナンスを通じて、企業の脱炭素化プロジェクトを支援しています。また、Sustechというスタートアップ企業との提携を通じ、CO2排出量の算定や削減目標の設定、進捗管理といったコンサルティングサービスも提供しています。

自社のリスクマネジメント

銀行自身もまた、脱炭素の取り組みを通じてリスクマネジメントを強化しています。地球温暖化や気候変動が進む中、これに対する対応が遅れると、企業価値の低下や取引先の経営悪化などのリスクが高まるからです。そのため、金融機関は自社の脱炭素化にも積極的に取り組み、地域企業とともに持続可能な経済の構築を目指しています。

2. 銀行の具体的な取り組み

再生可能エネルギー事業の推進

銀行が脱炭素に向けた大きな一歩を踏み出しているのが、再生可能エネルギー事業です。山陰合同銀行は、電力子会社を設立し、地域の工場やスーパーの屋根を活用した太陽光発電事業を展開しています。この事業では、発電した電力を整備先の企業が購入する「PPA(電力購入契約)」の仕組みを採用しており、これまでに28件の契約を締結。そのうちの24件で既に発電が開始されています。

このように、銀行が主体となって脱炭素社会の実現に向けたビジネスモデルを開発・推進している点は、他の地域銀行にとっても大きな刺激となっており、今後の拡大が期待されています。

サステナブルファイナンスの導入

伊予銀行は、脱炭素を含む環境に配慮した事業を対象にした「サステナブルファイナンス」の提供を進めており、2030年度までに累計で1兆4000億円を投融資する計画を立てています。そのうち約半分にあたる7000億円は、グリーンボンドなどの環境分野への投資に充てられます。

このようなサステナブルファイナンスの普及は、地域企業が自社の脱炭素化を進めるための大きな後押しとなるでしょう。また、こうした取り組みは銀行自身の収益を拡大させる新しい成長戦略の一環でもあります。

専門的なコンサルティングと支援

伊予銀行はまた、脱炭素関連のスタートアップとの提携を通じて、CO2削減支援プラットフォームの導入を進めています。これにより、地域企業がCO2排出量を把握し、具体的な削減目標を設定するためのサポートが行われています。

さらに、愛媛県と連携し、地域企業のCO2削減の取り組みをJ-クレジットに登録する支援も実施しています。J-クレジットは、企業が実施したCO2削減の成果を国が認定し、クレジットとして登録する制度であり、これにより企業は削減したCO2を他企業に売却することができるようになります。これも地域の脱炭素化を促進する有力な手段の一つです。

脱炭素化を目指すためのファンド設立

伊予銀行は、自らも投資ファンドを設立し、地域企業の脱炭素化を支援しています。2023年には総額20億円の「いよぎん事業承継・成長支援ファンド」を設立し、事業承継や企業価値向上のための投資とともに、脱炭素に向けた企業の取り組みをサポートしています。脱炭素に向けた金融支援だけでなく、企業の具体的な経営改善にまで関与することで、持続可能なビジネスモデルを実現しています。

3. 銀行の脱炭素化への今後の展望

銀行が脱炭素社会の実現に向けて進めている取り組みは、今後ますます加速していくと考えられます。特に地方銀行においては、地域経済と密接な関係を持ち、地元企業の成長やサステナビリティの支援が自らの存在意義と収益性に直結するためです。

さらに、銀行は単に金融支援を提供するだけでなく、地域企業に対するコンサルティングやファンド設立といった形で、より実践的なサポートを行い、地域全体の脱炭素化をけん引しています。これにより、地域経済の活性化と環境負荷の削減を同時に実現するモデルが確立されつつあります。

脱炭素の取り組みが進んでいる。

銀行が脱炭素に取り組む背景には、地域経済の持続可能性を守るための危機感、新たなビジネスチャンスの創出、自社のリスクマネジメントという三つの大きな理由があります。具体的な取り組みとして、再生可能エネルギー事業の推進やサステナブルファイナンスの提供、専門的なコンサルティングとファンド設立など、金融機関は多角的に脱炭素社会の実現を支援しています。

今後、金融機関が地域企業とともに歩むことで、地域経済全体が脱炭素化に向けた転換を果たし、持続可能な未来を築いていくことが期待されます。銀行が果たす役割はますます重要となり、その動向は引き続き注目していくべきでしょう。

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