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2 プロローグ モラルハラスメントのリアル

モラルハラスメントとは

 身体的暴力と類似した言葉で、精神的暴力がモラルハラスメントです。暴力のように体にあざが残ったり、傷ができたりはしません。しかし確実に心はむしばまれていきます。モラハラの実態は外からは絶対にわかりません。むしろ、他人には絶対にばれないようなやり方で進行していくのです。

 モラルハラスメントは暴言を吐く場合もありますが、口調は穏やかに、静かに相手を否定し、意見が合わなければ話をそらすか、責めるか、不機嫌か無視、などの特徴があります。基本的に他人を見下すことで自分のプライドを守るので非常にたちが悪いです。相手が大学教授だろうが、どんなキャリアや努力を積んだ人であろうが、見下します。
 

モラルハラスメントに気づくのは不可能に近い

 モラハラをしやすい性格の特徴というものもあります。育ってきた環境に家庭内暴力があったとか、自尊心が極端に低いとか、様々です。モラハラ被害を受けやすい性格の特徴もあります。とにかく我慢強い、頑張り屋さん、相手に尽くすことに喜びを感じる、などです。
 しかし、性格が当てはまったからといって必ずモラハラをするわけではありませんし、被害者になるわけでもありません。それは長い年月をかけて徐々に二人で作り上げてしまった関係性であるのかもしれません。育った環境においても、たとえ親がDVでも、しっかり自立した大人になる子どもだってたくさんいるのです。
 様々な要因が重なり、偶然であれ必然であれ、パートナーがモラハラになってしまった場合、気づくことは容易ではありません。ほとんどは「気のせいかな」「体調悪かったのかな」「ちょっとタイミングが悪かったのかな」で済ますことができるような小さなことだからです。私はモラハラと気づいていないだけの夫婦やカップルは、実はたくさんいると思っています。私はモラハラだと確信することが、どれだけ難しいか、身をもって体験したからです。
 モラハラ加害者の特徴として「外面がものすごく良い」ことがひとつあげられます。現に私の元夫は、友人や親せきの前では終始ニコニコとし、ステーキやお寿司などをご馳走し(実際に準備するのは私でしたが)、友人の前では子どものおむつを積極的に替え、良い夫、良い父親と周囲に思われていました。そして皆が帰ると、「食事が足りなかったのはなぜなの?」「おしぼりが汚れていたけど、洗濯ちゃんとしたの?」「そういえばタオルもきちんと洗えてないんじゃない?そもそも君はいい加減だから」「着ている服もダサいし、恥ずかしいわ」等と静かにお説教が始まります。そう、静かに、穏やかに、相手を全否定するのです。

 「そのくらい言い返せばよいのでは」「夫の教育も仕事のうち」「ちゃんと話し合えば解決するのに」という声は何度も聞きました。もちろん結婚当初は言いたいことは伝え、じゃああなたも準備すればいいでしょなどと意見を言っていました。しかしモラハラ夫は決して譲りません。2時間くらいは話が平行線になり、結局、私が「ごめんなさい。次から気を付けるね」と言うまでお説教は続きました。お説教の間、赤ちゃんは放置、お風呂も寝かしつけもできないままになりました。実りがない上に日常生活に支障が出るくらいなら、と意見する気すら起こらなくなり、次第に「夫がすべて正しい、私の常識は世間からずれているのだ」と思うようになっていきました。付き合ってから離婚するまで、ただの一度も「ごめんね」を聞いたことはありませんでした。

 洗脳状態から抜け出すのはそう簡単なことではありません。モラハラに気づいても行動に移すにはきっかけが必要です。せめて暴力をふるってくたらいいのに、と何度思ったでしょう。モラハラは証拠がないのです。ボイスレコーダーだって、そうタイミングよく録音できるわけではありません。万が一バレたら、恐ろしいことが待っているだけです。しかも穏やかに否定する声は、はたから見ればただの話し合いにしか見えないのです。

 被害者は知らないうちに自分を抑え込みます。なぜなら加害者は決して「~して」と口で指示しないからです。「どうするの?」「自分で決めたら?」「好きにしていいよ」「見たらわかるでしょ」という言葉を使って、被害者が自主的に判断するように持っていくのです。そして失敗したらその判断を相手のせいにします。つまり「手は貸さないが口だけは出す」状態です。被害者側が自責の念を持つように持っていくという点が、モラハラの最も恐ろしいところなのです。しかも何が失敗かどうかはモラハラ夫の基準なので、理由に全く心当たりがないことが多いです。それでも「私があの時こうしていれば責められずに済んだのに」と自分のせいにしてしまうのです。
 

モラハラの解決方法

 はっきり言うと、モラハラは治りません。完全に別れるか、モラハラの一面をも一生愛しぬくか、二人でカウンセリングに行くかです。モラハラ加害者は絶対に、自分がモラハラだと認めないので、カウンセリングは非現実的でしょう。

 私の場合は離婚し新しい人生を始めました。もう夫の気分のために自分の労力を使うこともない生活が、今はとにかく幸せでなりません。私にとって離婚は正解そのものでした。離婚届けを提出したとき、もっと取り乱すかと思っていましたが案外、全然平気でした。
 

 最もダメなのは、モラハラを見ないふりをし、自分で自分を少しずつ殺していくことです。加害者の機嫌を取ることがすべてになり、代わりに自由をあきらめ、喜怒哀楽をあきらめる。そのような人生を送りたいと思う人になっては、絶対にいけません。自分を守れるのは、パートナーではなく、自分自身なのです。愛する人がモラハラかも?!と思っている人、負けないで!

 次回は、モラルハラスメントされたエピソードを時系列で紹介していきたいと思います。15年前にさかのぼります。

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