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気温50度の世界で起きること!インドに見るビジネス課題とは


1. 貧困層に深刻な打撃

インドでは、猛暑により気温が50度を超える地域が出現し、社会全体に深刻な影響を与えています。特に、貧困層が最も大きな打撃を受けています。極端な暑さにより、路上で商売を営む人々や屋外労働者たちは、熱中症のリスクにさらされ、多くの命が失われています。ニュースによると、今年だけで100人以上の労働者が命を落としました。猛暑が続く中、外出を控える人々が増えたため、商売をする機会も減少し、収入が激減しています。このような状況は、貧困層の生活をさらに悪化させる悪循環を引き起こしています。

2. 干ばつと農業への甚大な影響

次に注目すべきは、干ばつによる農業への壊滅的な影響です。インドは世界有数の小麦生産国であり、その収穫量の減少は世界的な食料価格の高騰につながっています。今年は、小麦の収穫が熱波の前に終わっていたため被害は最小限に抑えられましたが、昨年は収穫期に熱波が直撃し、小麦の収穫量が1000万トン規模で減少しました。この減少は、世界の食料市場に大きな波紋を広げました。気候変動の影響で、熱波が発生する期間が年々長くなっており、インド政府は干ばつや熱波に強い農作物への切り替えを進めていますが、その実現には時間がかかる見通しです。

3. 製造業と冷却装置の課題

製造業もまた、猛暑による影響を大きく受けています。工場での生産を継続するためには、冷房などの冷却装置が欠かせません。しかし、これらの装置が稼働することでさらに熱が発生し、気温の上昇を助長するというジレンマに直面しています。特に大企業は、工場内の冷却装置の確保が大きな課題となっています。この問題は、日本企業がインドで新幹線を導入する際にも重要な要素として考慮されなければなりません。気温50度に対応できるインフラの整備が求められるのです。

4. インフラとエネルギー供給の問題

気候変動は、エネルギー供給にも大きな影響を与えています。インドでは、家庭用電力の供給が不安定であり、特に猛暑の時期には火力発電所で石炭を燃やして電力を確保する必要があります。しかし、これが大気汚染を悪化させ、さらなる環境問題を引き起こしています。また、熱波による風速の低下で風力発電の効率も低下し、再生可能エネルギーの安定供給が難しくなっています。モディ政権はグリーン経済への移行を掲げていますが、重要鉱物や蓄電池の価格が高いため、再生可能エネルギーの普及は進んでいません。

5. 気候変動対策の資金調達と外資系企業の役割

気候変動対策には膨大な資金が必要です。インドは2070年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げていますが、それには4兆〜5兆ドルの資金が必要とされています。この資金をどう確保するかが今後の大きな課題です。グローバルサウス全体に共通するこの課題に対し、世界がどう対応するかが問われています。

日本を含む外資系企業は、インドに進出する際、気候変動に伴うリスクをどう管理するかが重要です。特に、製造業においては、持続可能なエネルギーの導入を真剣に考慮しなければなりません。例えば、欧州連合(EU)は環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税を課す「国境炭素調整措置」を導入しており、他の先進国も追随する可能性があります。インドでの生産が、輸出先国にとって友好的なものとみなされるためには、持続可能なクリーンエネルギーの活用が不可欠です。

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気温50度の世界で起きること インドにみるビジネス課題 - 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOTG0716S0X00C24A8000000/

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